八ッ場ダム推進を叫び続ける知事ら

 昨年来、八ッ場ダムの推進を声高に主張し続ける関係都県知事の言動がしばしばマスコミで取り上げられています。知事らの主張はこれまで国交省が八ッ場ダムを推進する理由として掲げていたものをそのまま繰り返しており、市民団体では事実認識に大きな誤りがあることを指摘してきました。

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 こうした流域住民の指摘に知事らは一切答えず、八ッ場ダム推進の姿勢をとり続けています。さる7月27日には、1都5県が「同ダムの検証結果を早期に出すことが明らかになるまで、本年度の直轄事業負担金と利水者負担金の支払いを留保する」(上毛新聞7月28日)旨、前原大臣に申し入れをし、民主党政権に揺さぶりをかけています。

 八ッ場ダムの検証作業が始まった2010年10月現在、その言動はさらにエスカレートしています。ダムを推進する側にとっては、東京都議会をのぞく各都県知事、議会がすべて八ッ場ダムを推進する自民党勢力に押さえられていることが大きな力になっています。中央では昨年ようやく政権交代がありましたが、地方、特に関東圏では旧来勢力が政治権力を維持しています。 

◆ 2010年10月18日 共同通信47newsより転載
http://www.47news.jp/CN/201010/CN2010101801000560.html

―八ツ場ダム、15年度完成要求へ 関東知事会
 国が建設中止を表明している八ツ場ダム(群馬県)について、関東地方知事会は18日までに、当初の予定通り2015年度に完成させるよう要求していく方針を固めた。20日に開く会議で要望書を取りまとめた上で、流域6都県を含めた知事会として政府に提出する。
 八ツ場ダムをめぐっては、国土交通省関東地方整備局が1日から建設の是非について検証を始めたが、結論の時期などは示されていない。関係自治体トップがそろっての意思表明は検証作業の行方に影響を与えそうだ。
 要望書原案によると、国に対して「明確なスケジュールを示し、速やかに検証を進め、計画通り15年度の完成に取り組む」よう強く要望。また、ダムを前提とした生活再建を希望する地元住民に応えるべきだと指摘し「国の責任において、生活再建事業をこれまでの計画に従って着実に実施すること」も求めた。
 ほかに、前原誠司前国交相が昨年、6都県や地元の意見を聞かずに建設中止方針を示したことにあらためて触れ「極めて遺憾。一方的にダム本体工事を中止したことは、これまでの国と地方の信頼関係を覆すことにもなりかねない」との批判も盛り込んでいる。

—転載終わり
 昨年の政権交代後も八ッ場ダムの関連事業は継続し、予算も減額されていません。民主党政権に変わったことで八ッ場ダム事業が遅れ、川原湯温泉が寂れてきているように言われていますが、これは誤りです。八ッ場ダム事業の遅れと地元住民の犠牲は、計画そのものに無理があることが主な原因です。本来、ダムを必要とするとしている関係都県は、構想から58年経っても完成の見通しの立たないダム計画にとっくに疑問を呈していてもよい筈ですが、政権交代で八ッ場ダム中止の可能性が出てきて初めて大きな声を挙げ始めました。

 八ッ場ダムの工期は2008年に2010年度から2015年度に延長されました。その時点で、国交省は関係都県からこれ以上の工期延長はしないことを約束させられました。けれども、関連事業の現状をよく見れば、工事が難航していることも、工期が再延長になる可能性が極めて高いことも把握できたはずです。国交省の説明を鵜呑みにし、民主党政権に責任転嫁をする関係都県は、誰のために行政を担っているのでしょうか。

◆朝日新聞群馬版 2010年10月20日付けより転載
―流域1都5県の知事が25日視察 国交相は出席を調整中―
八ツ場ダム(群馬県)の下流域6都県(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県)は19日、各都県の知事が25日にダム建設予定地を視察し、地元の関係者らと意見交換すると発表した。視察は当初、8月の予定だったが、前原誠司前国土交通相が出席できないことなどから延期されていた。馬淵澄夫国交相の出席は調整中という。
民主党が建設中止方針を表明後、6都県知事による現地視察は昨年10月以来2回目。
 6都県は7月、国が早期に検証結果を出すことを確約するまで、建設に関する今年度の負担金支払いを留保することを国交省に伝えている。石原慎太郎都知事は15日の定例記者会見で、「現場を見ない責任者と話しても仕方ない。大臣が現場を見なければ、話はしない」と述べている。

—転載終わり
 現地視察は当初、8月24日に予定されていましたが、参加する知事が限られており、前原大臣も不参加となって延期された経緯があります。現地ではこれに先立って、付替え国道の暫定開通区間が7.7キロに延長されましたが、9月8日未明に開通区間で落石事故があったために、3.3キロ区間が今に至るまで通行止めになっています。付替え国道については、法面崩落、落石事故などが相次ぎ、改めて工事の難航ぶりが浮き彫りになっていますが、国土交通省は工事が順調に進んでいることをアピールしたいようです。八ッ場ダムを推進する知事らは、国交省職員らの説明で税金のブラックホールとなっている現地の状況を知ることができるのでしょうか。
 八ッ場ダム事業の現状を把握しようとせず、何の根拠もなく自らが正しいと主張し続ける関係都県知事らは、八ッ場ダム問題を政争の具にしていると批判されても仕方ないでしょう。
 

◆ 2010年10月21日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20101021/CK2010102102000068.html

―関東知事会議・八ッ場ダム問題 『中止方針は荒唐無稽』
2010年10月21日
 「ダム中止撤回に向けた強い意思を、流域六都県があらためて確認しなければならない」。二十日に東京都内で開かれた関東地方知事会の定例会議で、八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の建設再開を求める要望案を提案した大沢正明知事や東京都の石原慎太郎知事ら。前原誠司前国土交通相による「中止宣言」から一年以上が経過したにもかかわらず、問題が停滞したままの状況にいら立ちをあらわにし、国のダム中止方針を「荒唐無稽(むけい)」「実現不可能」などと切り捨てた。 (中根政人)
 ダム予定地を抱える大沢知事は、水没対象地区内の川原湯温泉の“窮状”を紹介。「ダム完成の見通しが立たない中で、各旅館は古くなった建物の改築や補修に踏み切れないまま時が過ぎた。今年に入り、老舗旅館が休業するなど、現地の生活は非常に厳しい局面に陥っている」と生活再建問題の緊急性を強調した。
 一方、石原知事は「八ッ場ダムの中止は、政治主導を名目に現場の官僚の取り組みを全く無視した政策であり、危険で乱暴で荒唐無稽だ」と厳しい口調で政権与党の民主党を批判。「一度でも(ダム建設の)現場を見たら、(国の中止方針の)おかしさがよく分かる」などと、流域六都県の主張の正当性を訴えた。
 埼玉県の上田清司知事も「民主党は(政権交代前の段階で)十分に検証しないまま八ッ場ダム中止をマニフェストに盛り込んだ」と主張。ダム問題の現状に「国は代替案を出すことができず、今ごろ再検証などと言っている。ダム中止方針は、憲政史上に残るひどい決定と言わざるを得ない」と語気を強めた。