八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

ダム中止補償に新法

◆2009年9月27日 朝日新聞一面トップ記事より転載
http://www.asahi.com/politics/update/0926/TKY200909260262.html

ーダム中止補償に新法、年明け国会提出 国交相が表明ー

 前原誠司国土交通相は26日、ダム計画を中止しても水没予定地の生活再建を国の財政支援で継続することを明確にする補償法案を、年明けの通常国会にも提出する考えを表明した。現行では計画中止の場合、移転を余儀なくされた地域に国の財源で補償を進める根拠法がなく、公共事業から国が撤退する際のルールを法律で定めるのが狙い。

 当面は八ツ場(やんば)ダム(群馬県)と川辺川ダム(熊本県)で適用し、将来的には公共事業全体での適用を目指す考えとみられる。
 前原国交相は同日、川辺川ダムの予定地を視察。水没予定地で約500世帯のほぼすべてが移転した熊本県五木村の住民や同県の蒲島郁夫知事、球磨川・川辺川流域の12市町村長らと意見交換した。

 前原国交相は「補償を裏付ける立法は、特別立法ではなく、普通の立法としてやらせていただきたい」と述べ、ダムだけではなく公共事業全体に対象を広げることを示唆。その後の会見では、現状の公共事業は一度始まるとやめるという前提がなく、中止した場合の補償措置や補償を裏付ける財源措置がないと指摘。こうした措置を定める法案をイメージしているとし、「次の通常国会に提出したい。それがなければ(八ツ場ダムも川辺川ダムも)止めることはできない」と語った。

 民主党はダム事業を廃止した場合の特別措置法の骨子案をすでに示している。水没予定地を国が特定地域に指定して、国、都道府県、自治体、地域住民らで振興協議会をつくり、施設や道路整備などの振興計画を策定するとの内容だ。振興計画に国が交付金を出す仕組みで、前原国交相はこうした考え方をベースに、ダムに限らず公共事業を国が中止、撤退する場合に備えた法案の検討を進めるとみられる。

特定多目的ダム法や水源地域対策特別措置法では、ダムの受益地となる下流域の都道府県や自治体も、水没予定地の住民が移転する代替住宅地の造成や生活道路の整備といった生活再建費用を負担している。しかし、建設が中止されると、こうした自治体が水没予定地の生活再建策を負担する必要がなくなる。

 このため、ダムが完成しなければ生活再建の財源が確保されない仕組みになっており、八ツ場ダムの群馬県長野原町や川辺川ダムの五木村など、当初はダム反対だった水没予定地の自治体がいったんダムを受け入れると建設推進に転じるケースが多い。今回も両町村は前原国交相に中止の白紙撤回を求めている。

 法案化への言及には、水没予定地の生活再建への国の関与を明確にし、中止を受け入れやすい環境を整える狙いもあるとみられる。(木村和規、歌野清一郎)

(写真)地元住民(右)の意見を聴く前原国交相=26日午後2時、熊本県五木村、恒成利幸撮影

◆2009年9月27日 毎日新聞東京朝刊より転載
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090927ddm001010083000c.html

ー前原国交相:ダム中止に補償新法表明--群馬・八ッ場と熊本・川辺川ー

 前原誠司国土交通相は26日、八ッ場(やんば)ダム(群馬県)と川辺川ダム(熊本県)の建設中止に伴い、地元への補償措置を定めた新法を来年の通常国会に提出する考えを明らかにした。熊本県の蒲島郁夫知事や流域市町村長らとの意見交換会後の記者会見で述べた。
 会見で前原国交相は、川辺川ダムについても八ッ場ダム同様、中止したほうが、継続した場合よりコストが高くなるとしても、中止の考えは変わらないことを明言した。

 両ダムの中止を明記した民主党マニフェストで、補償措置がなされることが中止の前提と記載していると指摘し、「マニフェストに掲げたことを着実にやるため、できれば、補償措置の立法を次の通常国会に提出したい」と話した。

 また、事業着手から長期間経過しても完成しない事業を中止するための事業評価を盛り込んだ法律も検討しているとしたが、「補償措置がなければ事業中止できない」として通常国会には補償措置の新法のみを提出する構えを見せた。

 前原国交相は蒲島県知事らとの意見交換に先立ち、相良村の建設予定地を視察、その後、水没予定地の五木村住民との意見交換会に出席した。ダム本体工事の中止と生活再建事業の継続を明言した。

 そのうえで、中止の理由を、計画策定から43年経過しても本体が未着工で川辺川ダムと球磨川にあるダムとで球磨川水系の水量調節をするとの治水策に疑問があると説明した。

 前原国交相は会見で、「早期に専門家のチームを結成する」と述べ、国として川辺川ダムの代替治水案に積極的に関与する方針も表明した。専門家チームが八ッ場ダムの代替案も一緒に検討するかどうかは「決めていない」とし、人選も未定という。【石原聖】