八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「八ッ場は必要」と嘘のキャンペーンを続ける東京都水道局

 水需要予測見直しを求める都議会請願採択を無視して、
       「八ッ場は必要」と嘘のキャンペーンを続ける東京都水道局
                               八ッ場ダムをストップさせる東京の会 深澤洋子

 東京都議会で八ッ場ダムをストップさせる東京の会が提出した請願が可決された6月16日、私たちは即刻、「東京都水道局は 水道に関する水需要予測をすみやかに実施してください」と題する要望書を、請願可決に尽力してくださった議員さんたちも見守る中、都 知事と水道局長宛に提出しました。その後、いつ水需要予測の見直しをするのかと、水道局に問い合わせましたが、「見直しをするかどうかも含め 何も決まっていない」としか答えませんでした。

 ところが、その一方、全都民に配られる7月発行の水道ニュースで、「八ッ場ダムは必要」との宣伝を展開しています。

http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/water/water-news/2010/pdf/news_no30.pdf
「水道ニュース」(東京都水道局 2010年7月1日発行)4ページ




クリックするとPDFファイルが開きます。

 100年後に利根川 上流の積雪量が1/3になり、水が足りなくなるというような内容です。この宣伝がどれほど嘘と歪曲とに満ちたものであるか、八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会代表の嶋津暉之さんが指摘した文書を下記に転載しますので、ぜひお読み下さい。腹立たしいのは、同じく全都民に配られる都議会だより(No.288)に、都議会で可決された請願のタイトルさえ載っていないことです。都民は、「水が足りないから八ッ場は必要」というデマだけ吹き込まれ、八ッ場ダム要否の検討に必須である「水需要予測 の見直し」が直ちに行われるべきことは知るすべがないのです。

 さらに驚いたことには、ジャーナリストのまさのあつこさんが直接、石原都知事に質問したことにより、石原知事が請願の可決を知らなかったことがわかりました。まさのさんのブログをご覧ください。

http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-8476.html

 私たちが都知事に出した要望書は、どこに行ってしまったのでしょうか? 何も知らなかった石原知事は、水需要予測見直しについて、「八 ツ場を是とするか非とするか大事な要件になると思う。それはすみやかにやった方がいいと思う」としっかり答えてしまったので、これはもう、やっていただくしかないでしょう。

 治水の有識者会議が検討基準(利水を含む)を決めた後、今秋にも八ッ場ダムの検討が始まるので、本来はそれに間に合わせるべき見直しなのです。東京都へのさらなる働きかけを続けていきます。
 

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東京都の水道ニュース(2010.7)掲載の「東京都の水源事情3」の誤り
                      八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 代表 嶋津暉之

 東京の水道ニュース「八ッ場必要」宣伝記事は非常に恣意的なものですので、その誤りを指摘します。
 当該記事の左側は地球温暖化で100年後には積雪量が激減し、融雪時期が早まって渇水が深刻化するので、八ッ場ダムが必要だという話です。このグラフの出典は、国交省水資源部の
「気候変動等によるリスクを踏まえた総合的な水資源管理のあり方について」研究会
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/07study/07study.html

 中間とりまとめ(平成20年5月22日)の[本文参考資料]の3ページと4ページのスライドです。
 ↓
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/07study/documents/torimatome/sankou.pdf

 この計算にどの程度の科学的根拠があるかどうかは別にして、一方で、私たちが指摘しているように、都市用水の減少があります。この研究会でも水需要の動向を予測しています。
 5ページのスライド見ると、利根川流域の生活用水の使用量は100年後には人口の減少と節水型機器の普及で31%(中位仮定)まで減るとしています。なぜか工業用水は現状の90%で推移し、農業用水は現状のままとなっていますが、生活用水の使用量が現状の3割まで減ってしまうというのは興味深い話です。
 この水需給の変化によって、渇水リスクがどうなるかを計算した結果が6ページのスライドに出ています。

 利根川の数字を拾うと、二〇年間の渇水発生日数(ダム貯水量ゼロの日数)が現況では30日であるのに対して、100年後は農業用水の取水を早めるパターンでは渇水発生日数は10~40日、遅らせるパターンでは0~10日です。これを見ると、渇水発生日数は逆に小さくなる可能性の方が高く、生活用水の大幅な減少によって渇水はむしろ緩和されるという試算結果が示されています。

 このように100年後に渇水が深刻化するという計算結果ではありません。水需要の減少傾向の部分を隠して都合のよいグラフだけをつまみ食いする東京都水道局の姿勢はあきれたものです。

 東京の水道ニュースの右側は八ッ場ダムがあれば、たとえば1996年では渇水日数を100日も短縮できたという話です。 これは八ッ場ダム工事事務所のホームページに掲載されているものです。

 1996年渇水の大半は自主節水程度の渇水が長く続いたのであって、それほどの渇水年ではありませんでしたが、八ッ場ダムがあればという話は現実と遊離した架空の計算によるものです。具体的には
1) 東京都水道や埼玉県水道などの水利権を開発するという目的は放棄して、八ッ場ダムを専ら渇水対策専用ダムに使うことにしており、ダムの目的を大きく変更している。
2) 実際のダムの貯水量は雨の降り方によって増減を繰り返すものであるにもかかわらず、八ッ場ダムの貯水量は取水制限前までは常にその時期の満水になっている。
3) ダムの運用計算は各ダムごとに行わなければならないが、この計算では、ダムの貯水量を一括計算している。そのために、八ッ場ダムから補給できない利根川本川上流の岩本地点や渡良瀬川の大間々地点等まで八ッ場ダムで補給するようになっている。

 詳しくは、群馬県議会八ッ場ダム特別委員会
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=91826
で私が陳述に使ったスライド(参考資料)
http://www.pref.gunma.jp/k/01/download/yanba_tokui/8toku-shimazu.pdf
の45?51ページに書いてあります。まったく現実を踏まえない計算によるものなのです。

 八ッ場ダムはさほど大きなダムではなく、渇水が起きる夏場は2500万m3の利水容量しかありません。(上記のスライド43?44ページ) しかも、八ッ場ダムは堆砂の予測が過小なので、80年程度で、夏場の利水容量は堆砂で埋まってしまうと予測されます。(上記のスライド64?67ページ、次ページ参照)

 以上のように、なり振り構わず、現実と遊離した話を振りかざして、八ッ場ダムの必要性を無理矢理示そうとする八ッ場ダム工事事務所と東京都水道局はあさましいとしか言いようがありません。