「利根川の河川整備計画 住民も参加した開かれた審議を」(東京新聞)

2007年6月4日 東京新聞紙面より転載
「利根川の河川整備計画 市民団体のシンポから 住民も参加した開かれた審議を 法改正の趣旨に戻って」

 首都圏の水がめで、日本最大の流域面積を誇る関東の利根川。国土交通省は今、同水系の治水対策や水利用の事業内容を定める河川整備計画づくりを進めている。だが、市民らから「改正河川法の『住民参加』の趣旨に反する」と批判が相次ぐ。先月二十日、東京で開かれた市民シンポジウムの議論を紹介する。 (野呂法夫)

 シンポは「利根川の未来を市民の手に!」と題して、市民団体「利根川流域市民委員会」(代表・佐野郷美氏ら)の主催。
 パネリスト五人による討議は、国交省関東整備局が昨年十一月から始めた「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画」づくりの進め方に集中した。
 「有識者会議の全体会の大半が事務局説明に費やされ、出席した四十二人の委員のうち、発言したのは五人だけ。これで審議と言えるのか」
 市民団体「水源開発問題全国連絡会」共同代表の嶋津暉之さんはこう話した。

 同水系の流域面積は関東一都五県の一万六千八百四十平方キロと広い。このため同局は、同水系を五ブロックに分けた有識者会議を設け、意見を聞く。
 全体会は二月、すべての有識者委員がそろい開催された。嶋津さんはこれまでも「有識者会議には市民代表がおらず、議論から排除されている」と指摘。
 住民が意見を述べる公聴会についても「計画づくりにどう反映されるのか明確ではない」とし、住民も参加した「開かれた審議」を求めた。

 討議には有識者会議委員も参加した。岡本雅美元日大教授は、一月に休止した淀川水系流域委員会(大阪、滋賀など)が市民代表も交えて五百回以上議論した先進例を挙げ、「案を練るのは専門家だが、住民の意見は徹底的に聞かなければならない」と一定の理解を示した。
 利根川水系は三つのダムが整備中で、渡良瀬遊水地では大規模掘削が計画されている。司会を務めた吉田正人江戸川大教授は「大規模開発の是非が議論されていない」と問いかけた。

 ダム中止も提言した淀川水系流域委員会の運営に携わった元国交省近畿地方整備局河川部長の宮本博司さんは「計画中でも議論するべきでは」と述べた。
 最近、河川行政の姿勢に「後退を感じる」との意見が出た。嶋津さんは「淀川の反動なのか、吉野川(徳島)で住民不参加の形で進められている。利根川もそれにならっているのではと危惧している」。宮本さんは「法改正の趣旨に戻って、国交省は住民の後押しを受けて河川行政を進めるべきだ」と促した。

 このほか利根川河口堰の運用見直しの必要性が指摘された。有識者会議委員の鷲谷いづみ東大大学院教授は「環境保全や自然再生を含め総合的な計画をつくらなければならない」。
 霞ケ浦で活動する「アサザ基金」代表の飯島博さんは「行政が機能していない。市民のネットワークを強めて働きかけていきたい」と呼びかけた。

公聴会はHPで意見募集

 水利用計画が破綻する中、生態系豊かな川を”寸断”する長良川河口堰(三重県)建設をめぐる河川行政への批判を受け、国は一九九七年に河川法を改正した。官僚主導の川づくりを転換し、住民の意見も反映する「住民参加」が盛り込まれた。
これに基づき、国交省が管理する全国百九の一級水系で、今後二十~三十年間に行う治水・利水・環境面などでの具体的な事業内容の河川整備計画をつくる。現在、五十九水系で長期目標となる河川整備基本方針が立てられ、さらに二十九水系で河川整備計画がつくられた。住民参加の方法や手続きの明確なルールはないが、公募で市民を審議に参加させる流域委員会もある。利根川の場合、有識者会議は河川工学の専門家やマスコミ関係者らで構成。住民の意見は公聴会を開いたり、ホームページで随時募集している。
 国交省関東地方整備局の渡辺泰也河川調査官は「広い流域の方々からいろいろな意見を頂いている。整備計画に反映できるものは取り入れ、そうでない意見にもきちんと見解を出して対応していきたい」としている。