八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「八ッ場ダム建設に不条理はないのか」(静岡新聞、下野新聞)

2013年3月29日

 新聞コラムの重い問いかけから、国民的な議論が深まることを期待します。

◆2013年3月28日 静岡新聞 

 -日本のポンペイー 

 「人からコンクリートへ」-。民主党から自民党へ政権が逆戻りして建設に弾みが付いたのが、群馬県の利根川支流に計画されている八ツ場ダムだ。

 民主党時代の前原誠司国土交通相が「時代に合わない国の大型直轄事業は見直す」としてダムの建設中止を宣言した時、世間は驚いたものである。しかし、配下のダム官僚は推進派の学者を動員して検討会をつくり、大臣の決断を骨抜きにした。前原氏は「河川ムラ」の返り討ちに遭った形で、ぶれる民主党の象徴例として語り継がれた。

 60年もの長きにわたって建設の是非が問われてきた八ッ場ダム。その水没予定地には230年前の浅間山大噴火で泥流にのみこまれた集落が横たわる。縄文から江戸に続く生活の跡を残す遺跡では刻みたばこが詰まったキセルや梅干しが入ったつぼまで発見された。

 古代ローマの都市が火山の噴火で埋まったイタリアのポンペイ遺跡を引き合いに「ダムから日本のポンペイを守れ」と学者、文化人ら350人がダム本体の工事を中止し、遺跡群を保存するよう求める要望書を国交省と文化庁に提出した。

 呼びかけ人の一人で作家の森まゆみさんは「天災の経験を後世に伝える野外博物館にしてほしい」と訴えるが、関心の広がりはいまひとつだ。

 10年たっても完工しない公共事業については必要性を見直す「時のアセスメント」制度があるが、八ツ場ダムはまさにそれに当たるだろう。治水、利水の両面で効果がないとの専門家の報告もあるのだから。

 同じ利根川水系の渡良瀬川で足尾の鉱毒事件を告発した田中正造が没して今年は100年になる。八ツ場ダム建設に不条理はないのか。田中の精神にならって国民的議論を深めたい。

 ~~~転載終わり~~~

 下野新聞のサイトでも同様の記事が掲載されていますが、一部が省略されています。 http://www.shimotsuke.co.jp/special/raimei/20130328/1010332

 ★省略されている箇所
 ー前原氏は「河川ムラ」の返り討ちに遭った形で、ぶれる民主党の象徴例として語り継がれた。

 -60年もの長きにわたって建設の是非が問われてきた八ッ場ダム。

 -呼びかけ人の一人で作家の森まゆみさんは「天災の経験を後世に伝える野外博物館にしてほしい」と訴えるが、関心の広がりはいまひとつだ。

 -治水、利水の両面で効果がないとの専門家の報告もあるのだから。