2008年6月3日 参議院財政金融委員会において、富岡由紀夫参院議員(群馬県選出、民主党)が八ッ場ダムについて質問。八ッ場ダムの事業評価における費用対便益の計算が一般の常識からかけ離れていることが浮き彫りになりました。参議院の会議録より転載します。↓
http://www.tomioka-yukio.net/report/download080603.txt
○富岡由紀夫君 ありがとうございました。
じゃ、続きましてちょっと国土交通省さんにお伺いしたいと思います。道路特定財源のときにいろいろとお尋ねしようと思っていたんですけれども、なかなか国会の方で審議時間が取れなくて質問できなかったものですから。
費用便益分析についていろいろと議論になったわけですけれども、実は私の地元の群馬県に八ツ場ダムというダムがありまして、これは昭和四十二年に着工されておりまして、もう四十二年たっているわけなんですね、着工から。しかしまだ完成していなくて、当初計画だと二千百億円の事業予算を組んでいたんですが、変更を重ねまして事業予算が四千六百億円になったということでございます。あとまた工期も、本当は平成十二年に完成しているはずだったのが、平成二十二年に一回延長されて、今回また更に平成二十七年までまた延長されたということで、工事の予算もどんどん膨らんでいる、工期もどんどん長くなっているということで非常に議論がされているところでございますが、国会の参議院の本会議でも同僚の議員がこの問題について質問させていただいたと思いますけれども、この中でいろいろと国土交通省さんにそのいわゆるBバイCと言われる費用便益分析のいろんな資料をいただきました。
ところが、その算定された資料を詳しくもっと出してくれというふうにお話ししたところ、ないということなんですね。
今日お手元にお配りいたしました資料を見ていただきたいんですけれども、この中の洪水調整に係る便益というのがございまして、ブロックがA、B、C、D、E、F、G、こういろいろあります。十ブロックに分けて、それぞれのブロックごとにこのダムを造ることによってどれだけ洪水の被害が減少するかという便益を出しているんですけれども、その一番基本となる年平均被害軽減額、①というところですね、それぞれブロックごとの。これを算出された根拠がないという、資料がないというふうに説明を事前に昨日受けたんですけれども、それは本当でしょうか。確認の、念のためにお伺いさせていただきたいと思います。
○副大臣(平井たくや君) これ、私もないはずがないと思っておりまして、捜していただいたんですけれども、これが本当にないわけでありまして、これ、この分野に関しての文書の保存期間は一応三年ということにはなっているものの、これ今事業中の案件でありますから、本来あるべきだと私も思っております。しかしながら、それがないということでございます。
○富岡由紀夫君 ないものを前提にこの事業を継続すべきかという結論を出されたというのは本当に疑問で、何というか信じられないですね、納得いかないですよね。
四千六百億円もの税金をこれから使って建設すると、それでなくても今ダムの不要論がどんどん出ているのに、そのBバイCを出したときの基の数字がないという、その前提でこの事業継続を決定するということはおかしいと思いませんか。副大臣として、政治家として御感想をお伺いしたいと思います。
○副大臣(平井たくや君) これ、ないというものの、これ隠し立てするような資料でもないはずなんですね。これは関東地方整備局事業評価委員会で、前、了承いただくときにはちゃんと説明もし了承いただいているわけでありますから、本来、これあってしかるべきでありますが、その時点で、御了承いただいた時点ではそれはちゃんとあったということだと私は思っております。
○富岡由紀夫君 その了承が正しいと、適正だという前提でのお話ですけれども、この後ちょっとお話ししますけれども、私は、全然適正じゃない評価の便益出しているのがいっぱいありますので、ちょっと一例というか、二例というか、三例ぐらいお示しをしたいと思います。
