2009年10月27日に行われた関東知事会と前原国交相との意見交換会において、大沢群馬県知事は1998年9月洪水による被害を例に八ッ場ダム建設の必要性を訴えました。写真パネルを使って洪水の被害状況を伝える場面が、新聞紙面、テレビ映像などで取り上げられています。
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10月28日付 朝日新聞群馬版
「関東知事会、国交相と意見交換」
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000000910280001
写真=98年9月の台風5号の被害の様子をまとめたパネルを前に、八ツ場ダムの治水上の必要性を説く大沢正明知事
この時の洪水は、近年の大きな洪水被害の事例として、八ッ場ダム工事事務所のホームページにも写真が掲載されています。
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http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/about/colnmu2.htm
関東地方における近年の洪水被害ー「利根川前橋市県庁付近」
しかし、98年洪水による被害は、利根川河川敷にあふれた水により便宜的に駐車していた車両が流されたという、きわめて限定的かつ人為的なものでした。これをもってダム建設が必要と訴えることには無理があります。98年洪水被害により、駐車場利用は廃止され、災害現場付近は現在、親水公園として整備されています。
災害直後、群馬県議会定例会(1998年9月30日)において、山下勝県議、早川昌枝県議が河川敷での駐車場利用の問題を取り上げ、駐車場を管轄する総務部長とやりとりしている議事録を転載します。
◆【山下県議による質問】
台風5号の大雨で利根川河川敷駐車場から大量の車両が流失するという被災状況が報道され、まことに気の毒だと思いながら見ておりました。当日の職員関係の状況を聞きますと、出勤して間もなく増水の放送があり、駐車場に行ったが間に合わなかった。出勤後、仕事に出かけて庁舎にいなかった。増水が従来にない速さで、1時間もかからずに車流失までに至ったなど、大雨の怖さというものを改めて認識させられました。後日、職員間で台風が予報されているのになぜ駐車させたのか、駐車したのか、もっと素早く強引に搬出できなかったのか、もっと強力な放送や連絡をしなかったのかなど、いろんな意見が交わされたやに聞きます。
その後、駐車場担当者の自殺が報道され、理由はわかりませんが、私は大変お気の毒なことだと感じました。とりわけこの種事件のありように思いをはせました。経過や内容はともあれ、現実は自然災害が起きたのですから、まず次の災害を食いとめる、そして災害復旧、今後の対策をどうするかという手順ではないかと思うのであります。
そこで、第1は、河川敷駐車場でどういう被災状況だったのか、まずお聞きいたします。
【総務部長による答弁】
御指摘のとおり、まさに経験したことのないような速さで水位が上がりまして、そのため今回の被災となったというふうに考えておるわけですが、現在までに把握できている流された車の台数、報告されたものといたしまして85台となっております。そのうち確認できたものが73台、大変にお気の毒なことであったというふうに思っています。
流された車の引き揚げ費用の負担についてでありますけれども、もともと河川敷駐車場は県や前橋市の職員などの利用者に便宜を図るというふうな趣旨で設置されているものでありまして、駐車場使用承認の際及び河川敷駐車場の入り口に設置した利用案内によりまして、河川の増水または非常事態発生のおそれのあるときには駐車を利用してはならないこと、また、駐車場で発生した事故についてはすべて当事者がその責めを負うものとするということを承知していただいております。したがいまして、流された車の撤去費用については、これも大変に気の毒ではあるわけですけれども、駐車場の当該利用者にお願いいたしまして、県としては保険請求等に必要な罹災証明の発行など、できる限りの協力をしているというふうな状況であります。
また、河川敷駐車場が利用できなくなったことにより、職員が通勤に不便を来しています。今後の対策についは、現在鋭意検討を進めているところでありますが、河川敷駐車場についてはこれを廃止することといたしまして、当面、本庁舎及び大渡町庁舎を含めた周辺の職員駐車場を利用するための距離制限の見直し及び通勤方法を公共交通機関に変更していただくなどの方法により対応したいというふうに思っております。
来年の9月には新県庁舎の完成に伴い、大渡町庁舎から多くの職員が入ってまいります。今後、これらを含め、総合的に駐車場対策を検討してまいりたいというふうに考えております。
◆【早川県議による質問】
さて、今回の車の流失は、一歩間違えば人命にもかかわりかねない事故であったこと、また、本当に残念ながら、その後の処理の中で職員の方のとうとい命が失われたことを重大にとらえ、質問させていただきます。
県は今回の事故に対して、県としては責任がないことを事故後いち早く公言していますが、果たして本当にそう言い切れるのでしょうか。県は職員に駐車許可を与え、ゲートやパスカードまでつくり、河川敷という災害時にはリスクの多い場所に駐車させているのです。今回は、台風直後とはいえ、出勤時には際立った水位変化も目視できず、駐車禁止の指示もありませんでした。出勤した職員が何の情報も指示もない中で通常の駐車をしたとしても、やむを得なかったと思います。
最大の問題は、この朝、5時30分ごろより急激な水位変化が起こることをいち早く察知できていた河川課から、朝7時には、危ないからゲートを閉めた方がよいという重大な情報提供を迅速・正確に受けとめ、判断し、ゲートを閉めるなどの緊急対応ができるシステム、マニュアルがなかったことです。確かに管理運営要綱には緊急災害時の対応について会議を招集するなどの決め事がありますが、肝心の河川課との関係は極めて不十分でした。
そもそも河川敷を脱法的に駐車場に流用しているのですから、そうした厳格なマニュアルがあってしかるべきだったのではないでしょうか。そうした決め事がされていれば今回の事故は未然に防げた可能性があります。
【総務部長による答弁】
今回の問題ですけれども、この5号につきましては、8時過ぎに河川が急激に増水いたしまして、直ちに駐車場を閉鎖する作業に取りかかったわけですけれども、増水が余りにも急激だったため、数百台の車は移動させることができたわけですけれども、残念ながら85台は流出してしまったものであります。
県の事後の対応についてでありますけれども、先ほど山下議員にお答えいたしましたとおり、河川敷駐車場はもともと県や前橋市の職員などの利用者に便宜を図るという趣旨で設置されたものでありまして、県では、繰り返しになりますけれども、駐車場の使用承認の際及び河川敷駐車場の入り口に設置いたしてありますところの利用案内によりまして、河川の増水のおそれのあるときには駐車場を使用しないでくださいとか、あるいは駐車場で発生した事故につきましては当事者がその責任を負ってくださいというふうなことで、そのことを承知していただいているというふうなものでございます。したがって、流された車の撤去費用については、大変お気の毒でありますけれども、当該利用者にお願いをしております。
御指摘のありましたいろんなところとの話し合いはどうかというふうな問題でありますけれども、関係職員とは話し合いをしてきており、既に多くの職員には納得していただいておりますし、また、職員団体とも今後の対応などについて話し合いをし、理解と協力をいただいているところであります。(傍聴席より「でたらめやっているんだ」と呼ぶ者あり)