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馬淵大臣と関係都県知事の会談、負担金留保の解除

 馬淵大臣と関係都県知事との秘密会談が12月2日夜、東京都内で行われ、関係都県知事が八ッ場ダムの負担金留保を解除することが明らかになりました。

◆国土交通省ホームページ・報道発表資料より転載

◇八ッ場ダムについての1都5県知事からの申し入れに関する国土交通大臣コメント
http://www.mlit.go.jp/common/000130446.pdf

平成22年12月2日

1. 昨夜、都内にて非公開で行った私と1都5県知事との会合を受け、本日、東京都の事務方が、1都5県知事からの「八ッ場ダム本体の早期完成を求める申し入れ」(※文末に転載)を国土交通省に持参されました。

2. これにより、これまで留保されていた今年度の八ッ場ダム建設事業に係る直轄事業負担金及び利水者負担金の支払いについて、1都5県のご理解をいただいたものと考えております。

3. この申し入れを受け、これまで行っていなかった負担金の支払いに関する事務手続を速やかに進めるとともに、生活再建事業について、地元の方々のご要望に可能な限りお応えすべく速やかな対応を行うように、河川局を通じて、関東地方整備局に指示することといたします。

4. また、11月6日の現地訪問の際に表明させていただいたとおり、一切の予断を持たずに検証を進めるとともに、来年秋を目標としつつも、一刻も早くその結論を得られるように努力してまいります。

※関係都県八ッ場ダム早期完成を求める申し入れ
http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000281.html

1 国土交通大臣は、先月6日、八ッ場ダムの建設現場を視察した際に、今後は中止の方向性には言及せず、一切の予断を持たずに検証を行い、来年の秋までに結論を得ると明言した。
 検証においては、「来年秋」よりも最大限早い時期に、一都五県の意見を十分尊重し、我々が納得できる結論を出すことを求める。

2 我々の目的は、都民・県民を洪水から守り、安定した利水の確保に必要なダム本体を計画通り完成させることである。検証後、直ちにダム本体工事に着手することを求める。

3 我々は、水没関係住民のおかれている厳しい状況に鑑み、今年度の生活再建事業にかかる負担金については、当該事業の所要額を支払うこととする。
 しかし、生活再建事業がダム本体の完成を前提とするものである以上、この支払いもまた、あくまでダム本体の建設を前提とするものである。

4 したがって、絶対にあってはならないことであるが、万が一ダム建設が中止に至った場合には、一都五県は、訴訟を含め国の責任を徹底的に追求する決意である。

5 ここに、一都五県は、改めて八ッ場ダムの予定通りの完成を強く要求する。

 平成22年12月1日
 国土交通大臣 馬淵 澄夫 殿

       東京都知事  石原慎太郎
       埼玉県知事  上田 清司
       千葉県知事  森田 健作
       茨城県知事  橋本  昌
       栃木県知事  福田 富一
       群馬県知事  大沢 正明

◆群馬県ホームページより転載

八ッ場ダム生活再建事業に係る負担金の支払についての臨時記者会見要旨(12月2日)
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=100473

■日時 平成22年12月2日(木)午後12時13分~12時26分
■会場 県議会庁舎記者会見室
■出席者 県 :知事、茂原副知事、県土整備部長、特定ダム対策課長
記者:記者クラブ所属記者等 24人
■記録作成 広報課(報道係)

■会見要旨
◎知事発言
 先ほど、(11月定例県議会の)一般質問にお答えしたとおりですが、昨日のお昼ごろ、急遽(きゅうきょ)、1都5県知事と馬淵国土交通大臣との会談が正式に決まり、昨夜、都内で会談をする運びになりました。1都4県知事の皆さんにおかれましては、この問題に真摯(しんし)に対応していただいて、地元の知事として本当にありがたく、感謝を申し上げたいと思っています。

◎質疑応答
○八ッ場ダム生活再建事業に係る負担金の支払について
(記者)  2点お伺いします。まず、負担金を支払われることになったことに対するご所感をあらためてお伺いしたいのと、あと、ダム本体工事の着工なしでの支払について、一部、慎重な姿勢を示されていた知事さんもいらっしゃったと思うのですけれども、当日、どのような話し合いがなされて、どのような理由、経緯で納得されたか、その辺をお伺いできればと思います。

(知事)  地元の方々の今の不安な気持ちを考えると、生活再建事業がこれで進むわけですから、地元の方々も安堵(あんど)されているのではないかと思います。私自身も非常に、1都4県の知事に感謝申し上げたいと思っています。また、馬淵大臣にも、この会談を早くに設定していただいたことに、感謝申し上げたいと思っています。
 (会談では)いろいろな意見が出ました。負担金を出すということは、生活再建事業の負担金ですから、あくまでも基本的にダムを造るがゆえの生活再建事業のお金です。ダムを造るために出すということは、当然のことであろうと思っています。そのことは、1都5県の知事として、「あくまでも、この負担金はダム建設を前提にした負担金であるということを十分承知していただきたい」旨、馬淵大臣にしっかりと申し入れたところです。

