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「66年前計画の幻の放水路計画 国交省がやっと断念」(朝日新聞)

2005年11月10日 朝日新聞より転載

 国土交通省は9日、千葉県北西部を流れる利根川と東京湾を人工河川で結ぶ利根川放水路の現行計画を断念し、ルート変更して大幅に縮小する方針を固めた。66年前に計画されたが、手つかずのまま時が過ぎるうちに当初の想定ルートの市街化が進行。用地費の高騰で実現が困難となり、専門家の間で「幻の放水路」と呼ばれていた。

 この日の国交省社会資本整備審議会の小委員会で、同省河川局は、長さ17キロの人工河川を掘り、下流の花見川の川幅を現在の約4倍の約200メートルに広げる現行計画の断念を表明。代替策として千葉県の印旛沼を調節池として活用し、沼にためた水を花見川に流す考えを示した。今ある川をほぼそのまま利用し、拡幅はごく小規模にとどめる。同省が策定作業中の利根川の河川整備基本方針も、この考え方に沿うとみられる。

 放水路は、豪雨時に毎秒3000立方メートルの水を東京湾に流す人工河川として、39年に計画された。だが、戦時中は物資不足で放置され、戦後は下流の拡幅や川底掘削を優先させている間に、想定ルートの千葉県我孫子市などで住宅開発が進んだ。用地の買収費用も高騰。国交省は完成には2兆円以上かかり、2000棟以上の家屋の立ち退きが必要と見積もっていた。代替案だと事業費は3000億円程度という。

 計画の大幅変更について、国交省は「大規模な川を新たに造るのは地域社会への影響が大きい。印旛沼活用ルートで対応可能と判断した」としている。地元の千葉県は「実情に即した方針転換だ」として受け入れる構えだ。