八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業、来年度予算案154億円

 前原大臣は就任早々八ッ場ダム事業の中止方針を明らかにしましたが、関係都県(東京・埼玉・千葉・群馬・茨城・栃木)知事やダム予定地地元代表らの反発があり、中止手続きをとれずにいます。
 このほど政府の来年度予算案が発表され、八ッ場ダム事業には本体工事費を除いた満額が計上されることになりました。財政難、全国の公共事業費大幅圧縮の中、八ッ場ダムの来年度予算案は破格の扱いを受けたことになります。地元では、関連事業と生活再建とが密接に結びついているとの認識が一般的ですが、自民党をバックとしたダム推進派の主張どおり、旧政権下と同様にハコモノ作りに終始するのであれば納税者の批判は免れません。
 地方自治の観点からすれば、地域の方々が自ら地域再生を目指すことが望ましいのですが、半世紀以上ダム計画に蝕まれてきた地域がダム依存体質から脱却するのは容易ではありません。巨額の税金を飲み込みながら衰退の一途を辿るダム予定地ー税金の使い道が正しいかどうかは、結果として現地の今後の状況に反映されることになります。

*2009年12月17日 「前原大臣会見要旨」より一部転載
ー仮にダムの中止ということになった場合に、今はダム湖というものを前提に生活再建というものの考えをされている訳でありますけれども、仮に中止となった場合にどういった生活再建というものがあり得るのかという議論をこれはお許しがいただければ、この点については立場が違いますのでお許しをいただければこういった議論もさせていただきたいと考えております。

 上記大臣の見解に対する地元からの反応
「意見交換会の開催についてのお願いに対する回答について」(2009年12月18日、八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会)より一部転載
ーなお、水没地区住民は現在地での生活再建ではなく、ダム湖を前提に代替地で再建を考えていますので、「仮にダムが中止になった場合」の生活再建について、議論することはできません。

◆2009年12月26日 読売新聞群馬版より一部転載
ー八ッ場ダム154億計上 地元安堵ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20091226-OYT8T00021.htm

10年度予算案 他の公共事業は大幅減額
 政府の2010年度予算案が25日発表され、県関連では、前原国土交通相が中止表明した八ッ場ダム(長野原町)に154億5000万円が計上され、生活再建継続を求めていた地元から安堵(あんど)の声が上がった。一方で、他の公共事業は大幅な減額が並んだ。

 ■八ッ場ダム

 八ッ場ダムの地元住民は17日に前原国交相との意見交換会受け入れを決めた際、来年度予算案で十分な生活再建関連費用が盛り込まれなかった場合は、再度拒否する構えを示した。高山欣也・長野原町長は、国交省が8月に概算要求した194億円からダム本体工事費(約38億円)を差し引いた150億円台を目安とすることを示唆していた。

 予算案決定を受け、八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「大臣と会うことになると思う」と述べ、高山町長も「予想の満額。1月24日は予定通り会おうと思う」と話した。

 一方で、民主党県連などが凍結を求めている仮称・湖面1号橋などの具体的な事業内容は、3月末に決まる実施計画まで明示しないとした。このため川原畑地区ダム対策委員会の野口貞夫委員長は「具体的にどの事業にどれだけ予算が付くかの説明を受けないと喜べない」と話している。

 ■他のダム関連

 一方、他のダム関連事業は、縮小の方向が予算上も明確になった。

 国直轄事業では、吾妻川の酸性の水を中和する吾妻川上流総合開発が5500万円(今年度1億円)、既存6ダムの機能向上を図る利根川上流ダム群再編が8000万円(同2億円)といずれも減額。前原国交相は25日、両事業を含む全国89事業を再検証の対象とし、「必要最小限の予算案とした」ことを明らかにした。

 また、国の補助を受けて県が行うダム事業について前原国交相は、各知事に再検証を求めている途中であることから、「3月末の実施計画確定後に予算を公表する」と、個別の予算額は示さなかった。県内では、増田川ダム(安中市)と倉渕ダム(高崎市)が対象だが、増田川は大沢知事が今年2月に再評価する考えを示し、倉渕は03年に県が計画を凍結している。

◆2009年12月26日 上毛新聞より転載
ー10年度予算案閣議決定、八ツ場生活再建に155億ー
http://www.raijin.com/news/a/26/news01.htm

 政府は25日、政権交代後初めてとなる2010年度予算案を閣議決定した。公共事業関係費を32年ぶりの低水準まで削り子育てに手厚く配分する予算改革に挑んだが、概算要求からの歳出圧縮は3兆円足らず。一般会計総額は92兆2992億円と過去最大に膨らんだ。財源不足の壁に阻まれ、マニフェスト(政権公約)の一部は実施を断念。それでも新規国債発行額は44兆3030億円と空前の規模に達した。八ツ場ダムの生活再建事業には地方負担分を含め155億円が確保された。

 政府が25日に閣議決定した来年度予算案。八ツ場ダム建設事業の生活再建関連に155億円が計上されたことを地元の長野原町などは好意的に受け止め、予算案の中身を開催条件とした来年1月の前原誠司国土交通相との意見交換会にも前向きな姿勢を示した。県は地方交付税の増額を期待する一方、公共事業費の大幅削減に伴う道路整備の遅れへの懸念を強めている。

 政権交代前の8月末に国交省が行った概算要求では同ダム建設事業費約194億円のうち本体工事費を除く生活再建関連費などは約148億円だったが、予算案では上積みとなった。

 このため、長野原町の高山欣也町長は「これまで通りの生活再建事業を進めるのに十分な金額」と評価。前原氏との意見交換会も「断る理由がないだろう」とした。東吾妻町の茂木伸一町長は「詳細は聞いていないが、生活再建をやろうとする意思が感じられる額」と述べた。

 ただ、地元が予定通りの建設を求める一方、民主党県連が入札中止を要望して焦点となっている湖面1号橋は、前原氏が22日の会見で「来年3月末の実施計画で明らかにする」としたため公表されなかった。

 事業仕分けで抜本的な見直しの必要性が指摘された地方交付税は大幅な増額となった。都道府県別の交付額は定まっていないが、県財政課は「1200億円台後半を間違いなく上回る」と本年度の1246億円から増額になると期待している。また、「見送り」とされた住宅用太陽光発電導入補助金も本年度の倍となり、県環境政策課は「家庭での温暖化対策の切り札である太陽光発電の普及促進が期待できる」と歓迎した。

 一方、「廃止」とされた農道整備事業。継続中の事業は「農山漁村地域整備交付金(仮称)」を新設して対応する方針が示されたものの「新交付金は予算額が少なく、本県の事業が対象になるか不安」(県農村整備課)との声が上がった。このほか道路整備予算が全国ベースで前年比24%減となり、川滝弘之県土整備部長が「非常に厳しい内示状況。本県の道路整備への影響が懸念される」とのコメントを出した。