八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

刊行本二冊の紹介

2010年11月26日
 ダム問題に関する著作の刊行が相次いでいます。
 11月に刊行されたオススメ本をご紹介します。いずれもアマゾンなどのサイトからも注文できます。

◆「国を破りて山河あり」(藤田恵著、小学館)

 著者は徳島県の元村長。国と県がスクラムを組んで推進しようとした巨大ダム事業に対して、粘り強い闘い、多方面からの支援、強運に恵まれてついに山河を守り通し、ダムのない地域づくりに奔走してきた快男児です。
 わが国の河川行政がダム予定地の山村にとっていかに過酷で非人道的であるかを生の言葉で綴った語りおろしで、大変読み易いのも魅力です。第二次大戦後65年にして、”国敗れて山河なし”の惨状を呈するに至ったわが国への問題提起として、本書のタイトルには考えさせられることが多いように思います。

○出版社のホームページより転載
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093881562
 
 定価 1,470円(税込)
 発売日 2010/11/01

【目次】
 
 第1章 木頭村とダム反対三十年史
   突然の村長就任……11
   手探りでのスタート……14
   ダム反対に同情的だった知事の変節……18
   兵糧攻め……20
   下流の自治体はみんな推進派……25
   楽しかった川遊び……29
   高度成長前は阿波のチベット……31
   木頭村が金持ちの代名詞に……33
   村長も議会もダム受け入れ派……39
   反対運動の中心は木樵たち……42
  
 第2章 ダム計画撤回と村づくり
  住民無視の県議会や工事事務所……52
  自民党総裁に公開の場で陳情……55
  募るダムへの不安と不信……58
  反対派の結束を固める……65
  物別れに終わった知事との意見交換会……68
  なめきった態度の役人たち……73
  続く兵糧攻めと懐柔派……77
  全国初となるふたつの条例を制定……81
  全国のダム反対運動との連携……84
  国会議員にまじって米国ダム事情を視察……88
  メディアを見方に……91
  ゼロから始めた国会議員への陳情活動……95
  永田町では隠密行動……98
  いろいろな政治家たち……101
  ダム審議会ボイコット作戦……106
  質問趣意書でわかった四〇億円の無駄遣い……110
  亀井大臣の「細川内ダム計画見直し」答弁……113
  建設省の敗北宣言「一時休止」……116
  住民が八割以上の株を持つ「きとうむら」……120
  ダムに頼らない村づくり計画……122
  助役の死に大きなショックを受ける……126
  深刻な経営危機、そして村長不信任案……130
  苦し紛れの支援金集めが大反響……133
  権力の横暴「ユズ皮裁判」……139
  
 第3章 ダム闘争の過去と今を思う
  三歳で親元を離れる……147
  つらかった農作業……149
  兄・幾治のこと……153
  木頭村を離れて寮生活……155
  司法試験を目指した社会人時代……158
  行政圧迫をどう耐え抜くか……164
  村の分裂をあおったのはだれ……168
  八ツ場ダムについて思うこと……171
  ダムを造るより、壊すことを考えよう……175
  法律を変えるしかない……178
  ダムなきまちづくり構想……182
  
 藤田恵と木頭村・細川内ダム関連年表……186

◆「社会的共通資本としての川」(宇沢弘文・大熊孝編、東京大学出版会)
 
 ダム事業が国民の厳しい批判にさらされている現在、これからの河川行政のあり方を考える上で必須の知見が網羅されている本書の刊行は大変意義のあることです。手元に置いて、繰り返し読むにふさわしい良書です。

○出版社のホームページから転載
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-030251-7.html

 【内容紹介】
 川は誰のものか.先人による巧みな治水と利水の知恵から,現代における「脱ダム」思想の意義を論じ,コモンズによる川の共有を説く.川とそれを取り巻く住民に正面から向き合ってきた執筆陣による,人と川との新しい付き合い方の創造.

【主要目次】
 序 章 社会的共通資本としての川を考える(宇沢弘文)

 第I部 持続可能な治水と利水の実践
 第1章 20世紀の河川思想を振り返る(蔵治光一郎)
 第2章 水利文明伝播のドラマ――スリランカから日本へ(茂木愛一郎)
 第3章 都江堰と2300年の水利――四川省大地震からの復興(石川幹子)
 第4章 技術にも自治がある――治水技術の伝統と近代(大熊 孝)

 第II部 リベラリズムとしての脱ダム思想
 第5章 コモンズにはじまる信州ルネッサンス革命――「脱ダム」宣言のアスピレーション(宇沢弘文)
 第6章 脱ダムから緑のダムへ――エコロジカル・ニューディール政策としての森林整備(関 良基)
 第7章 吉野川第十堰と緑のダム――「流域主義」の視点から(中根周歩)
 第8章 宝としての球磨川・川辺川にダムはいらない(高橋ユリカ)
 第9章 なぜダム建設は止まらないのか(岡田幹治)
 第10章 八ッ場ダム中止への道のり(嶋津暉之)

 第III部 コモンズによる川の共有
 第11章 自然としての川の社会性と歴史性(高橋 裕)
 第12章 川・魚・文化――天塩川水系・サンル川から考える(小野有五)
 第13章 淀川における河川行政の転換と独善(宮本博司)
 第14章 地方分権――川を住民が取り戻す時代(神野直彦)

【担当編集者から】
 編者がこの十数年間取り組んできた,「社会的共通資本」の考えを提唱する新しいシリーズの第2作です.本書では川の問題を取り上げます.
 八ッ場ダムの問題が世間を騒がせていますが,そもそも計画発表から50年以上も問題となり続けているという事実に驚かれた方も多いのではないでしょうか.日本の河川行政は,一体どのようなことになっているのでしょうか.また,ダムの役割は治水・利水・発電といわれますが,ではどれほどその効果が証明されているのでしょうか.川は本来,どのような姿であるべきなのか.本書の提言が,広く世に共有されることを期待します。