八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムの09年度予算225億円、財務省原案内示

■2008年12月21日 読売新聞群馬版より転載
「八ッ場ダム満額225億円 計画から50年余 本体ようやく着工」

 2009年度当初予算案の財務省原案が20日内示され、国土交通省が建設を進める八ッ場ダム(長野原町)には、概算要求に対して満額の225億円が認められた。本体工事費も初めて予算化され、当初計画開始から50年余を経て、ようやくダムサイト本体が着工される見通しとなった。ただ、来年9月に任期満了となる衆院選挙で民主党が建設反対をマニフェストに掲げる姿勢を見せており、地元住民からは安堵(あんど)の声とともに、「本当に着工できるのか」と心配する声も出ている。

 今回の内示額は08年度の300億円から75億円の減額。ピークだった07年の385億円から2年連続の減額となったが、「生活再建事業の工事量がピークを越えており、来年度は仕上げの段階」(国交省八ッ場ダム工事事務所)という。ダム事業の総額は4600億円で、今回の内示で、その75%に当たる3436億円が予算化されることになる。

 09年度の本体工事費は数億円程度で、同省では本体に使うコンクリートの製造プラントの整備、吾妻川を閉め切る工事などを発注する予定。12年度にはコンクリートの打設が始まる見通しだ。財務省担当者は取材に対し、「いよいよ来年からスタートするということ。これ以上、住民を待たせられない」と話し、15年度完成に向けて今後も予算付けしていく考えを示唆した。

 地元住民に関係する生活再建事業では、国・県道の付け替えや水没住民の代替地造成を、09年度内にほぼ終了させる予定。今回の内示について、独自に再建事業に取り組んでいる県も歓迎しており、大沢知事は「ようやく本体着工のための予算原案が内示されたことは誠に感慨深い。県として今後も全力で現地生活再建支援策に取り組む」としている。

 同ダム事業は1952年に初めて調査に着手し、70年に建設事業を開始。2001年に水没地区の補償基準がまとまって以降は、工事が本格化すると同時に住民の転出が相次ぎ、集落の維持が危ぶまれる地区もある。高山欣也町長は常々、「ダムができなければ、地元はただ失っただけになる。住民も町も、1日も早い完成を待ち望んでいる」と話している。

 一方、ここ数年で無駄な公共事業を見直すという立場から反対運動も活発化。県内でも今年5月には同ダムに批判的な県議らが「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」(代表・関口茂樹県議)を発足させたほか、市民団体「八ッ場あしたの会」(事務局・前橋市)も計画見直しを主張している。

 このため、今回の内示に対して関口県議は、「総選挙による政治決戦の段階に来ている中で、今回の予算は賛成派を鼓舞し、反対派をくじくためのパフォーマンスだ」と国を批判し、「あしたの会」の渡辺洋子事務局長も「現地の生活再建が不十分な中で、本体の予算が付くのはおかしい。現地の実情を首都圏の人に知ってもらう活動を強化したい」と話している。

 また、民主党の鳩山由紀夫幹事長は、建設反対を次期総選挙の政権公約に掲げると明言。来年中に政権交代が実現した場合は、予算凍結の可能性も出てくる。来年は本県など6都県で、事業費の負担金である公金の支出差し止めを求める住民訴訟の判決も相次いで出される見込みで、判決の内容によっては計画に影響が出る場合もある。

 水没地区の川原湯温泉街は、営業している旅館数が10年前の18軒から7軒にまで減少しており、同温泉旅館組合の豊田明美組合長は、「今回の予算にはほっとしているが、政局がどうなるかが心配。代替地に早く移り、新しい温泉地をつくろうと頑張っているのだから、政争の具にしないでほしい」と訴えた。

■2008年12月21日 朝日新聞群馬版
「八ツ場ダムに225億円を計上」

 20日に各省庁に内示された09年度政府予算の財務省原案で、長野原町に建設中の八ツ場ダムには、国土交通省の要求額通り225億円が計上された。08年度より75億円少ないものの、本体工事の事業費も盛り込まれた。

 事業費は、これまで通り、水没地域の移転地造成、国道145号やJR吾妻線の付け替え工事などに充てられるほか、09年度からは、ダム本体を着工するための事業費も新たに加わった。

 八ツ場ダム工事事務所が19日に県議らに行った説明では、09年度中に水没地区住民の移転先代替地が完成するほか、国道145号の付け替え工事では、全10・8キロ区間のうち、雁ケ沢からめがね橋までの9・4キロがほぼ完成する予定だという。

 八ツ場ダムが満額回答を得た一方で、県外では大戸川(だい・ど・がわ)ダム(滋賀県)、川辺川ダム(熊本県)の本体工事に絡む事業費は地元知事らの反対でゼロとなった。工事事務所の維持管理や、水没予定地住民の生活再建費のみが計上され、両ダムの09年度の事業は休止することになった。

 県特定ダム対策課の坂尾博秋課長は「(休止される)二つのダムに比べ、八ツ場は恩恵を受ける住民が断トツに多い。それだけ必要性も高いと言うことで、満額の予算が付いたのだろう」と話した。