八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川原湯温泉の移転問題についてのニュース

 川原湯温泉の代替地は2012年度には分譲が開始される予定です。八ッ場ダムの代替地計画は、水没予定地周辺で沢を埋め立て山を切り崩す大規模造成地をつくるもので、安全性に問題があると市民団体では疑問を投げかけていますが、温泉街の移転には温泉の引湯、営業の継続など、一般民家の移転とは別のハードルがあります。
 長年ダム計画に苦悩してきた地元の人々の声に国、群馬県はどう応えるのか。現地では暗中模索が続いています。

◆2010年9月9日 読売新聞群馬版より転載
ー川原湯代替地 配湯施設12年5月に完成ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100909-OYT8T00086.htm

 国交省、旅館関係者に説明
 八ッ場ダム(長野原町)水没予定地の川原湯温泉街の生活再建を巡り、旅館が代替地に移転した際に温泉を各戸に供給する配湯施設が、2012年5月に完成する見通しとなったことが8日、わかった。国土交通省八ッ場ダム工事事務所が旅館関係者らに説明した。移転後の営業再開スケジュールの目安が示されるのは初めて。施設完成は、温泉街再建の第一歩となるが、配湯方式が未定で、稼働後の施設維持費を国がどこまで負担するかも未決着。当面は、国と地元との協議が続くが、将来への不安から休業を決める旅館も出ていた温泉街からは、安堵(あんど)の声が上がっている。

 旅館関係者によると、同事務所が7月下旬、温泉街の移転手法を協議する川原湯地区ダム対策委員会の温泉部会で日程を説明。他の水没地区より分譲が遅れている川原湯地区の代替地について、同年3月に一部を除いて分譲可能になるとの予定も明らかにした。

 坂道の両側に旅館が並ぶ川原湯温泉街では、坂の上にある源泉から湯を引いており、現在、6軒が営業している。代替地は、現在地より標高が約30メートル高いため、移転に際し、国が貯湯タンクや配管、ポンプなどの配湯施設を整備する約束になっていたが、これまで時期などは示されていなかった。

 出席した旅館経営者は「これまで先行きが不透明だった。その日程が守られるか不安もあるが、一歩前進した」とほっとした様子で話した。

 配湯方式は、各旅館を温泉が循環し、湯を有効利用できる「循環方式」と、各旅館に個別に湯を送る「魚骨(ぎょこつ)方式」の2種類があり、数億円単位の初期投資が予想されている。稼働後の維持費の負担も現在より重くなることが確実のため、負担軽減を求める温泉部会と国が協議を続けている。

 川原湯地区の代替地は、JR吾妻線の付け替えで建設される新川原湯温泉駅(仮称)周辺の一部を除き、住宅ゾーンは来年3月までに、温泉街ゾーンは12年3月までに造成地全体の分譲が始まる見通しという。

 同事務所は「現在、地元と協議中でお話できない」としている。

◆朝日新聞群馬版2010年9月8日
ー長野原町に地元の温泉権など無償譲渡 県方針ー
http://mytown.asahi.com/areanews/gunma/TKY201009070489.html

 八ツ場ダム(長野原町)に絡む地元の生活再建支援のため、県は、川原湯温泉の温泉権や源泉湧出(ゆうしゅつ)地、露天ぶろといった地元にある県有財産を、同町に無償譲渡する方針を決めた。資産価値は5億円ほどとみられる。21日開会の県議会の9月定例会に譲渡承認を求める議案を出す。

 1988年から89年にかけ県が川原湯再建のために掘削した源泉「新湯」の権利のほか、別の源泉「元の湯」が含まれる周辺県有地約550平方メートル、共同浴場「王湯」に付帯する露天ぶろなど。温泉の権利が約4億5千万円ほどの資産になるという。

 町が8月、無償譲渡を県に申請したため、検討してきた。譲渡されれば、町と地元で迅速に生活再建のための利活用をはかれる。代替地移転が進んでも源泉などの権利は変わらず町側に残る。

 県特定ダム対策課は「もともと地元の生活再建のために所有していた財産で、移転前が譲渡の良いタイミングだと判断した」と説明した。

◆2010年9月2日 東京新聞群馬版
ー耐震性に問題なし 八ッ場ダム移転代替地 国交省が県に回答ー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100902/CK2010090202000085.html

 国土交通省八ッ場(やんば)ダム工事事務所(長野原町)は一日、同ダムの建設予定地住民の移転代替地の耐震性などを測定する「安定計算」の結果を県に報告したことを明らかにした。安定計算は代替地の四カ所で実施され、いずれについても「地震や土砂災害などが起きても安全性に重大な問題はない」と判定された。

 代替地については、ダム事業に疑問を示す市民団体が、独自の調査を基に「耐震性などの検証が不十分。中規模の地震でも安全性を保障できない」と主張。同事務所は「問題は確認されていない」と反論してきた。

 安定計算のデータ提供を受けた県建築住宅課は「厳密に評価し、最終判断したい」としている。 (中根政人)