「脱ダム」登紀子さん悩む 迫る「八ッ場」見直しコンサート(朝日新聞)

2006年10月6日

 特別顧問の加藤登紀子さんをメインゲストに迎えるライブ&トーク「八ッ場いのちの輝き」の開催が3日後に迫っています。八ッ場ダム計画は、首都圏下流で反対運動が盛り上がる一方で、水没予定地住民は追い詰められた状況にあります。国内外の様々な環境問題に取り組んできた登紀子さん。首都圏住民の生活と切っても切り離せない八ッ場ダム問題に出会うことによって、「脱ダム」をどう深化させるのか。9日のイベントをどうぞお楽しみに。

 今朝の朝日新聞生活面より
「脱ダム」登紀子さん悩む 迫る「八ッ場」見直しコンサート、でも・・・

 歌手の加藤登紀子さんが、悩んでいる。自然保護に熱心で、「脱ダム」も公言してきたが、群馬県長野原町に建設中の「八ッ場ダム」で水没する温泉街の人たちと会い、持論が言い出せなくなっている。ダム建設構想から半世紀。激しい反対闘争は遠い昔となり、表立って異を唱える人がいなくなったからだ。東京都内で開かれる八ッ場ダムの見直しを求めるコンサートへの出演が9日に迫る。「早くダムを」と訴える山あいの住民に、どう思いを伝えればいいのか。(高橋美佐子)

 住民、「建設後」に夢託す
 9月12日、ダム建設予定地にある川原湯温泉。山肌にへばりつく旅館街は雨にぬれ、人影もまばらだ。ダム建設のため解体された家の基礎石があちこちに残る。
 夜、加藤さんは、旅館を続けている若主人食堂の経営者たちと話した。
 国連環境計画(UNEP)親善大使でもある加藤さんが切り出した。豊かな自然を破壊すること、水需要が見込まれないこと、事業費約4600億円と日本一に膨らんだこと・・・。様々な観点からダムが必要ないことをやんわりと訴えた。
 若主人は遮った。「百も承知だ。でも、そんな話は今さら聞きたくない」
 加藤さんと八ッ場ダムとのかかわりは1年前から。温泉街の女将さんがつくった故郷をテーマにした詩集を読み、興味を持った。昨夏には現地にいって、地元の人たちとダム建設や町の将来を巡り、本音で夜通し語りあった。
 八ッ場ダム計画は、首都圏の渇水などに備え、52年に浮上。全戸が水没する川原湯温泉の反対闘争は長く激しく続いた。だが約20年前に収束。ここ2,3年で用地の補償交渉が一気に進み、最盛期20軒あった旅館・民宿は半減した。しかし、本体工事はまだ着工していない。
 山を削って造成している代替地への移転希望者は少なく、最近になって国は面積を狭めた。ダムと向き合う世代も親から子へ、さらに孫へと移りつつある。ダムに翻弄された末、大人たちの人間関係がもつれていくのを目の当たりした若い世代は、「この宙ぶらりんな状態に終止符を」と願い、ダム完成後の街づくりに夢を託す。県内外のダム反対運動には冷ややかだ。
 加藤さんは言う。「私個人は『脱ダム』。でも地元がそう願わない以上、彼らの声に耳を傾け、それを都会の人に伝えねば、とも思うんです」。川原湯の人たちにコンサートのチケットは渡した。だが5日時点、上京するという連絡は誰からも来ていない。
 コンサートでは、自然をイメージした曲を選んだ。そこに込める思いは定まらないが、「どんな未来が来ても、故郷を愛し、誇りを持って生きる強さを」とは話すつもりだ。
 コンサート「八ッ場いのちの輝き」は、環境保護団体などが中心となって、9日午後3時から、新宿区の日本青年館大ホールで開かれる。