関係都県知事の現地視察

 10月25日、八ッ場ダムの関係都県知事(森田千葉県知事を除く)が現地視察に訪れ、共同声明を発表しました。関係都県知事らは、昨年10月19日にも現地視察に訪れ、共同声明を発表しています。
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http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=85431

 この時の共同声明には事実認識の誤認が多数含まれていたため、市民団体では問題点を指摘しました。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=25

 今回の共同声明も群馬県のホームページに公表されています。↓
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=99365

 知事らの主張はこの一年間、殆ど変わっていません。現地を視察したと言っても、上空からヘリコプターで見下ろし、湖面2号橋(不動大橋)の上に僅かな時間だけ立って、国交省現地事務所職員の説明を聞いただけです。八ッ場ダムの関連事業が多くの問題を抱え、現地の至る所で工事が難航し、安全性が脅かされていることを国交省の現地職員が説明したでしょうか? 説明によって印象は180度変わることがありますが、真実を知ろうという意識がもともと知事らになければ、現地視察は単なるパフォーマンスでしかありません。

 昨年の政権交代後、八ッ場ダムを推進する知事らと地元住民が一枚岩であることがしきりにアピールされましたが、本当に地元の生活再建を考えているわけではない知事らと地元の人々が一枚岩である筈もありません。以下の記事は、国直轄でありながら関係都県が巨額な事業費のスポンサーである八ッ場ダム計画の複雑さを伝えています。記事中の写真は、知事らが湖面2号橋の上に勢ぞろいした光景です。その背後では、依然として付替え県道の工事が続いていますが、どの新聞の写真も、工事風景が背景に写っていません。読者に現状が伝わらないよう、写真撮影すら角度を指定されたのだとすれば、笑うに笑えないカモフラージュです。

◆2010年10月26日 朝日新聞群馬版より転載
ー下流域の知事ら視察 意見交換「すれ違い」ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581010260001

 八ツ場ダムの事業費を負担する利根川下流1都5県の知事(千葉県は代理)が25日、そろって長野原町の建設予定地を約1年ぶりに訪れた。地元との意見交換会で、負担金の支払い留保を「人質」にして国土交通相に建設を迫る知事側と、負担金が支払わなければ生活再建が進まないとする地元側との意見はかみ合わないままだった。

 意見交換会は町山村開発センターで開かれた。馬淵澄夫国交相は参院予算委員会の集中審議のため欠席した。

 冒頭、大沢正明・群馬県知事が「ダムの必要性を検証する作業が進まず、工程もはっきりしない。地元は先の見えない不安の中で過ごしている」とあいさつ。

 上田清司・埼玉県知事は「(検証の)見通しも工程も明らかにされないので、負担金の支払いを留保している」と、知事側の「戦術」に理解を求め、首都圏の治水対策で「八ツ場ダムに代わる方法はない」と述べた。

 上田知事の発言を受け、川原湯地区ダム対策委員長の樋田洋二さん(63)は「代替地がなかなかできないのは、負担金の留保が国交相側に逆手にとられ、予算が執行されないことになっているからではないか」と述べ、生活再建のメドが立たない地元の窮状を訴えた。
 これに対して、上田知事は「生活再建のために負担金を支払うのはやぶさかではないが、国交相が検証の道筋を示すのが先ではないか」と述べた。民主党政権を「中止を宣言してからその理由を探している」として、「理不尽」だと何度もこき下ろした。

 意見交換会終了後、知事側の「留保戦術」について、樋田さんは「納得していないが、きょうは時間がない」とだけ話して立ち去った。長野原町の高山欣也町長も「意見はすれ違いだった。国交相はせめて検証をいつごろまでに終わらせると、方針ぐらい明らかにすべきだ」と話した。留保戦術に理解を示しつつ、代替地造成の遅れに打つ手のない地元の苦悩が表れていた。

 知事らは意見交換会に先立ちヘリコプターと車で、ほぼ完成した湖面2号橋(不動大橋)や暫定的に部分開通した国道145号のバイパスなどを視察した。
 初めて上空から現場を見たという高山町長は「(ダム本体を除き)事業が進んでいることを実感した。ここでやめたら国が困るだろう」と話した。

