八ッ場ダム事業の今後にとって大きな問題となっているダム予定地の人々の生活補償の問題。滋賀県の芹谷ダム事業では、中止が決定しましたが、補償問題について滋賀県と地元住民との交渉が難航しています。
2010年08月26日 朝日新聞滋賀版より転載
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001008260002
ーこじれる補償金問題/建設中止の芹谷ダムー
【地元住民「使途限定せず」/嘉田知事「応じられない」】
県が昨年中止を決めた多賀町の県営芹谷ダム予定地の地元住民でつくる「芹谷地区ダム対策委員会水没部会」の門川康夫部会長らが25日、県庁を訪れ、嘉田由紀子知事に「使途制限のない補償金の給付」を求める要求書を提出した。知事は「使用目的なしでは公金を入れられない」と応じず、話し合いは終始平行線をたどった。(飯竹恒一)
県は7月、家屋改修に加え介護支援など福祉施策や道路などのインフラ整備を盛り込んだ「地域振興計画」を示し、理解を求めてきた。しかし、住民側は「中身がなく、乗れない」(門川部会長)として、使途制限のない補償金を求めた。
要求書によると、地元の水谷地区で意向調査した結果、(1)地区に住み続けることを前提に、わずかな改修助成金の交付と公共投資で足りるとする県側の提案内容は極めて不十分(2)高齢の住民にとって今後の生活の立て直しのためには、使途を限定しない金銭補償と各戸の敷地内の全棟が対象の大改修が最低限必要――との結論に達したという。
1963年の予備調査から始まったダム計画は、当初反対していた住民側が96年に合意。集団移転先も決定し、2003年には建設の基本協定書が締結された。しかし、その後に就任した嘉田知事は一転して建設中止を決定。住民側は集団移転で想定された補償の要求は取り下げたが、家屋改修の対象を各戸の敷地内の「主たる家屋一棟」に限定するなどの県方針に強く反発していた。
この日の会談で、知事は家屋改修の対象は敷地の「全体で判断する」と柔軟な姿勢を示し、住み続ける意思のない家屋は買い取る方針も示した。しかし、住民側は「現在の家屋の価値をもとに計算される」と警戒感を示した。地区の家屋は少なくとも築80年を経ているという。
知事は会談で「話し合いの舞台についていただきたい」と呼びかけたが、住民側の態度は硬く、交渉は難航しそうだ。
(写真)嘉田由紀子知事(右)と話す芹谷ダム予定地の住民代表たち=県庁