八ッ場ダム建設根拠の想定流量など見直しへ 国交相指示」

◆2010年10月15日 朝日新聞社会面より転載http://www.asahi.com/national/update/1015/TKY201010150183.html
 

「八ッ場ダム建設根拠の想定流量など見直しへ 国交相指示」

国が必要性の検証を始めた八ツ場(やんば)ダム(群馬県)を巡って、馬淵澄夫国土交通相は15日の会見で、利根川水系で200年に1度の洪水が起きた時に想定される最大流量(基本高水)の算出方法を見直すよう指示したことを明らかにした。基本高水はダム建設の最大の根拠で、算出方法の見直しは、各地のダム建設に影響を与える可能性もある。
 馬淵国交相は「今後、八ツ場の検証を進める中で、最新のデータ、技術的知見を用いて徹底的に点検を行い、計算モデルの妥当性を含め見直しを行うべきだ」と語った。

 国交省は政権交代前まで、1980年に算出した基本高水を根拠に、八ツ場ダムの建設が必要としてきた。利根川水系では、中流の群馬県伊勢崎市の八斗島(やったじま)で毎秒2万2千トンの基本高水が想定され、このうち八ツ場ダムを含め上流域のダム群で5500トンを抑え、残る1万6500トンは堤防などの整備で対応することになっている。

 この30年で上流域の森林の整備は進んだが、基本高水は変更されなかった。現行の基本高水では、八ツ場ダムが完成してもさらに数基のダムが必要とされ、専門家からは「森林の保水力が向上した状況を考慮すべきだ」「想定する流量自体がそもそも過大」との指摘が出ていた。基本高水は川によって異なり、川の規模によって想定する洪水も異なる。(歌野清一郎)
 

◆2010年10月16日 朝日新聞群馬版より転載

http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581010160001

【八ツ場よ!】
「利根川の最大流量、算出方法見直しへ」

 八ツ場ダム建設の最大の根拠となってきた利根川水系の最大流量(基本高水(たか・みず))の算出方法が見直される。馬淵澄夫国土交通相が15日、明らかにした。基本高水は、同水系で200年に1度の洪水が起きた場合に、中流部の伊勢崎市八斗島(やっ・た・じま)で想定される流量。この流量を抑える上でダムが不可欠とされてきた。1日に始まった八ツ場ダムの必要性の検証では、50年に1度程度の洪水への備えが焦点となる見通しで、この算出根拠にも影響する可能性がある。(菅野雄介)

 馬淵国交相は15日の記者会見で「今後、八ツ場ダムの検証を進める中で、最新のデータ、技術的知見を用いて徹底的に点検し、計算モデルの妥当性を含め見直しを行うべきだ」と述べた。

 さらに、基本高水の算出根拠の一つで、土壌の保水力を示す指標となる「飽和雨量」について、1959年以降の数値を公表。現在国交省が使っている48ミリを大きく上回り、59年に65ミリだった数値が98年には125ミリとなるなど、保水力が向上している状況を示した。馬淵氏はこうした状況を反映させた見直しを国交省河川局に指示したと説明した。

 ただ、飽和雨量以外の係数でも基本高水は左右されるため、馬淵氏は「(算出方法の見直しが)即、基本高水の見直しにつながるものではないと承知しているが、結果的に変わる場面も出てくるだろう」と話した。

 利根川水系の治水対策は、47年9月に関東地方を襲い、群馬や栃木を中心に6都県で1100人が犠牲になったカスリーン台風を契機に強化された。同台風並みの3日間で平均318ミリという「200年に1度の雨量」でも流域を守ることが目標になった。

 同台風後の49年には基本高水を1万7千トンとした。上流域のダム群で3千トンを調整し、八斗島での利根川の流量を1万4千トンに抑える計画が定められ、ダム群の一つに八ツ場ダム計画が浮上した。

 50~70年代に奥利根などに6ダムが完成し、1千トンを抑えられる形になった。だが、80年には「近年の上流域の改修状況等を考慮」したとして基本高水を毎秒2万2千トンに上方修正し、治水目標はさらに高くなった。八ツ場を含むダム群で5500トンを抑え、八斗島を流れる流量1万6500トンは堤防などの整備で対応する計画になった。

 八ツ場を加えた7ダムでは5500トンのうち1600トンしか抑えられず、さらに十数基のダムが必要とされた。一方、専門家からは「森林の保水力が向上した状況を考慮すべきだ」「想定する流量自体がそもそも過大」との指摘が出ていた。

 

◆2010年10月16日 東京新聞 社会面より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010101602000046.html

「最大流量見直し指示 八ッ場ダム」
馬淵澄夫国土交通相は十五日の会見で、八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設根拠としてきた利根川の最大流量(基本高水(たかみず))の算出方法を見直すよう、国交省河川局に指示したことを明らかにした。

 馬淵氏は、利根川で二百年に一度起きると想定される洪水時に流れる水の量を予測した基本高水が「変わる場面も出てくる」とも述べた。ダム建設根拠の見直しは、同省や関係自治体が始めた国直轄や国の補助で造られる各道府県のダム事業の再検証に影響を与える可能性がある。

 見直しの理由について「森林がある程度肥沃(ひよく)な状態になり、(保水力を示す)飽和雨量が高まったが、検証が行われていない」と、八ッ場ダム建設の前提条件となる上流部の変化を把握しながら、約三十年間、同省が検証を怠ってきたと説明。

 一方、馬淵氏は会見で具体的な見直し方法には触れず、基本高水算出の基礎データとなる「流域分割図」なども非公開とした。
 これまでに独自に基本高水を試算し、国の値は過大とする関良基拓殖大准教授(森林政策)は「国交省は森林土壌の保水力上昇を無視してきたのだから、基本高水の再計算には外部の専門家を加える必要がある」と指摘。

 国を相手に、基本高水関連データの公開を求める訴訟を起こしている高橋利明弁護士も「まずデータを全面公開し、再計算も在野で検証できるよう、経過も含めて公開で行うべきだ」としている。