まず、ブロックごとの被害軽減額、この出し方がまずおかしいと。私は、検証してみないと、前提がおかしいと思うんで、そういうおかしい部分はいっぱいあると思うんですけれども、それはまあ百歩譲ってこれを前提に考えた場合でも、一番右から二行目のブロック別便益というのがありますね。これはそれぞれの地域ごとに、ダムを造ることによってはんらんがどれだけ被害額が減少できるかという数字なんですが、これブロックごとに上流から下流まで全部分けてあるんですね。それで、もし台風とか大雨で洪水になったときにこのブロックがすべて一遍に洪水になるということはあり得ないんですよね。どこか一回決壊すれば、その地域は洪水で水浸しになって水害を受けますけれども、そこで水がもうはけるわけですから、下の部分とか違うところでは洪水の被害が起きるわけないんです。ところが、これは同時発生的に起きるという前提で積算されているんですね。これおかしくないですか。便益マニュアル、中にもそういう意見が出ています。だけど、それを無視してこの数字で出しているということでございます。
これ、こういうおかしな計算の仕方を前提としたBバイCというのは全く納得いかないんですが、どうでしょうか。
○副大臣(平井たくや君) 様々な降雨のパターンに対応するということだと思うんですが、詳しくは河川局の方から答えさせていただいてよろしいでしょうか。──ですから、かつてのいろんな雨の降るパターンというのがどんどんどんどん変わってきているし、最近の集中豪雨というようなものも、そのすべてのパターンに対応できるようにしているということだと私は理解しております。
○富岡由紀夫君 その認識は違っております。
何年かに一度のごとにこれ被害額出しているんですね。二百年に一度の台風、百年に一度の台風、それぞれのごとに確率を出して出していると。それは一応整合性はあります。だけど、同時にこのブロックが、十ブロックがすべて洪水になるということはあり得ないと。そのあり得ない前提でこの便益を出していることに対しておかしいと思いませんかというふうにお尋ねしているんです。これ、大臣、政治家としてお答えいただきたいと思います。
○副大臣(平井たくや君) そういうケースもあり得るだろうというふうに思っております。
○富岡由紀夫君 それ、絶対あり得ません。全部、全地域が一遍に洪水になるようなというのは、それこそ何十億年に一度の台風か何かじゃないとないんじゃないですか。それはよく調べていただきたいというふうに思います。一つ取ってもこれはおかしい。
次に、もう時間がないんで余りあれなんですけれども、二番目のところを見ていただきたいと思いますけれども、河川の水量確保に係る便益の算定というふうにあるんですね。これを見ると、名勝吾妻峡に必要な水量を確保することによる景観改善等の効果を便益として算定したと、景観改善と書いてあるんですね。ダムを造って何で景観改善なんですか。これは水を流すということで言っているらしいんですけれども、元々、今水は流れているんです。それをダムで止めておいて、また水を流して、それで景観改善だ、それで便益があるんだというふうにこれは出しているんですけれども、おかしくないですか、これ。どういうふうに。
ちょっと大臣にお伺い今日はするというふうに言っていたので……
○副大臣(平井たくや君) 副大臣でございます。
○富岡由紀夫君 あっ、副大臣にお伺いしたいと思いますので、お答えお願いします。
○副大臣(平井たくや君) これは景観改善等の効果を算定するに当たって、いわゆる仮想的市場評価法、CVM。要するに、こういうように水が流れることに対して幾ら払うかというアンケートに基づいて調査したものであり、これも費用便益マニュアルの規定のとおりにCVMという方法を利用させていただいていると聞いております。
○富岡由紀夫君 私がお尋ねしているのはそのマニュアルがおかしくないかということでお尋ねしているんです。そのマニュアルどおりやっていたらこうなっちゃうんですね。だから、これはおかしいんです、何とかCV何とかというのはおかしいんです。
このアンケートも見させていただきましたら、すごいインチキがあるんですね。一回当たり、次のページ見ていただくと、支払意志額百四円とあるんですけれども、百四円の出し方がすごい恣意的な偏ったアンケートで出しているわけなんです。
