八ッ場ダム前橋地裁 あす判決

2009年6月25日 朝日新聞群馬版朝刊より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000000906250001

 長野原町で国が建設を進めている八ツ場(や・ん・ば)ダムについて、県が支出している建設費負担金の差し止めなどを求めた住民訴訟は26日、前橋地裁で判決を迎える。4年越しで23回行われた審理では、生活用水や工業用水としてダムの水を使う「利水」と、200年に1度の洪水被害を減らす「治水」、ダム予定地の地盤などについて原告・住民側と被告・県側が論じ合った。特に判決で司法判断が注目されるのは「利水」だ。

 「群馬県では水需給計画は策定しておりません」

 当時の県土地・水対策室長が出した陳述書に基づき、昨年10月3日、証人尋問があった。原告側代理人の質問に対し、室長はこう答えた。

 「地域特性があるので、県全体でひとくくりにして水需給計画をつくる必要性はない」「基本的に水源の確保は群馬の場合は市町村水道。それぞれの水道事業者が水需給計画をつくり、責任を持って水源を確保している」

 発言通りなら、自ら決定した水需給の見通しを持たないまま、県はダム計画への参加を決めたことになる。

 実際には、01年3月策定の県総合計画「21世紀のプラン」で10年度の県上水道の一日最大給水量を131万トンと予測。また県が原告側に開示した文書によると、県が07年10月に国土交通省へ回答した水需給の想定では15年度に一日最大給水量が109万トンになると見通している。

 だが、実績は97年度の111万トンをピークにほぼ減少傾向で、06年度には93万トンに減っている。原告側は、全国的な水需要の減少要因として節水型の洗濯機や水洗トイレの普及と人口減少を挙げ、県内も例外ではないと主張した。

 実績に沿った水需要予測を出している大阪府や横浜市の例も挙げ、「ダム計画の呪縛から解放されたり、撤退の必要性が生じたりしたときは、行政は比較的合理的な予測をするものである」とする。

 県側は「水源確保は一時的傾向に左右されてはならない。国交省への回答は水需給計画ではなく、県企業局をはじめ各事業者のダム参画には関係ない」などと反論した。

 県は、ダム建設の総事業費4600億円のうち、治水分として一般会計から計101億円、利水と発電分として県企業局の水道事業会計などからも115億円を負担する。同会計には例年、一般会計から繰入金が算入されている。

 04年11月の提訴から4年以上の時間をかけて争ってきた前橋地裁での訴訟で、建設予定地の地盤の危険性も大きな争点の一つになっている。

 住民側は、建設予定地は浅間山の噴火で生じた土砂が堆積(たい・せき)してできた軟弱な地盤であり、断層も走っているなど問題を抱えていると主張。岩盤がダムの重量に耐えられず地滑りを起こしたり、断層が動いてダムが壊れたりする恐れがあるとし、「地滑りの可能性がないことが確認できていない」と訴えてきた。

 住民側の説明によれば、奈良県の大滝ダムや埼玉県の滝沢ダムは、完成後の試験湛水(たん・すい)で地滑りが発生。その対策工事で数百億円の費用と時間がかかっている例がある。

 これに対し、県側は、地盤の問題は施工技術で解決でき、地滑りについては事前の完全な予測は難しいため土木工学的な対策を取っている、としている。