「固定資産税は26億円 上野村で発電所稼動」(上毛新聞)

群馬県上野村で世界最大級の神流川揚水発電所が稼動し、多額の固定資産税が村に落ちることになりました。
 上野村は1985年の日航ジャンボ機墜落現場を抱える群馬県南西部の山間の村。長野県の南相木村と隣接しています。東京電力が巨費を投じて建設した揚水発電所は、南相木村を流れる信濃川水系千曲川の支流最上流部に上部ダムとして南相木ダムを、群馬県上野村を流れる利根川水系神流川の最上流部に下部ダムとして上野ダムを建設し、この間を地下水路で結び、ほぼ中間の群馬県側の地下500mに発電所を設置したもの。上野ダムの水は夜間の余剰電力で南相木ダムに引き揚げられ、653メートルの落差を利用して最大出力282万Kwの電力を生み出します。
 
 逼迫した地方財政を立て直すのに最も手っ取り早いのが、ダムや原子力発電所から落ちる固定資産税。揚水発電の必要性が疑問視される中、住民らの反対で計画が中止・凍結される事例もあります。↓
http://www.niigata-nippo.co.jp/kokyo/kokyo-toku01.html

 発電所の固定資産税で一時的に財政が潤う群馬県上野村、長野県南相木村は、将来に備えて余剰資金を貯蓄する方針です。

2006年4月4日 上毛新聞より転載
『固定資産税は26億円、上野村で発電所稼動 』

上野村は昨年十二月に村内で稼働した神流川発電所の固定資産税(償却資産)が、年間予算に匹敵する二十六億四千二百万円に決まり、二〇〇六年度から地方交付税の不交付団体になることが確実になった。固定資産税収入だけで、基礎的な必要一般財源額とされる基準財政需要額(二〇〇五度十一億九千七百万円)を大幅に上回り、関連の電源立地対策交付金も二十五億円に達する。余った財源の使途は未定で、将来に備えて新設の基金に積み立てる方針。自立を推進する過疎の村は、財政難が叫ばれる中で例外的な“富裕層”の自治体となる。

 上野村は村議会三月定例会で、すでに地方交付税を見込まない総額三十億八千万円の本年度一般会計当初予算を可決した。発電所の税金を含む固定資産税収入を九億六千六百万円計上しており、同税の年間額二十六億四千二百万円との差額に相当する剰余金は、新設した「上野村振興発展基金」に積み立てる方針。

 村企画財政課によると、償却資産となる発電所の固定資産税課税標準額は「およそ年6・3%の割合で下がり、十年で半分ぐらいになる」という。〇五年度の地方交付税は約十一億円だったが、当面は不交付団体が続く見通し。

 固定資産税収入をめぐっては広域的な活用などが論議された経緯もあるが、村は将来の住民のために役立てる方針。

 松元宇隆村長は「増えた自主財源で積極果敢に産業振興、観光振興を進め、税収を上げるよう努める一方、剰余金を基金に積み立て将来に備えたい」と話している。

 神流川発電所は、東京電力が約四千五百億円を投じて同村と長野県南相木村にまたがって建設した世界最大級の揚水式発電所。一号機(出力四十七万?)が昨年十二月下旬に稼働し、〇六年度から固定資産税の課税対象となった。

 施設が二県にまたがるため「大臣配分」という形式で、総務相が三月末に県を通じて固定資産税課税標準額を通知した。

 発電所建設に関連して、村には電源立地対策交付金が一九九六年度から〇五年度までに約十三億七千万円交付された。一一年度まで交付され、総額二十五億円が見込まれている。

 村は同交付金を利用し、国民宿舎やまびこ荘を立て替えたほか、同村楢原の三岐地区に日帰り温泉施設「浜平温泉しおじの湯」などを建設した。同施設は今月二十四日に正式オープンする。

【地方交付税】
 財源が不足する自治体に国が配分する税。消防や道路管理など行政が必ずやらなければならないサービス費用(基準財政需要額)と、標準的な税収入に75%を乗じた額(基準財政収入額)との差額を目安に交付され、需要額を収入額が上回った場合、不交付となる。

 上野村の場合、二〇〇五年度の基準財政収入額は二億三千八百万円で、約九億六千万円の“赤字”だったが、神流川発電所からの税収で一気に大幅な黒字に転換する。

 三洋電機が立地する大泉町は一九六三年から断続的に計三十七年(一九七七年度から連続二十八年)不交付。

2006年3月19日 毎日新聞より転載

解説編 南相木村、「交付税」不交付団体に /長野
 南相木村(中島育男村長)は、昨年12月稼働した東京電力「神流川発電所」の上部ダム「南相木ダム」を抱えることから、06年度分から同ダムにかかる約11億円の固定資産税が見込めるため、軽井沢町とともに地方交付税の不交付団体となる。県内の不交付団体は20年ぶりに2町村になるが、村では「たまたま予算規模が小さいから不交付団体になるだけ。村税でもらうか国の交付金でもらうかの違いで、金持ちになるわけではない」と慎重。少しでも余剰分を蓄え、将来に備えていく方針だ。【藤澤正和】

 ◇浮かれず「緊縮」維持

 神流川発電所は、同村と群馬県上野村にまたがる揚水式発電所。上野村には地下発電所と下部ダム(上野ダム)がある。1号機の稼働に伴い、06年度から両村に固定資産税が入る。両村の固定資産配分の総務省通知は5月ごろになる予定。南相木村の06年度一般会計当初予算は16億3900万円(05年度当初比0・99%増)で、村税収入として12億1207万円を計上した。05年度の1億2827万円に、東電の固定資産税約11億円を見込んだ額に当たる。

 ◇バラ色ではなく

 地方交付税は、各市町村の基本的な必要経費と税収の差額、不足分を国の税収から補うもの。同村には05年度最終で7億5691万円が交付されており、これに比べ固定資産税の見込み収入が約3億円強多いだけ。中島村長は「ダムは償却資産のため毎年減少し、固定資産税が7億円程度になれば、再び交付金を受けることになる。10年は続かないし、先は不透明。決してバラ色ではない」と覚悟している。

 しかし、東電は税収以上にダム建設の「見返り」として、インフラ整備に貢献してきた。大型資材の搬入のため、ダムサイトまで新たな2車線道路を開通したほか、村道の2車線化改修、県道の橋の架け替え、温泉施設の建設など、同村は大きな恩恵を受けた。中島村長は「ダムは泉。わき出る清水で、ずっと長くノドをずっと潤し続けたい」と、日本一標高の高いダムを売りに、ダム湖周囲5キロを走るマラソン大会、家族ウオーキング、写真コンテストなど手づくりイベントを計画している。

 ◇かつては王滝村も

 60年以降、主な県内の不交付団体は74年から32年続く軽井沢町。63~66年は現在、財政再建で苦悩する王滝村が、精密工業の諏訪市は64~72年など11年間、最近では坂城町が84~86年に不交付団体になっている。

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 ◇神流川発電所

 総事業費4800億円。97年に着工し05年12月22日に1号機(47万キロワット)が稼働。最終計画は6号機まで建設し、出力282万キロワットで世界最大級になる。南相木ダムの標高は1532メートルで最高部のダム。