近く、群馬県で違う三波石というところもあるんですけれども、これは違うダムのところの渓谷を言っているわけですけれども、これも、元々水が流れていたところをダムを造ることによって水がなくなっちゃった。それを、水を流すことによって、幾ら払って水を流すのを見たいですかという、そういうアンケートなんですね。そんなばかげた話ないと思うんですね。元々ダムがなければ水が流れているのに、それで、ダムで水がなくなっちゃって、じゃ、水を流すから幾ら払ったら見たいですかという、そういうやり方しているんです。それで、お金払いたくないという人がほとんどなんですけれども、アンケートを取った。そんなのでお金ばかばかしくて払いたくないって、それは当然だと思うんですけれども。
それと、河川清掃などボランティアであればやってもいいよという人がいるんですね。中には払ってもいいという人がいるんです。払ってもいいという人に対して幾らまでいいかという聞き方ならいいんですけれども、ボランティアをやって、ボランティアだったらやってもいいよと、要はお金は払いたくないんだけれどもボランティアだったらいいよという人まで、改めてもう一度、お金は幾ら払ったらいいかという聞き方するわけですね。それも、百円だったらいいよ、二百円だったらいいよ、三百円だったらいいよって、百円と答えた人に対して、次、二百円ならいいよと、そういうやり方なんですね。だから、非常に誤った結果が、これ誘導、恣意的に出てきちゃうんですね。そうすると、この百四円という金額の出し方も私はおかしいというふうに思います。
それと、もっとおかしいのはこの次の年便益、年間利用見込み数七百三十九万二千四百人とありますけれども、これはどこから来たのかというと、次の三枚目、見ていただきたいと思います。
これは、今回造る八ツ場ダムの近くの長野原、嬬恋、草津、六合、吾妻、この町村に来る観光客、年間の観光客全員を基の数にしているんですね。吾妻渓谷というのはほとんど泊まらないですよ、今でも。草津温泉行く人はみんな通りますけれども、ほとんど通過します。このために来る人というのは十万人もいないんじゃないですか、十数万人しかいないというふうに地元の人言っていました。それなのに七百万人、これを造ることによって七百万人の観光客が来ると。元々、草津温泉とかいろいろ長野原とか嬬恋とか、こういうところに来る人たちは全部吾妻に来る、吾妻渓谷、八ツ場ダムに来るという前提で出しているんですね。これはおかしいというふうに思いませんか。
○副大臣(平井たくや君) この入り込み客等々についての考え方は、これはいろいろあろうかと思います。ですから、この問題に関してはやっぱり点検をしていかなきゃいかぬなと私自身も思います。
ただし、今回のこの水量に係る便益というのは、洪水調節に係る便益が八千二百七十六億円に対して百五十五億円ということでありますから、こういう言い方したらちょっと怒られるかも分かりませんが、大したことではないのかなと。いや、金額的に。それよりも、それよりも私が思うのは、これ以上コストを増やさないということがこのプロジェクトでは一番重要だと思っています。
○富岡由紀夫君 一事が万事なんですね。こういうところのアンケートでこういう適当なアンケートを作って便益を膨らませている。さっきの洪水の被害額もそうです。十か所が一遍に洪水になるわけないのに、十か所起きる前提で積算されている。全くおかしいんですね。
それとあと、次の、せっかくだから(2)も見ていただきたいと思いますけれども、もう一個アンケートやっているんですね。これもやっぱり群馬県の相俣ダムというところでダムを造ったことによって水が流れない。水を流すことに対して幾らまで払っていいですかという同じようなアンケートを取っているんですね。これは地域の世帯全員を、何というんですか、標本の母数としています。アンケート調査をやって、それやると、これも金額の払い方のアンケートは、さっき言ったように非常に何というかだまされやすい評価になっちゃうんですね。
