八ッ場ダムの土木工事の入札に関して、談合が疑われるとして市民オンブズマン群馬が国交省に公開質問状を送りました。関連記事と公開質問状の全文を転載します。
◆2008年6月6日 上毛新聞より転載
「八ッ場」で落札率95%で質問状 市民オンブズマン群馬
国土交通省が建設中の八ッ場ダム(長野原町)に関連する工事発注で、今年1月以降に発注された一般競争入札の土木工事二十件の平均落札率が95.02%となっていることが五日分かった。入札希望企業が入札を辞退し、実質一~三社で
入札が行われた不自然な例も多い。調査した市民オンブズマン群馬は同日、「談合が疑われる」として国交省八ッ場ダム工事事務所に公開質問状を送った。
オンブズマンが国交省のホームページで公開されている契約結果を調べた。工事予定価格に対する落札率が最も高いのは「町道新井横谷松谷線改良工事」で落札率99,36%(入札価格一億三千二百万円)。そのほかの工事でも二十件中十三件が95%以上だった。
また、原則入札に制限を設けない一般競争入札にもかからず、一~六社しか参加していない入札が十九件を占め、さらに十三件では参加者が入札を辞退。形式上は一つの工事につき三・八社が参加しているが、辞退者を除くと実質二・一五社で入札が行われていた。
市民オンブズマン群馬では入札経緯について三十日までに調査・回答を求める公開質問状を八ッ場ダム工事事務所に送付した。同事務所は担当者が不在でコメントできない」としている。
◆2008年6月6日 毎日新聞群馬版より転載
「八ッ場ダム土木工事:入札1社のみが4件」
国土交通省八ッ場ダム工事事務所(長野原町)が今年執行した土木工事20件のうち、4件で入札が1社のみだったことが5日、市民オンブズマン群馬(小川賢代表)の調べで分かった。また、予定価格に対する実際の落札価格の割合「落札率」は20件の平均で95・02%と高かった。オンブズマンは同日、同事務所に入札の適切性などを問う公開質問書を提出した。
オンブズマンによると、調査対象の20件は今年1月31日~4月8日に執行された国道145号改良工事など。うち4件は入札が1社のみで落札率は95・70~99・13%。さらに半数以上の11件が業者の辞退や失格などで実質的に入札は1社のみだった。
オンブズマンの杉山弘一副代表は「予定価格が漏れているとしか思えない。談合の疑いが濃厚だ」と指摘している。
同事務所によると、発注工事は規模の小さいものを除き一般競争入札で、すべて電子入札で行っている。藤田浩副所長は「予定価格の漏えいはない。落札率の高い低いはコメントする立場にない」としている。【伊澤拓也】
◆ 市民オンブズマン群馬の公開質問状を転載
国土交通省八ッ場ダム工事事務所所長 澁谷 慎一 様
市民オンブズマン群馬 代表 小 川 賢
入札業務に関する公開質問状
所長におかれましては、職務に真摯に取り組まれ、そのご努力に対して敬意を表します。
さて、2005年、貴事務所の入札業務をめぐって用地第一課長と業者が癒着していたことが発覚し、贈賄罪事件として元課長らが有罪になりました。同年9月26日夜には、八ッ場ダムの補償交渉委員長が誕生日を祝うために業者を集めて開いた丸岩会と称する個人的なイベントに、当時の八ッ場ダム工事事務所所長が参加し、
100名近い業者の前でダム工事の説明をしています。
また、このほど、貴事務所の工事を受注していた中堅ゼネコン「山内工業」(沼田市)が2003年と05年の衆院選期間中、福田首相、佐田衆院議員、小渕衆院議員がそれぞれの代表を務める自民党支部に違法献金を行っていたことも発覚しました。山内工業は、1998年に群馬県北部地区における継続的な談合の中心として、公正取引委員会から課徴金納付命令を受けた業者です。
このような状況下、あらためて、公共事業をめぐる政官業の関係が問われています。特に、貴事務所に関しては、入札業務の適正が何よりも問題とされるところです。そこで、我々は、2008年に貴事務所で執行された一般競争入札(土木工事)20件について、その経過を調査しました。
その結果、添付の表1に示すとおり、
①入札参加者が少ない、
②さらに入札辞退者が多く実際に入札をした業者はさらに少なくなっている、
③平均落札率が95.02%と極めて高い、と言う特徴があることが解りました。
そこで、お尋ねをします。
1. 一般競争入札では、多くの業者(通常は20社以上)が入札に参加すると言わ
れていますが、貴事務所においては、3社以下の参加がほとんど、1社だけというのもたくさんあります。これは従来の指名競争入札よりも少ない状況です。 このように、入札参加者が少ない理由をどのように考えているか。
2. 一般競争入札では、受注を希望した業者のみが入札に参加するので、入札辞退は極めて例外的であるはずである。しかし、貴事務所においては、入札辞退が極めて多い。 このように、入札辞退が多い理由をどのように考えているか。
3. 落札率が95.02%と極めて高いがその原因をどのように考えているか。
4. 現状の入札は、適切な競争が行われていると考えているか。
5. 今後、入札業務を改善する予定はあるか。
なお、本質問状は貴職に提出する際に記者会見で明らかにし、また貴職のご回答を得た上で、あるいは得られなかったときに、再度記者会見で回答の有無及び内容を明らかにしてまいりたいと考えます。同時にその経過を含めて当市民オンブズマン群馬のホームページ上でも明らかにし広く群馬県民に広報してまいる所存です。つきましては、平成20年6月30日限り、下記に郵送又はFAXにてご回答いただきますよう、お願い申し上げます。