「水没で移転の小学校 7年で廃校」

2008年1月4日 毎日新聞社会面より転載
「水没で移転の小学校、7年で廃校12億円無駄に 群馬・八ッ場ダム予定地」

 群馬県長野原町に計画される八ッ場(やんば)ダム(15年度完成予定)の建設に伴い、02年に移転した長野原町立第一小学校(山田京子校長、児童31人)が来春、建設わずか6年8カ月で廃校となる。水没地区の住民が町外に転出し、児童数が減少したためだ。町は校舎の再活用を検討するが、小学校の建設費など約12億円以上が無駄になる。

 第一小学校は、水没する林地区にあったため02年、約1.5キロ北西の高台に移転した。鉄筋コンクリート3階建てのバリアフリー施設が新築され、屋内プールと暖房付きの体育館が設けられた。事業費12億円は、町の8億円、文部科学省の補助金約2億4500万円、利根川下流都県の水源地域整備事業交付金約1億5600万円でまかなった。学校周囲の砂防ダム整備などに国土交通省も別に約13億円を投じた。

 しかし児童数は移転時の02年度の52人から次第に減少。07年度は31人、09年度は23人に減る見通しだ。町は「このままでは教育環境として好ましくない」と07年末、別の小学校との統合を決めた。

 背景には水没予定地の住民が、近くに整備される代替地に移転せず町外に移住する現実がある。代替地の希望者は、ダム事業地買収の補償基準が決まった01年には470世帯だったのに、07年には3分の1以下の134世帯に激減した。

 高山欣也町長は「これだけ人口が減るとは思わなかった」と釈明するが、ダム工事や代替地整備の遅れを人口流出の一因と考える住民も多い。2児を第一小に通わせる旅館業の男性(43)は「町民流出は国の工事が長引いたせい。統合もやむを得ない」と話す。

 法政大の五十嵐敬喜教授(公共事業論)は「ダム工事に時間がかかるのは想定できるはずで、結果的には明らかな無駄遣い。公共事業を定期的にチェックするシステムをつくる必要がある」と指摘する。【伊澤拓也】