これを見ると、相俣ダムの下に赤谷川というんですか、そういうのがあるんですね。そこの水を流すことによって川が復元すると、それに対して幾ら払ってもいいですかというやっぱり尋ね方なんですね。こういう赤谷川なんて普通知らないと思いますよ、ほとんど。そのためにお金を払って見に行きたいという人は余りいないと思うんですけれども、その人に対して一応やったんですね。そうすると、支払意志額というのは月に四百七十九円も払っていいというアンケート結果が出ちゃうんですね。月ですよ。年間にすると五千七百四十八円も払って赤谷川というところに、今までダムでせき止められたところに水を流すことによって水が流れる、それを見るために年間五千七百四十八円も払いたいという人が出たという結果が出ているんですよ、このアンケートに。普通あり得ませんよね。五千円も払って今アクアラインだって通りたくないのに、こんな赤谷川という川の水を流すことに対して五千七百円も払いたいと。
しかも、この近隣の世帯四万二千五百七十六世帯が全部が行くという前提になっているんですね。この四万二千五百七十六世帯というのは、この次の三ページ見ていただくと分かりますけれども、中之条町からずっと出ております、この世帯数ですね。この世帯、四万二千五百七十六世帯が五千七百四十八円お金を払って毎年行くと、このダムを見に行くと、そういう前提でこの便益を出しているという。
これこそ便益の水増しというか、インチキな積み上げとしか言いようがないと思うんですけれども、副大臣、おかしいと思いませんか、こういう出し方について。副大臣に今日はお伺いしたいと思っているので、よろしくお願いします。
○副大臣(平井たくや君) 今のは世帯の話ですよね、世帯で五千幾ら、だけど一人当たりということではないですよね、確認をさせていただきますけれども。
この便益がどうかということを言われますと、これは今まで専門家の意見を聞きながらまとめてきた便益マニュアルにのっとって行っているということで、素人の私がこれ以上いろいろ口を挟むのはどうかと思いますが、しかしながら、私なりの個人的な、個人的な感覚ですよ、個人的な感覚だと、いささかやっぱりおかしな面があるのかなというふうには感じます。
しかし、地元の要望にこたえて造らせていただいているダムですから、一刻も早くコストを削減しながら完成、本体事業に入れるように全力を挙げることが必要だと考えております。
○富岡由紀夫君 これは是非、一般の感覚でとらえていただきたいと思いますね。専門家の考え方がもしこれが正しいということになったら大変なことになっちゃいますよ。こんなめちゃくちゃなアンケートに基づいてこんなめちゃくちゃな便益で出されたらもう何でもできちゃいますね。費用便益分析やって幾らでも数字ができちゃうという、これは非常に恐ろしいことだというふうに思っております。
今度もし時間があればアンケートを全部皆さんにお配りして見ていただきたいと思います。いかにいいかげんなアンケートのやり方を取っているかということでございます。四万二千五百七十六世帯が毎年、年間五千七百円も払って見に行くようなものじゃないと思いますよ。その辺は是非検討していただきたい。
あと、計画も、今回ダムの計画が高さが減少されたんです。元々高かったものが低くされた。何かどういうことでやったのか知りませんけれども、計画を変更になっていると。それだったら、最初の計画は何だったんだというふうに思うんですね。そういったことも含めて、このダムについては分からないことがいっぱいあり過ぎます。是非もう一回、この二・九という費用便益分析の数字をもう一回改めていただきたいと思います。それから本体工事に着手していただきたいと思います。
○副大臣(平井たくや君) 現在、利根川の河川整備計画を策定すべく、この五月二十三日に、第四回の有識者会議を開催しました。学識経験者や地域の方々の御意見をお聞きしつつ様々な角度から検討を行っているところでありまして、八ツ場ダムの費用便益分析についても、その過程の中で不断の見直し、点検を行うこととさせていただきます。
○富岡由紀夫君 早急に見直しをしていただいて、是非御報告していただきたいと思います。内容については是非国会の中で議論させていただきたいと思います。
これで私の質問を終わります。