八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

衆議院国交委員会で八ッ場ダム参考人聴取

 衆議院国土交通委員会で3月16日に行われた八ッ場ダムに関する参考人聴取に関連する記事を転載します。

●朝日新聞群馬版 2010年3月17日
ー衆院委で地元住民 温泉現状訴えるー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581003170001

 八ツ場ダム(長野原町)の中止問題で、衆院国土交通委員会は16日、大学教授ら5人の参考人から意見を聴いた。地元住民として意見を述べた川原湯温泉旅館組合長の豊田明美(あき・よし)さんは「生活再建はもう待っていられない」と述べ、「ダム問題としてとらえるのではなく、民意を採り入れた地方再生のモデル地区と考えてほしい」などと訴えた。

 豊田さんは全戸が水没予定の川原湯地区について、1998年に旅館18軒、飲食店11軒、184世帯535人で、22万人の観光客が訪れたと紹介。それが10年後には旅館7軒、飲食店2軒、53世帯174人になり、観光客も11万人に減ったと説明し、「再建の時間的猶予はもうない」と強調。「八ツ場ダム中止は、住民不在のトップダウンで決められた。ダムが中止になると、また再建をゼロベースで考え直さなければならない」と訴え、民主党や前原誠司国土交通相を批判した。

 一方、ダム予定地周辺の地滑りの危険性について問われ、豊田さんは「安全でないと言われたら詐欺にあったようなもの。(住民の代替地への移転は)国を信じている」と戸惑いもみせた。

 このほか衆院国交委員会では、水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之・共同代表や虫明功臣(むし・あけ・かつ・み)・東大名誉教授(水文・水資源)、松浦茂樹・東洋大教授(社会基盤整備史)、奥西一夫・京大名誉教授(水文地形学)が意見を述べた。

●読売新聞群馬版 2010年3月17日
ー旅館組合長 ダム湖前提の再建訴え 衆院国交委住民初の意見陳述ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100317-OYT8T00013.htm

 八ッ場ダムを巡り、衆院国土交通委員会で参考人質疑が開かれた16日、川原湯温泉旅館組合長の豊田明美さん(45)が登壇し、ダム湖を前提にした生活再建を早急に進めるよう訴えた。政権交代後、地元住民が国会で意見を述べるのは初めてで、委員からも地元の意向を確認する質問が相次いだ。

 豊田さんは意見陳述の冒頭、1998~2008年の10年間で川原湯温泉街に18軒あった旅館が7軒に減り、観光客も22万人から半減したと窮状を説明。柏屋旅館の宿泊営業休止について、「ゴールの見えないダム建設が閉鎖に追い込んだ」と指摘し、「ほかの6軒も、昨今の騒動で心身ともに疲れ果てた状態。生活再建完了までの時間軸を示してほしい」と訴えた。

 また、昨年夏の衆院選でダム建設中止をマニフェストに掲げながら、群馬5区に候補者を立てなかった民主党に対し、「なぜ住民の窓口も作らず、一方的にダムを中止したのか」と追及。「独裁的な進め方で信頼関係が失われて今の膠着(こうちゃく)状態になった。その渦中で我々の生活は置き去りにされた」と怒りをあらわにした。

 その上で、代替地での温泉街再建と湖面1号橋の建設推進を要望した。委員から地元が求める解決策を問われると、「ダムを造って、ダムに絡める再建が一番時間がかからない」と答えた。

 委員会終了後、取材に応じた豊田さんは「東京では現地の声はなかなか伝わらない。直接、訴えることが出来て有意義だった」と振り返った。

●しんぶん赤旗 2010年3月17日
ー地滑りの危険ただす 塩川議員 八ッ場ダム参考人質疑 衆院国交委ー
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-03-17/2010031704_04_1.html

 衆院国土交通委員会で16日、群馬県八ツ場ダム問題に関する参考人質疑が行われました。日本共産党の塩川鉄也議員が、中止理由の住民・流域自治体への説明問題やダム建設がもたらす地滑りについて質問しました。

 塩川氏は、建設されれば水没する川原湯温泉旅館組合の豊田明美組合長に対し、「建設中止の理由は政府からどのように聞いているか」と質問し、豊田氏は「少子化、人口減少、国の借金の三つの理由だ」と答えました。

 塩川氏は政府の対応について、「八ツ場ダム建設に即した理由は説明されていない。八ツ場ダムは利水・治水上必要が無いということを丁寧に説明すべきだ」と述べました。

 塩川氏は、奥西一夫京都大名誉教授がダム建設をおこなった場合、ダム周辺での地すべりが起こる可能性が高くなると陳述したことに対して「地すべり問題で被害を出した例などはあるか」と質問しました。

 奥西氏はイタリアのバイオントダムで地すべりのためダムに津波が起こり、2000人の死者が出た例をあげた上で、「ダムの地すべりについては慎重な検討が必要であるにもかかわらず、八ツ場ダムの場合、政府は建設することを前提に、地すべり問題を検討してきた」と述べました。

 豊田氏は、地すべりの問題について「移転に際し、安全面は織り込み済み。安全でないなら、詐欺に遭ったようなものだ」と述べました。