政権交代後、テレビ等で八ッ場ダム予定地住民の声が盛んに取り上げられていますが、地元の住民といっても、様々な背景、立場、考えがあるのは、どこの地域ともかわりません。マスコミ報道が過熱する中、地域全体の方向に反する意見は、なかなか表に出てきませんが、下記の記事は数少ないそうした声を取り上げたものです。
2009年10月22日 東京新聞群馬版記事より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20091022/CK2009102202000120.html
前原誠司国土交通相が建設中止を表明した長野原町の八ッ場(やんば)ダム。中止撤回を求める共同声明を十九日に発表した関東六都県の知事は、前橋市で二十七日に開かれる関東地方知事会でも議題として取り上げる考えだが、地元ではダム建設に反対する住民も少なくない。水没予定地を中心に町内を歩き、住民の声を聞いた。 (山岸隆)
「八ッ場ダムは最初から不要のダム。必要なら、もう完成していたはずだ。昔は住民の多くが建設に反対だった」。水没予定地の川原畑地区の消防士高山彰さん(55)は、付け替え予定のJR吾妻線沿いの自宅前で、ダム湖に消えるはずだった山の斜面を指さしながら胸の内を明かした。
「もともと地元がダムを造ってくれと頼んだわけじゃないんだから」と高山さん。「国は、長い間苦労を重ねてきた地元住民の生活再建を手厚く行うなど中止後の施策を充実させるべきだ」と語る。
建設予定地の地形や地質、自然環境保護の観点から中止を歓迎する声もある。
同町の牧山明町議(52)は「地滑りなど安全性にも問題があり、建設には反対。貴重な動植物の宝庫である豊かな自然を残し、国と下流都県の責任で住民の生活再建を支援してほしい」と強調。川原湯温泉街の近くで乳業を営む豊田武夫さん(58)も「傾斜地で地盤がもろくて危険。ダム建設に適さない」と指摘する。
町長や住民代表らから中止反対の声が上がる中、匿名を条件に本音を漏らす住民も。
一貫してダム建設に反対してきた林地区の六十代の男性は「ダムができれば、バラ色の生活が待っていると思うのは間違いだ。ダム湖で観光客を誘致できる時代ではない」。川原湯地区の五十代の男性も「歴史と情緒のある川原湯温泉街が湖底に沈むのはもったいない。今のまま残せばいいじゃないか」と訴えている。