(記者)  負担金支払について合意した最大のポイントというのは、馬淵大臣のほうから、再検証結果を出す時期について、「でき得る限り前倒しをしたい」という発言をなされたというところが、各都県の知事さんが納得した一番のポイントになるのでしょうか。

(知事)  それとともに、「予断なく再検証する」という(大臣の発言です)。いろいろと新聞報道があったわけですが、大臣の姿勢として、1都5県の知事に対し、また、地元に向けての発信の意味でも、「予断なく検証する」とはっきり言っていただいたことと、でき得る限り早く、(来年)秋というのではなく、一日も早く検証結果を出すという、2点だと思います。

(記者)  確認なのですが、それは大臣のそういった話を受けた上で、会談の中で合意したということでよろしいのですか。それとも、合意した上で伝えたのですか。

(知事)  大臣からそのお話を伺って、それで、負担金を支払うと。大臣からしっかりと、「一日も早く検証いたします。結果を出します」という表明もいただきましたので。

(記者)  政府と与党との発言がぶれていたり、大臣に対しての問責決議案が可決されたりと流動的な部分も要素としてあったりしますが、その辺とダム建設についてとのところを、知事はどうお考えになっているのかを教えていただけますでしょうか。

(知事)  いろいろと考えるところもあるわけですが、与党のぶれた発言、はっきり言うと仙谷(官房長官)さんと岡田(幹事長)さんが言われたわけですけれども、それも十分に意識した上で、あらためて大臣がしっかりと表明していただきましたので、われわれ1都5県は納得したところです。

(記者)  今年度に限って、となっているのですが。

(知事)  今年度出せば、来年は検証結果が出て「ダム建設続行」という回答が出るのではないかと期待はしています。

(記者)  そういうことですね。

(知事)  来年は検証がすべて終わって、来年の予算編成までには結論を出すわけですから、今回が最後の負担金の交渉になるわけです。

(記者)  昨日の会談では馬淵大臣から今後の検証作業の結果について、結果を尊重するとか、検証の結果、建設するとの結論が出ればそれに従うとかとの発言はございましたでしょうか。

(知事)  あくまでも予断なく検証する、ということであります。

(記者)  大臣の発言で可能な限り早くというのは、知事側としては一定の大臣・国側の譲歩を示したととらえているのかということと、もう一点、訴訟の話があったかと思うのですが、今回負担金を支払う上での条件として申し入れをするのかという部分の認識なのですが。

(知事)  負担金を払う条件というよりも、もともと生活再建の事業費というのは、ダム本体ができるがゆえに生活再建をするための負担金を払っているのです。ダム本体ができないのなら生活再建の負担金を払う必要がないわけですから、あらためて、しっかりと1都5県が負担金を国交省に払っている意味をお互いに確認し合ったということです。これはあくまでもダム本体ができるがために、関連事業として負担金をお支払いしているのですよ、ということを双方で再認識をしあった。それがゆえに、万が一、建設に至らない場合には、1都5県が連携して国に対して訴訟を含めた対応をしっかりと取っていきたいと。

(記者)  文書に文言として入っている…。

(知事)  それは、今日2時にその文書を、1都5県と国交省が同時に発表すると思います。

(記者)  大臣の発言に関して、中止の棚上げ、来年の秋という発言から最大限早くとの発言は、知事側としては国が譲歩したと考えていますか。

(知事)  譲歩というよりも、われわれは地元の方々は一年放っておかれたとの意識です。去年9月に突然中止表明されて以来、何ら検証していなかったわけです、1年。本当を言えば今年、検証結果を出すべきだと思っています。それが、とりあえずは来年の予算編成時までに出すとのことを言っていただきました。しかし、できればもっと早く検証結果を出すべきだということを1都5県から申し入れして、大臣としても誠心誠意それに応えるべき対応をするということを言っていただいたので、1都5県としては前向きにとらえています。

(記者)  地元のほうには、この結果というのは、もうお伝えしてあるのでしょうか。

(知事)  先ほど言いましたように、2時に(1都5県)一斉に発表する予定になっていますので、できるだけ早く地元に伝えたいと思います。今日、テレビを見ていて、もう理解されているかと思いますが。

(記者)  訴訟というのは、具体的にはどういった訴訟を想定していらっしゃるのですか。

(知事)  (ダム)本体ができるがゆえに、1都5県は負担金を払っているのですから、首都圏の治水、利水のためにお支払いしているのですから、(ダム本体が)できないということになれば、負担金を全額払い戻していただくと。

