『本体工事費わずか9%」(毎日新聞)

2008年4月18日 毎日新聞群馬版より転載

 ◇「堤体」スリム化や補償増 安全性懸念の声も

 長野原町で建設が進む八ッ場ダムの総事業費に占める本体工事費の割合が、当初の23%から2度の計画変更を経て、9%に低下していることが分かった。もともと付け替え道路などの付帯工事や水没地区の住民に対する補償が膨らんだうえ、計画の見直しに伴い水をせき止める「堤体」をスリム化したことなどが要因だ。他のダムに比べて際だって低く、関係者からは付帯工事の異様な膨張と同時に安全性を問題視する声も出ている。【伊澤拓也】

 1986年度の当初計画では総事業費は2110億円。内訳の「ダム費」からダム本体と直接関係のない護岸工事や地滑対策費を除いた本体工事費は495億円で、総事業費に占める割合は23%だった。

 04年度に総事業費を2倍以上の4600億円に増やしたため、全国一総事業費が高くなったが、本体工事費は613億円と1・2倍にとどまり、この時点で13%に低下した。

 さらに、工期を5年延長し15年度完成とした今回の計画変更で、本体工事費を429億円にまで圧縮。最も大きな減額の対象となったのは本体のコンクリート工事を示す「堤体工」で、124億円も減らした。

 一方で「測量・試験費」は80億円、「付替鉄道費」は60億円増額し、総事業費は据え置きとなった。このため、本体工事費は総事業費のわずか9%に。法政大の五十嵐敬喜教授(公共事業論)は「全国的に見ても異常な低さだ。付帯工事が極端に多い八ッ場の特殊性に加え、公共事業への目が厳しくなったことで総事業費を上げられなかったのでは」と指摘する。

 全国的にみても総事業費が2番目に高い宮ケ瀬ダム(神奈川県、00年度完成)は総事業費3993億円に対し、本体工事は30%に当たる1180億円を投じた。国土交通省相模川水系広域ダム管理事務所は「必要な工事を最小限行った結果で、宮ケ瀬の割合が特別に高いわけではない」と話す。

 八ッ場ダムは水没地区の住民らへの補償が1236億円とかさんだ上、ダム建設では珍しい鉄道の付け替えなど付帯工事が他ダムと比べて多い。これらのコスト高に対し、本体工事費を切り詰めたのが現状だ。

 同省八ッ場ダム工事事務所は、本体工事費の減額について「付帯工事と同時に進めてきた地質調査で、当初の想定よりも地盤が強固なことが判明した。その結果、コンクリート量を減らし、堤体をスリム化しても安全性が確保できると判断した」と説明する。

 だが、その安全性を不安視する声もある。ダム建設の見直しを求めている「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」の嶋津暉之代表は「もともと地質が良くない場所だけに、コンクリート減は危険だ。総事業費の帳尻合わせに本体工事費が使われたのだろう。最も重視されるべき安全性が二の次になっている」と指摘している。