「建設めぐり議論再び 八ッ場ダム問題」(上毛新聞)

2008年7月21日 上毛新聞一面トップ記事より転載
「news レクチャー 建設めぐり議論再び 八ッ場ダム問題
凍結 超党派の6都県議 推進 本県の自民県議 「なぜ不安に」と対抗」

 八ッ場ダム(長野原町)建設をめぐる政治的な動きがにわかに活発化してきた。
治・利水効果や4600億円という建設費を検証しようと超党派の6都県議が「八ッ場ダムを考える会」を設立したのに対し、自民党県議は推進議連を結成。双方が水没地区住民の生活再建を優先しながらも、建設の「凍結」「推進」という異なる結論を見据える。工期の5年延長でさらに生活再建の遅れが懸念される水没地区住民はこうした動きを複雑な思いで見守っている。

 「八ッ場ダムの必要性について徹底的に検証していきたい」。五月十九日に都内で開かれた六都県議による考える会の設立総会では、ダム建設中止に向けて対決姿勢を強める声が上がった。会員六十三人で自民党所属議員も名を連ねる。

「負の遺産」
 代表世話人になった関口茂樹県議は「吾妻渓谷を壊し、ダムを造れば負の遺産となる」とし、あらためて水需要や大雨時の治水効果などダムの必要性を検証すべきだと主張する。
 八ッ場ダムをめぐり政治的な動きが活発化した背景には、民主党が参院第一党となり二大政党として存在感を増したことがある。
 民主党は二〇〇五年の衆院選で「無駄な公共事業」の象徴として巨額の建設費を投じる同ダムの建設中止をマニフェストに掲げた。今年の通常国会で本県選出の石関貴史衆院議員と富岡由紀夫参院議員が、同ダム建設に関して政府に質問主意書を提出するなど建設反対の姿勢を強めている。

「パフォーマンス」
 考える会設立から十日後には対抗するように、本県の自民党県議が八ッ場ダムの推進議連設立を決定。八月にかけて県議が、ダム建設に同意している下流都県を行脚し直接参加を呼び掛ける方針だ。
 地元吾妻郡選出で推進議連の中心として活動する萩原渉県議は「地元の人は何十年もかけてようやく新天地に移ろうと夢を持っている。なぜ不安にさせるのか。政治的なパフォーマンスだ」と、考える会を厳しく批判する。
 東京都議会は三月、工期を五年延長する国土交通省の計画変更案を六十八対五十五の賛成多数で可決した。
 自民党とともに賛成した都議会公明党幹事長の中嶋義男議員(伊勢崎市出身)は「渇水はいつどこで起こるかわからない。だからこそダム建設は政治判断が必要だ。工期の五年延長は遺憾だが、地元のことを考えれば、建設をストップするべきではない」と強調している。

「生活再建に希望」
 こうした動きを地元はどう見ているのか。
 ダムに沈む川原湯温泉で旅館を経営する川原湯温泉観光協会の樋田省三会長は「水没住民はずっと苦しめられてきた。自分の育った場所を離れたくて離れる人はいない。それでも何とか生活再建に希望を見いだし、ダム建設を受け入れてきた」と説明した上で、「それぞれに主張があり、意見が異なるのはしょうがないが、これ以上住民を苦しめるようなことだけはしないでほしい」と訴えている。
(東京支社報道部 塚越毅、報道部 石垣光広、中之条支局 入山亘)