第二の普天間?

2010年6月16日 
 今朝の毎日新聞一面に、八ッ場ダムのことが大きく取り上げられていました。理想を語って選挙民の歓心を買いながら、政策を実現できない民主党の未熟さを、普天間と八ッ場を引き合いにして批判した記事です。
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http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100616ddm001010053000c.html
ーガバナンス・国を動かす:第4部・つまずきの後に/2 吟味なき公約の危険ー

 「八ッ場ダムは第二の普天間」という言葉は、先日、朝日新聞一面の薬師寺克行編集委員の記事でも使われていました。確かに、理想を唱えながら、なかなか現実の政策が進まないという意味で、普天間と八ッ場ダム問題をめぐる民主党政権の対応は似ています。
 上記の毎日新聞の記事では、「扱いが揺れ動くのは、野党として政策の吟味が不十分だったためだ。しかし、不完全な公約でも政権に就いた途端に国家意思として「正統性」を持つ。」と指摘し、民主党が八ッ場ダム中止をマニフェストに掲げたことに疑問を呈しているようです。

 八ッ場ダム予定地では、今も生活再建関連事業という名の破壊が進んでいます。八ッ場ダム事業にはあまりに多くの問題があり、旧政権が利権のために事業を官僚に丸投げしてきた責任は重いといわざるをえません。一般国民が政策に全く関与できない状況で公共事業が進められてきたことは大きな問題です。55年体制が崩壊した今、旧政権によって進められてきた八ッ場ダム計画が見直されるのは当然のことです。
 工事現場に取り残された水没予定地には川原湯温泉がありますが、多くの人々に愛されてきたこの小さな温泉場は今や観光業を維持するのが困難で休業が相次いでいる状況です。地元の住民は何十年も放置されてきました。最小不幸社会を目指す政治であれば、前政権の政治の貧困の犠牲になってきた人々のセーフティーネットをまず構築しなければならないはずです。八ッ場ダム問題解決の第一歩は、地元住民の生活再建の実現です。
  
 普天間でも、「政策の吟味なしに」理想を語った鳩山氏が批判され、退陣を余儀なくされました。一方で、普天間問題に長く関わってきた人々や沖縄県民の間では、「普天間移設」の可能性の扉を開いたとして、鳩山氏を評価する声も少なからずあるといわれます。
 問題の所在はどこにあるのでしょうか? 普天間の場合は、アメリカとの合意という外交問題が絡みますので、問題はより複雑ですが、記事がいうように、「不完全な公約でも政権に就いた途端に国家意思として「正統性」を持つ」のであれば、とっくに八ッ場ダムの中止という政策は正当性を持たなければならないはずです。「野党としての政策の吟味が不十分だった」のなら、与党になって政策に取り組めばよいだけのことです。ところが、自民党系の関係都県知事が推進という理由で、八ッ場ダム事業の見直しは政権交代後も行われていません。
 
 毎日新聞の記事には、二つの事実誤認があると思われます。一つは、2005年の総選挙の際、民主党が首都圏住民へのアピールのために八ッ場ダム中止を選挙公約に入れたとある点です。事実がそうであるなら、選挙戦中、八ッ場ダム中止を首都圏の民主党立候補者たちはアピールしたはずですが、そういう事実はありませんでした。”八ッ場ダム”という言葉が一般に知られるようになったのは、普天間と同様、政権交代によってであり、2005年当時は、首都圏住民の多くが八ッ場ダム事業の存在すら知らず、選挙戦で訴えても票に結びつく可能性はありませんでした。
 また、この記事では、鳩山幹事長が市民団体の要請で八ッ場ダム予定地を視察したとあります。けれども、こうした事実はありません。当時の新聞記事をこちらに転載していますが、これらの群馬県版の記事でもそんなことは書かれていません。
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 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=463

 八ッ場ダム問題は、情報を官僚体制が一手に握ってきたことが問題の根っこにあります。残念ながら、昨年の政権交代後もこの状況は何ら変わっていません。八ッ場あしたの会では、一年前の2009年6月に八ッ場ダム事業の費用対効果(B/C)に関する公開質問書を国土交通省に提出しましたが、いまだに回答がありません。一年たっても回答がもらえない公開質問書をこちらに掲載しています。
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  https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=601