 ◇生活再建、認識の差あらわ◇

 八ツ場ダムの受益者となる下流都県知事と地元の住民代表らの意見交換会は、ダム推進の「一枚岩」が演出された一方、生活再建に関しては認識の違いもあらわにした。「利水と治水に不可欠」としてダムを求める下流都県と、水没の見返りに地域づくりを急ぎたいダムの地元。立場の違いが、すれ違いの背景にある。

 地元の生活再建事業は、
(1)ダム建設事業費による国道や鉄道の付け替え、代替地造成、用地買収などの補償事業
(2)水源地域対策特別措置法にもとづく上下水道や治山、土地改良などの「水特事業」
(3)下流都県による利根川・荒川水源地域対策基金の出資での地域振興関連の「基金事業」―― の3本立てだ。

 6都県の「出資」は、ダム建設事業費4600億円の6割の2844億円、水特事業には総額の5割近い491億円、基金事業は全額の178億~246億円。生活再建事業の「スポンサー」としては、国土交通省よりも6都県の存在感が大きい。
 その6都県が、ダムの必要性の検証の工程を国が示すことを条件に、今年度のダム建設事業費の負担金支払いの留保を7月末に打ち出した。

 8月末時点で国県道の付け替え工事などの補償工事費が5割以上使われた一方、用地補償費が1割しか使われず、補償や代替地造成の遅れが目立つ川原湯地区の住民を中心に不満が高まっている。
 「代替地がなかなかできないのは負担金留保を国交相側に逆手にとられ、予算が執行されないからではないか」。25日の意見交換会で、同地区のダム対策委員長が6都県の負担金留保戦術に対する地元の見方に言及したのも、そうした事情が背景にある。
 焦りをつのらせる地元と対照的に、報道陣に問われた埼玉県の上田清司知事は「問題が生じるようなことがあれば、当然国交省から話があり、その時点で考えれば済むこと」と話した。

 ◇知事発言(要旨)◇

大沢正明・群馬県知事

 前原誠司・前国交相が建設中止を表明してから1年が経過した。地元住民は先行きが見えず非常に不安を感じている中で、2度目の正月を迎えてしまう。特に川原湯温泉は、老舗(しにせ)旅館が休業に追い込まれるなど、厳しい状況だ。ぜひとも早い段階で工程を示して欲しい。今後も1都5県の知事で連携してダム本体の工事、生活再建を進めていきたい。

石原慎太郎・東京都知事 

 1年前からさらに工事が進んでいるのを見て、政治の間違った思いつきは恐ろしいと、国民の人生を狂わせてしまうとあらためて思った。民主党がこのようなことを続けていけば日本は混乱する。すべて検証をしないで物事を決めるのは独裁で、非常識な行動だと思う。

上田清司・埼玉県知事 

 民主党は地元住民と話をせず、1都5県の知事と話し合いもせず、いきなり中止をマニフェストに載せたのは理不尽。なんとか正月前に道筋が見えるようにしなければという思いだ。

 われわれの八ツ場ダム事業への負担はダムができることが前提なので、それが明らかにならないのに負担はできないというのが本音。せめて道のりぐらい示してほしい。その部分で心配かけていたら申し訳ない。(基本高水の再計算によるダム建設への影響については)全く懸念はない。保水力が高まればそれはそれでありがたい。よりリスクが減るという答えが出るだけだ。

橋本昌・茨城県知事

 国はなかなか検証が進んでいない。他の事業をこれだけ進めておきながら本体工事について決めていないのは矛盾しているのでは。このままだと来年も何もないままに進んでしまう。現地の方々は長いこと中ぶらりんにされてしまう。国は早く方針を出してほしい。

福田富一・栃木県知事 

 八ツ場ダムは栃木県の南部地域の治水安全上、重要な施設だ。ダムを検証するといいながら、本体工事の中止を撤回しないのは明らかに矛盾した状態。国はこれまで前原・前国交相の発言通り、地域住民の思いと真摯(しん・し)に向き合うのが当然だ。検証期間中でも、生活再建対策や地域振興対策に万全を期していくべきだ。