八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムに関する各政党の公開アンケート結果についての当会の見解

2010年6月26日
 
 2010’参院選を控え、当会が実施した八ッ場ダム問題に関する公開アンケートへの各政党の回答結果です。
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https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=943

 八ッ場ダム計画は昨年の総選挙で民主党がマニフェストの冒頭に掲げたことから、政権交代の象徴として注目を浴びることになりました。今回の参議院選挙にあたって、各政党の姿勢が大いに注目されるところです。
 今回、回答をお寄せいただいたのは、民主党、自由民主党、公明党、共産党、社民党、国民新党、みんなの党でした。
 その回答を見ると、自由民主党が八ッ場ダム事業の完成、共産党、社民党が八ッ場ダム本体工事の中止と関連事業の見直しを主張しており、この三党は昨年の見解と変わっていません。

 政権交代前に自民党と連立政権を組んでいた公明党は、昨年は公開アンケートに「回答を差し控える」としましたが、今回は具体的な設問に回答を寄せました。八ッ場ダム計画は「問題がある」、「事業についての情報公開が十分なされてこなかった」とし、「治水対策として八ッ場ダムぬきの利根川河川整備計画を策定する」、「科学的検証、経済的検証を行った上で、民主主義の手続きによった地元住民や自治体の合意を確立し、判断すべきと考えます」などの回答から、八ッ場ダム問題を解決するための取り組みが必要との同党の新たな見解が読み取れます。(注1)

 また、昨年は、「現時点において出来るだけ客観的な調査によって事業継続か中止を決める」として八ッ場ダム事業に対する判断を避けた国民新党は、今回は一歩踏み込んで、情報公開、水没予定地域の破壊などの点で「八ッ場ダム計画には問題がある」とし、「本体工事を中止し、水没予定地域の真の再生事業に切り替える」という政策を明らかにしました。
 公明党、国民新党が八ッ場ダム計画に対する姿勢をより明確にしたことは、国民の関心に公党として応えたもので、評価したいと思います。

 昨年8月に結成されたみんなの党には、今回初めて公開アンケートを送付し、〆切後の6月25日に回答が届きました。八ッ場ダム事業には、事業の目的、安全性など様々な問題がありますが、費用便益計算によって事業継続の可否の結論を出すべきとしており、どのような前提条件で費用便益計算をしたのかは不明ですが、関連事業を継続し、本体工事を着工するとしています。本体工事の着工を支持しているのは、自由民主党とみんなの党という結果でした。(注2)

 一方、民主党は今回、具体的な設問には答えませんでした。設問に答えない理由として、「政府と一体となって政策を決定していく立場」であるとしていますが、政権党としては以前にも増して説明責任が求められる立場です。
 「中止の方針を表明している八ッ場ダムを初め、ダム事業については、すべての事業について検証を行い、これらを踏まえて今後の治水対策のあり方を検討していきます」とありますが、これは前原国交大臣が今進めていることをそのまま表現したもので、これだけでは政党としての姿勢が見えません。

 政権党としての民主党に求められている大きな課題の一つは、ダム予定地の生活再建、地域再生をどのように進めていくか、その取組みの姿勢を明確にすることです。政権交代後もダムを前提とした関連事業が進み、水没予定地の人々は工事現場の中に取り残され、地域は崩壊の危機に瀕しています。このままでは不安に苛まれている地元の人々の行政不信、政治不信を払拭することはできません。かといって、ダム事業がこのまま進めば、地元の人々の犠牲がさらに大きくなることは目に見えています。水没予定地域住民への支援策、ダム中止後の生活再建のための法整備への早急な取組みが必要です。(注3)

 民主党にいま一つ求められていることは、河川行政の真の民主化です。国土交通省の有識者会議が参議院選後に示す予定となっているダム見直しの進め方は、公開での徹底した議論を保証する市民参加型のものではなく、その結果として多くのダム事業にゴーサインを与えてしまうのではないかと強く危惧されています。民主党はダム事業に関する情報を広く公開し、国民とともに河川行政を根本から見直していくという姿勢を明確にすべきです。

 政官財癒着の利権構造がダム事業を見直すことに大きな抵抗を示すのは当然のことです。何十年も先延ばしにされてきたこの難題を解決するのが容易でないことは、想像に難くありません。けれども、このままでは地元の人々にとっても、社会全体にとっても取り返しのつかないことになるのは明らかです。八ッ場ダム事業の中止を選挙公約に掲げた民主党に、多くの国民が政策の実現を期待してきました。民主党には、具体的課題への早急な取り組み、政権を付託した国民の期待に応えるなお一層の努力を強く求めたいと思います。

【参考】
注1 2010年6月26日 読売新聞群馬版記事より一部引用
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100626-OYT8T00065.htm
ー八ッ場対応、市民団体がアンケ 国民新「中止」に決定公明は「検証して判断」ー

―公明はさらに「(建設)計画に問題がある」とも答えたが、同党(群馬)県本部代表の加藤修一参院議員は「県本部としては、本体着工の推進を求める立場は変わっていない」と話している。

注2 みんなの党の公認として参院全国区から出馬する群馬県の「ご当地候補」、上野宏史氏は、建設官僚出身で八ッ場ダム事業と関係の深い自民党元職、上野公成氏の女婿であり、群馬県では自民党とみんなの党が連携して選挙活動を展開しています。
一方、八ッ場ダムをストップさせる各都県の会が、それぞれの都県選挙区の立候補者に公開アンケートを実施していますが、みんなの党公認の埼玉選挙区の候補者は八ッ場ダム中止に賛成、茨城選挙区の候補者は分からないと回答しており、同党の政党としての方針は必ずしも明確ではないようです。

◆2010年6月21日 読売新聞群馬版より一部転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100621-OYT8T00004.htm
ー知事選を占う比例選ー

―前橋市の結婚式場で、みんなの党から比例選に立候補する元経済産業省官僚の上野宏史の後援会発足集会が開かれた。宏史は、約500人の支援者を前に「6年間、国政に携われなかった義父、上野公成(元自民党参院議員)の思いを引き継ぎ、群馬のために働きたい」と決意表明。公成も「今回の出馬は、反民主の姿勢を示すため」とあいさつした。
みんなの党の公認発表からわずか5日での旗揚げながら、上野の集会には、自民党の中島篤、狩野浩志両県議のほか、沼田市長の星野已喜雄ら現職首長7人も駆け付ける盛況ぶり。改めて「上野党」の影響力の大きさを見せつけた。

◆2010年6月16日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000431006160001
ー比例区に上野氏 出馬を正式表明ー

―上野氏は自民党元職の上野公成元官房副長官の娘婿。実父が沼田市出身で、東大卒業後に旧通商産業省(現経済産業省)入り。今月14日付で退職した。義父の選挙地盤を生かし、県内で重点的に活動する予定

 注3 群馬県の「ご当地候補」としてみんなの党の上野宏史氏と激しい選挙戦を繰り広げているのが、民主党公認候補の小寺弘之前知事です。小寺氏は八ッ場ダムをストップさせる群馬の会の公開アンケートに対して、「八ッ場ダムは国策として進められた。犠牲者である地元住民の思いをしっかり受けとめ、国政の場においてこの問題の解決に全力を尽したい」と回答しています。