「大規模公共事業 民主の中止宣言を再考の機に」(愛媛新聞)

2009年8月24日 愛媛新聞社説より転載
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200908241886.html
「09衆院選」大規模公共事業 民主の中止宣言を再考の機に

 動き始めた大型公共事業をストップできるのか。
 民主党が、群馬県の八ツ場(やんば)ダムなど国直轄大規模公共事業の中止をマニフェスト(政権公約)に盛り込んだことが、関係者に波紋を投げかけている。
 地元知事が民主党に抗議する一方、反対派住民は中止が現実味を帯びてきたことに大きな期待を寄せている。
 大規模公共事業、特にダム建設計画は、長年にわたって地域を分断、疲弊させ、地元の政治家や行政、住民まで巻き込んで政治問題に発展するケースも多い。
 民主党の方針は、過去のこうした「負の歴史」をあぶり出し、根本的な見直しをせまる契機だ。公共事業を真に必要な事業として脱皮させるチャンスととらえたい。
 民主党が主張する「無駄な公共事業の象徴」とされた八ツ場ダム。その計画をめぐる混乱と地元の反対闘争は、戦後の大型公共事業がたどってきた歴史そのものだ。
 八ツ場ダムは、千人以上の死者を出した1947年のカスリーン台風を想定した対策として、利根川治水計画の中に盛り込まれた。
 65年の建設計画発表以来、地元町議会の反対決議、度重なる計画変更、そして生活再建案の受け入れを経て基本計画の告示に至っている。
 道路や鉄道など周辺工事が進むが本体工事は未着工。2004年の基本計画変更で事業費は全国一の4600億円に膨れあがった。治水効果や利水の必要性などをめぐり、各地で関係訴訟が係争中だ。
 民主党に対し、埼玉県の上田清司知事は撤回を求める文書を鳩山由紀夫代表らに出した。利権や政治の思惑に振り回されてきた地元自治体として、こうした姿勢を取らざるをえなかった歴史を思う。
 大洲市肱川町で進められる山鳥坂ダムや、同様の問題を抱える全国のダムも、見直し対象となる可能性がある。
 中止か継続かを選択する前に、公共事業が地域に刻んだ傷跡の検証作業が必要だ。
 そもそも、結束の固い地方が分断され、進むも地獄、止まるも地獄の両すくみ状態はなぜ生み出されるのか。大規模公共事業に共通する構図が、その解答となる。
 計画が発表された時点で公共事業は事実上、後戻りしない。地方の事情が反映されない計画立案、予算配分の問題点も指摘されてきた。
 今後は速やかな情報公開こそが時代の要請だ。加えて計画段階からの住民参加、環境影響評価や混乱を招かない予算配分など、次期政権が取り組むべき改善点は多い。
 住民主役の政策。当たり前の視点で総括すれば、大規模公共事業のこれまでの正体と今後のあり方は、おのずと見えてくる。