八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

茨城の会署名提出

 八ッ場ダムをストップさせる茨城の会では、2008年2月27日、「無駄なダム建設から撤退し、水道料金の引き下げを求める請願」署名8931筆を桜井茨城県会議長に提出しました。最終提出は3/8。なお10,000筆を目指すとのことです。
 茨城の会が1月に提出した工期延長に対する要望書への回答は2/8にありました。この回答にたいする「公開質問書」も提出されました。公開質問書の内容は、以下の通りです。

 茨城県知事 橋 本 昌 様    2008年2月27日
 八ッ場ダムをストップさせる茨城の会代表:近藤欣子 濱田篤信 柏村忠志

   八ッ場ダム工期5年延長に伴う問題についての回答に対する公開質問書

 この度は「八ッ場ダム工期5年延長に伴う問題について」の要望書にご回答いただき、誠に有難うございました。しかしながら、知事のご回答は私たちの要望書の基礎である、茨城県固有の問題からの回答は何一つされていません。
 八ッ場ダムは国の直轄の事業ではありますが、茨城県は利水・治水の受益者として巨額の事業費を負担しています。そして知事は、事業変更について意見を述べる立場にあります。失礼ながら意見を述べる立場とは、茨城県にとって八ッ場ダム事業が利益をもたらすか否かを述べる、責任ある立場であります。しかるに今回のご回答は、国の立場を、語句を変えて引き写したものに過ぎません。茨城県民300万人の福祉と利益を守るべき県知事の回答としましては、はなはだ理解し難いものであります。
 そこで改めて、知事が八ッ場ダム事業と工期延長について如何なるご認識の上で行政にあたられているかご質問いたします。
 なおご回答は全体をひとまとめにして抽象化せず、一問一問の質問に具体的にお答えいただきますようお願いいたします。
 ご回答は3月10日までに文書でお送りくださるようお願いいたします。

1 県政への基本姿勢についてお尋ねいたします。

1-1 知事は日常の行政にあたり、県民の福祉、県の利益を何よりも優先されていますか。

2 2004年度の事業費増額の際、1都5県の合同調査チームが意見書に添えた「平成22年度完成ということが、利水者が八ッ場ダムに参画を判断する一つの材料となっており、予定年度における完成を強く要望したい(完成が遅れた場合、ダムの完成時点でダムが不要になっていることも想定されるため)」という要望書をお忘れでないと思います。
  以下にお答えください。

2-1 上記の回答をした2004年度は、「前・いばらき水のマスタープラン」をもって判断されたと思いますが、同プランでは平成22年度の都市用水の余剰を一日10.6万トンとしています。現在のマスタープランでは、工期延長後の平成27年度の都市用水の余剰は、60.1万トンとほぼ6倍に達します。八ッ場ダムからの供給量は9.4万トンですから 要望書が想定した事態になっていると思いませんか。

2-2 上の質問は、あくまでも県の計画数字の中でのものですが、水使用の実績からお尋ねいたします。2005年度の都市用水の実績は次のようになります。

   水道用水 保有水源125.2万トン  1日最大給水量102.8万トン  余剰水22.4万トン
   工業用水 保有水源125.9万トン  1日最大給水量68.0万トン   余剰水57.9万トン
   都市用水(合計) 保有水源251.1万トン  1日最大給水量170.8万トン  余剰水80.3万トン
 この傾向は2005年度固有のものではありません。水道用水について言えば、1994年度より給水人口、水洗便所の普及を伸ばしながら横ばいが続いています(表-3)。工業用水については、県自身が以前より水余りを認めています。県人口は2000年をピークに減少傾向をたどっています。知事は、この水余りをどのようにご認識していますか。

2-3 暫定水利権についてお尋ねします。知事は、八ッ場ダム、霞ヶ浦導水、思川開発、湯西川ダムは、既に一部暫定水利権として供用されている、したがって早期に安定水利権に変えなければならないと言われますが、都市用水の余剰80万トンには、暫定水利権による取水量は含まれていません。仮に暫定水利権分(表-8)を含めれば、水余りは96.6万トンに上ります。この実態をいかがお考えですか。

