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「下久保ダム、水位25メートル低下へ 国交省の河川整備計画」(上毛新聞)

2007年2月6日 上毛新聞より転載

「下久保ダム、水位25メートル低下へ 治水機能を強化 検討案、地元に提示 国交省の河川整備計画」
利根川水系河川整備計画の策定作業の一環で国土交通省は五日までに、藤岡市と埼玉県境にある下久保ダム(神流湖)の洪水調節機能を高めるため、同ダム水位を最大約二十五メートル下げる検討案を地元に提示した。既存ダムを有効活用して利根川水系の治水に役立てる考え。各種用水に供給する利水の容量を洪水調節容量へ振り替え、その利水容量は奥利根流域のダムに確保する。これに対し、水位低下は環境や観光、利水など地域全体に悪影響を及ぼしかねないとして、藤岡市や神流町などから反対の声が上がっている。

下久保ダムの水位低下案は、国土交通省利根川水系総合調査事務所(沼田市)が一月末、藤岡市鬼石総合支所で開いた地元説明会で示した。

同事務所などによると、下久保ダムは集水面積が広い半面、普段は雨が少なく治水に有利だとして、奥利根流域のダムとの間で容量振り替えを検討。神流川の必要な取水量を確保した上で、総貯水量一億三千万立方メートルの37%に当たる最大約四千八百万立方メートルの利水容量について、洪水調節容量への振り替えが可能と試算した。水位換算すると、現行より最大約二十五メートル低下するという。ダムの高さは百三十一メートル。

利水容量が増加する奥利根流域では、ダムのかさ上げなどの整備を行う方針。振り替える容量は今後の調査、検討で変更される場合があり、同事務所は「水位低下で露出する裸地を緑化するなど影響の軽減策について、地元と一緒に考えていきたい」と話している。

同省は昨年二月、利根川水系河川整備計画の基となる同河川整備基本方針を策定。治水面では新しいダム建設でなく、既存ダム群を活用して治水効果を強化する方針を打ち出した。県内上流ダム群の洪水調節量は、既存六ダムと建設中の八ツ場ダムを合わせても、基本方針で定めた目標の29%にとどまり、治水機能の強化が課題とされる。

今後三十年程度を見据えた河川整備計画の策定手続きは、原案作成のための意見聴取の段階。早期の計画策定を目指しているが、策定時期は特に設けていないという。

同省は九日までインターネットやはがきで広く意見を募集しているほか、二月下旬から三月上旬にかけて利根川流域の各地で公聴会を開く予定。

藤岡市は反対方針 環境、観光「影響大」
 国土交通省が検討委に示した下久保ダムの水位低下に対し、藤岡市や地域住民は一様に反対姿勢を示している。市は「市民の意見を尊重するよう要望する」意見を、八日までに文書で同省へ提出する方針だ。
 市側は懸念される問題として、①景観の破壊や汚濁水による環境・観光面への影響②釣りやボートなどの湖面利用者への影響③水不足や農業用水の汚濁、水道水の浄化費用増大など利水者への影響④市民感情ーなどを挙げる。
 住民はとりわけ旧鬼石町で、1969年のダム完成当時からの思い入れから、感情的な反発が強い。
 地元説明会ではダム建設で三百世帯余り、約千五百人が転出したとされる経緯も踏まえ、「残った住民がボート、飲食業などを興して地域再建に励んできた。ダムを中心にしたまちづくりにも取り組み始めた。その努力を無にするダムの再編には賛成できない」などと訴えたという。
 神流町も「いろいろな問題があり反対するしかない」(総務課)と話している。