八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「八ッ場ダム中止」に知事ら反発

2009年8月9日

 総選挙を控え、民主党が発表したマニフェストに「八ッ場ダム中止」が掲げられてから、関係都県の知事、地元の町長らが反発しているとのニュースがたびたび報道されています。

https://yamba-net.org/wp/modules/news/article.php?storyid=839
「民主党政策集INDEX2009」

 民主党は前回総選挙(2005年)のマニフェストでも「八ッ場ダム中止」を掲げましたが、「郵政民営化」が唯一の争点になった四年前には、民主党の政策は注目されませんでした。今回は八ッ場ダム中止の可能性が高まっていることから反発が大きくなっているようですが、知事らの発言は国交省の見解を繰り返すものが多く、事実誤認も多くみられます。特に頻繁に取り上げられている利水問題、治水問題について、詳しい説明を下記のページに掲載しています。

◆「暫定水利権」の問題ー
https://yamba-net.org/wp/modules/tinyd2/index.php?id=23

◆「期待できない治水効果」
https://yamba-net.org/wp/modules/tinyd2/index.php?id=5

●2009年8月8日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000580908080001
ー水利権・還付金 行く末は 「八ッ場ダム中止」に知事ら反発

 総選挙の争点の一つ、国営八ツ場(や・ん・ば)ダム(長野原町)建設の是非。群馬県の大沢正明知事や埼玉県の上田清司知事らは民主党のマニフェスト(政権公約)通り建設を中止すると、水がこれまでのように取れなくなるし、公共事業費の削減にもならないと訴えている。本当だろうか。(菅野雄介)

民主党の論争平行線

 「ダムが中止になれば当然、『暫定水利権』は終わる」。大沢知事は7月の定例会見で、ダム参加を条件に国が利根川からの取水を許可した暫定水利権の問題を繰り返し語った。

 各都県によると、暫定水利権で得た水道水を使う人は埼玉が最多で約160万人、群馬は約13万人、千葉が約12万人、東京が約8万人という。ダムが完成すれば、暫定水利権はそのまま安定水利権に変わる見込みだ。

 もっとも、各都県は現在、夏場は大半が農業用水を転用した水利権で安定的に取水しており、ダム建設を前提とした暫定水利権は事実上、秋冬限定。埼玉は9割、群馬8割、東京都はすべてが秋冬のみの取水だ。

 上田知事は「もし渇水時期になったら埼玉県民は約30%の水は使用できない。これをカバーするために八ツ場ダムが必要」と会見で述べた。だが「暫定」を理由に、渇水時に取水が厳しく制限された例はほとんどない。「暫定」も「安定」もほぼ同列に扱われているのが現状だ。

 水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表は「知事たちはダム中止に反対するよりも、中止になった場合は暫定水利権を安定水利権として認めるよう国交省に働きかけるべきだ」と話す。

 大沢知事の発言通り「暫定水利権は終わる」のか。国土交通省などによると、暫定水利権が設定されていたダム事業が中止になった例は戸倉(片品村)、細川内(徳島県)、清津川(新潟県)の3ダム。ダム事業中止に伴って暫定水利権を失効させる法律はないという。

 埼玉、千葉、群馬の3県が暫定水利権を事実上返上した戸倉ダムを除き、残る2ダムは中止後も暫定水利権が残った。「飲み水として使っているのに、いきなり水利権の取り消しをするわけにいかない」(国交省北陸地方整備局)

 一方、国が八ツ場ダムを中止した場合に、5都県が利水者として負担してきた1460億円を返すことになるという「還付金」の問題は、暫定水利権の継続と分けて考えることはできない。負担金で暫定水利権を手に入れた5都県は、負担金を返してもらえば、結局はタダで水を手に入れる格好になるからだ。

 国交省関東地方整備局の幹部が7月7日に還付金問題を初めて明らかにしたのに対し、民主党は同16日、「公会計内での負担者の変更に他ならず、事業を中止しても継続した場合の事業費4600億円を上回ることはない」との談話を発表した。だがその後も、関係都県の知事らは「民主党がマニフェストにうたうような無駄な公共事業費の削減にはつながらない」との見解を示し続けている。論争はかみ合っていない。

●2009年7月31日 読売新聞より転載
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090731-OYT1T00839.htm
ー民主「八ッ場ダム中止」公約、関係知事反発ー

 国が群馬県長野原町で建設計画を進めている八ッ場 ( やんば ) ダムについて、民主党が次期衆院選の政権公約(マニフェスト)で、中止を掲げたことを巡り、関係する都県の知事から反発の声が相次いでいる。

 八ッ場ダム事業では、事業費4600億円のうち、同県や水の供給などを受ける5都県が約10億~約950億円を負担。2015年度の完成を目指し、今秋、本体工事が始まる。

 民主党が政権公約を発表した翌日の7月28日には、上田清司・埼玉県知事が定例記者会見で、「極めて無責任」と強く批判。
 水没予定地区住民の移転地造成やJR線の付け替え工事が進む群馬県の大沢正明知事も30日、前橋市内で開かれた自民党の立候補予定者の選対会議で、「地元の知事の話を一度も聞かずに中止と載せた」と反発した。

 また、東京都の石原慎太郎知事も31日の定例記者会見で、世界的な異常気象で予期せぬ渇水に備える必要があり、関連事業も進んでいるとして、「かなりの巨費を投じて進行中の工事を止めるというのは、結果として大きな無駄にしかならない」と述べた。

 この日は、千葉県の森田健作知事がダム本体工事予定地や住民の移転代替地などを視察。「千葉にとっても治水・利水の面で(八ッ場ダムは)大変重要。鳩山代表も政権を取ったら、現実的に考えるのではないか」と語った。

 八ッ場ダムを巡っては、市民団体のメンバーらが6都県の知事らを相手取り、事業負担金の支出は違法として支出差し止めなどを求めた訴訟で、東京地裁など3地裁は5、6月、災害軽減などダムの役割を認めるなどして、原告側の訴えを退ける判決を出している。(2009年7月31日20時27分 読売新聞)