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八ツ場ダム、工事進むが議論停滞 (朝日新聞群馬版)

2010年9月5日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/areanews/gunma/TKY201009040307.html

 八ツ場ダム(長野原町)の建設中止を民主党政権が表明してから間もなく1年。凍結された本体工事を除き、周辺工事はこの夏も、着々と進んだ。半面、前原誠司国土交通相と6都県知事の対話が先送りされるなど、ダム中止を巡る議論は止まったままだ。民主党代表選の行方を地元は見守っている。
 水没地区の移転代替地を結ぶ国道145号八ツ場バイパス。8月20日、川原畑から林、横壁の各地区を通る区間が町道として暫定開通した。

 土砂崩れの恐れがあって迂回(うかい)する個所もあるが、今春、暫定開通した東吾妻町松谷の雁ケ沢(がんがさわ)ランプ~川原畑東部の約4.4キロと合わせ、約7キロが通行できるようになった。

 3本の湖面橋のうち最上流にある3号橋も通行可能になった。工事関係者は「従来の国道145号を通るより、同じ区間で10分は短縮効果がある」と胸を張る。

 「十字架」のような姿で八ツ場の象徴とも言われた2号橋も間もなく完成する。年度内の通行開始に向けて路面工事が進む。1号橋は基礎工事の真っ最中だ。

 一方で、ダムを巡る議論は滞る。

 ダムの受益6都県の知事は石原慎太郎都知事の主導で、8月24日、長野原町で会合を開くはずだった。工事の進み具合をヘリコプターで視察する予定も組まれていた。

 だが、民主党代表選で政局が流動的になった上、3知事は出席の都合がつかなくなり、前原国交相も海外出張を理由に出席を断ってきた。直前に延期となった。

 この場で話し合われる予定だった八ツ場ダム建設事業費の負担金留保問題も、棚上げになっている。

 6都県は、今年度分の事業費154億円の約6割を占める負担金88億円の支払いを留保すると、国交省へ7月下旬に告げた。先行きが不透明なまま負担金を払い続けるのは理屈に合わないと反発した。支払いの条件として、ダム建設の再検証の工程を早期に示すよう求めた。

 ただ負担金が国庫に入らなければ、水没地区の住民に支払われる補償や道路、鉄道などの建設も滞る可能性がある。

 高山欣也町長は「当面は国の未収金になるだけで、今年度事業への影響はないはず。むしろズルズルと結論が出ないと、来年度以降への影響が怖い」と話す。

 民主党代表選の結果次第では、前原国交相が交代する可能性もある。前原国交相は昨年9月に中止を表明、6都県や長野原町などの反発を受け、「予断を持たずに再検証はするが、中止の方向は変わらない」としてきた。

 首相、国交相が代われば状況が動くのか、地元や関係都県は様子見の構えだ。(菅野雄介)