3 国土交通省が行なった「八ッ場ダム再評価」をもって、県としての再評価の必要は無いとしていますが、どのようなご認識の上で判断されたか、以下お尋ねします。

3-1 国土交通省による再評価は治水面での費用対効果に留まります。利水事業は国からの補助を受けた県の事業です。茨城県の水余りを直視するならば、県は「行政機関が行う政策の評価に関する法律(政策再評価法)」に基づき再評価する責任は免れません。知事は、茨城県の県益と県民福祉のために、再評価する意思がありますか。

3-2 公共に係わる便益の中で、洪水調節に係わる便益は8,276億円もあるとしています。国土交通省によるカスリーン台風再来計算では、利根川に対する八ッ場ダムの治水効果はゼロとしています。この矛盾をどうお考えになったのでしょうか。

3-3 八ッ場ダムは、ダム上流域に3日間で354ミリの雨が降った場合、毎秒3,900トンの洪水が流れ込むとしています。その内2,400トンをダムで調節して、最大で1,500トン放流するとしています。2001年9月、八ッ場上流域に計画とほぼ同じ348ミリの雨が降りました。その時、八ッ場ダム予定地に流入した最大流量は1,182トンに留まりました。昨年9月の台風9号も337ミリの雨を降らせましたが、最大流量は1,087トンでした。計画通りであれば3,900トン前後の流量がなければなりませんが、実績は3割にも満たないものです。知事は如何にご理解されますか。

3-4 八ッ場ダムは完成後一定の水を放流し、渓谷の保全に努めるとしています。今回の再評価では、このことをして「景観改善の効果を便益とする」と評価しました。吾妻渓谷の景観を破壊しながら、ダムにより渓谷の水が枯れ上がるのを最小に留める行為が、何故プラスの便益になるのでしょうか。知事はこの評価をどのように理解されていますか。

3-5 河川の水量確保による景観改善の便益では観光客増による効果も上げられています。計算の基礎になる観光客の数は、一年間に吾妻町、長野原町、嬬恋村、草津町、六合村を訪れた739万人です。これがどれほど馬鹿馬鹿しい数字であるかと言えば、県庁の展望台の便益を計る上で、水戸偕楽園、筑波山、笠間稲荷、霞ヶ浦を訪れた観光客が、全員県庁の展望台に上る、ということです。知事は再評価を受け入れるにあたり、評価内容を精査されましたか。この評価をどのように理解されましたか。

3-6 八ッ場ダムの放流水を利用する水力発電もプラス評価に加わりました。最大発電量11,000kw。CO2の削減は年間21,700トン、原油ドラム缶41,000本分にも相当する環境に優しい発電と、いいことづくめの説明をしています。しかし、八ッ場ダムの下流には次の発電所があります。松谷発電所25,400kw、原町発電所27,400kw、箱島発電所21,000kw、金井発電所14,200kw、渋川発電6,800kw。合計94,800kwもの電力が確保されています。八ッ場ダムに貯水するには、これらの発電所の発電量を大幅に抑える必要があります。八ッ場ダムに発電所が付設されても、吾妻川全体の発電量は大幅に減ります。知事はこの事実をご存知ですか。ご存知でしたら是認する理由をお聞かせください。

3-7 上記の3-2~3-6に問いましたように、国土交通省の治水面での再評価も恣意的で杜撰きわまるものであります。茨城県の治水負担は126億円に上ります。知事は県行政のトップとして、利水事業と合わせ治水も県独自の立場から再評価する意思はありますか。

4 私たちの要望書に対するご回答で、八ッ場ダムの事業変更に対する知事の意見の方向が予測されますが、県議会の承認という手続きに少なからぬ日時がありますことから、次のことを確認させていただきます。

4-1 八ッ場ダムの県民負担総額は約400億円(起債利息等を含む)に上ります。現在茨城県は未曾有の財政危機にあると、知事ご自身が表明されています。県人口も急激に減少することが予想されています。私たちの常識では、これ以上意味のない開発投資は見直し、福祉サービスを削ることなく財政再建に努めます。知事はこうした窮状にあっても、県民に巨額の負担を掛け、国策に従いますか。県民の福祉と県財政の再建に努めますか。お聞かせください。
                                           以上