[淀川流域委員会]「河川行政の後戻りが心配だ」(読売新聞)

2007年2月5日 読売新聞社説より転載

 河川行政はダム中心に、が国土交通省の本音なのだろうか。国交省近畿地方整備局が、淀川水系の河川整備計画を審議する「淀川水系流域委員会」の活動を今月から休止した。

 淀川委員会は、近畿整備局によって6年前に設立され、有識者、地元住民など25人の委員が、流域人口1200万人に及ぶ淀川水系の防災や利用のあり方を検討してきた。

 だが、整備計画の本格審議がこれからという時期に活動を止められた。整備局の強硬姿勢に批判が強まっている。

 河川整備に地元の声を反映させる「流域委員会」は、長良川河口堰(ぜき)を巡る住民との紛争を機に、各地に設立された。

 その中で、淀川委員会は全国の注目を集めてきた。委員選定に公募枠を設け、500回を超える会議の内容と資料を全面公開したうえ、ダム建設の原則中止と堤防強化という提言をしたためだ。

 整備局は休止の理由として、運営費に年2億円近くかかること、流域の市町村長から「委員会を重視しすぎる」との声が出ていることなどを挙げている。

 だが、背景には脱ダム提言への国交省の反発があり、国の意向に異を唱える委員会を仕切り直すためと考える委員は多い。公共事業見直しの動きが他の河川に波及することへの恐れもあるようだ。

 河川行政を、科学的データも示さずダムや堰の建設を進めた時代に後戻りさせてはならない。整備局が推す委員に既定方針を追認させ、住民の意見は公聴会で「聞き置く」では、無駄な公共事業は止められない。

 河川管理の最終責任は国にある。しかし、流域の様々な意見を調整し、総合的な判断をする仕組みが必要だ。

 淀川委員会はダムを全面否定したわけではない。代替策がなく、建設の影響の軽減策を用意すれば、認める立場だ。整備局も、一昨年には淀川水系の2ダムの建設を凍結し、2ダムの規模を縮小する案を発表した。この案に沿って整備計画を早急にまとめるのが筋だろう。

 国が管理する一級河川109のうち整備計画の策定を終えたのは26で、今後各地で流域委員会の審議が本格化する。

 ダムや可動堰への反対がある関東の利根川や四国の吉野川でも、流域委員会に住民代表委員の参加を求める要望があった。だが、国交省は拒否し、整備局が選んだ委員だけになっている。

 河川整備は転換期を迎えている。限られた予算で洪水や渇水の被害を減らすには、どうすべきか。行政だけでなく、環境や経済など多様な分野の専門家と住民が一緒に、知恵を絞る必要がある。