(記者)  負担金を返還してもらうという請求に…。

(知事)  そうなると思います。まだ、細かい内容までは詰めていませんが、話の中では当然、ダムができるがゆえに、例えば、東京都であれば都民の利水、治水のために(負担金を)出しているのであって、それができないのであれば、出す意味が何らないわけですから、(負担金を)返してくださいというのは当然だと思います。

(記者)  その訴訟の話を大臣にされたときに、大臣のほうからは、何か発言などはありましたか。

(知事)  いえ、話を聞いていただきました。

(記者)  会談は、何時ころ、どのようなかたちで行われたのですか。

(知事)  (午後)7時半から9時半過ぎまで、レストランで夕食をとりながら、和やかに会談をさせていただきました。

   ・文章中の()内については、広報課において加筆したものです。

◆2010年12月4日 毎日新聞東京版より転載
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20101203ddlk10010180000c.html

石原語録:知事会見から 八ッ場ダム負担金支払い/築地市場の冠水 /東京
 ◇品物(ダム)が届かないなら提訴--八ッ場ダム負担金支払い
 ◇大雨が移転の正しさ証明、天の声だ--築地市場の冠水
 ◆一昨日(1日)、私を含め八ッ場ダム関係の知事が馬淵(澄夫)国交大臣と都内で会合をもって、かなり長い時間懇談をしました。「八ッ場ダムを予定通り建設してほしい」と強く求めました。馬淵さんは「非常に重く受け止めました」と。検証の結果の公表を早める意向を明らかにしました。

 生活再建事業に関する負担金は、群馬県の地元住民の厳しい状況を踏まえて支払うことにしたが、この支払いはダム全体の建設が前提。前金を払って買うべき商品が届かないならば返すのが当たり前ですから。万が一建設に至らない場合には、徹底的に国の責任を追及するということを申しました。馬淵大臣が非常にクールに現実的に現況を捉えて、知事を前に明言したことは、少し光が差してきたなという感じがしましたが。

 --支払いに応じた理由は、地元住民の生活再建が理由か。

 ◆そうですね。現場の人たちの生活を考えれば、いつ落ちるか分からない橋の上で暮らしているみたいなもんだから。同情を禁じ得ない。ただ、買い物の品物が届かないんだったら訴訟を起こします。まず100%私たちが勝つと思う。国は債務を弁償しなければならない。

 --大臣は中止から方向転換したという認識か。

 ◆私は、中止の言明は撤回したと解釈してますな。  ・・・以下、略


 上記の関連記事です。

◆2010年12月2日 朝日新聞政治面より転載
http://www.asahi.com/politics/update/1202/TKY201012020217.html

 八ツ場ダム負担金留保を解除 6都県知事、国交相と合意

 八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設負担金の今年度分の支払いを下流の6都県(東京、埼玉、千葉、群馬、茨城、栃木)が留保している問題で、群馬県の大沢正明知事は2日、6都県知事と馬淵澄夫国土交通相が支払い留保を解除することで合意したと県議会で明らかにした。

 大沢知事の答弁によると、6都県知事と馬淵国交相が1日夜に都内で会談。馬淵国交相が来年秋までにダム建設の是非の検証結果を示すと明言していることに対し、6都県側は「最大限早い結論」を求めた。また、現状は止まっているダム本体の建設を前提に、6都県側は負担金支払いに応じるとして、最終的にダム建設が中止になった場合は、「訴訟も含め国の責任を追及する」などと伝えたという。馬淵国交相は予断を持たずにダム建設の是非を検証することや、可能な限り早期に結論を出すことを約束したという。

 11月6日に現地入りした馬淵国交相は「大臣としては一切『中止の方向性』という言葉には言及しない」と発言したが、民主党の岡田克也幹事長らは「方針の大転換ではない」と述べていた。これに対し大沢知事は2日の記者会見で、「あらためて大臣の立場として馬淵国交相から『一切の予断なく検証する』と言っていただき、(6都県側は)納得した」と説明した。

 国交省は毎年、6都県に対し「直轄事業負担金」を、栃木を除く5都県に「利水者負担金」を求めている。住民の生活再建事業などにあてられる今年度のダム建設事業費154億円のうち6都県の負担金は88億円を占める。(木村浩之)

◆2010年12月2日 産経新聞生活面より転載
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/101202/trd1012021143001-n1.htm

八ツ場負担金留保を解除へ 馬淵国交相と流域6都県知事が合意

 八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)事業負担金の支払いを東京都や群馬県など流域6都県が留保していた問題で、6都県知事と馬淵澄夫国土交通相が1日夜に都内で会談し、今年度分の負担金を支払うことで合意したことが2日、分かった。群馬県の大沢正明知事が同日午前、県議会本会議で明らかにした。

 大沢知事によると、会談では知事らが負担金の支払いを前提に、国交省が現在進めているダムの要否を判断する再検証を早急に進めることを馬淵国交相に要望した。

 大沢知事は負担金の支払い方針について、「ダム本体建設を前提とするものだ。建設に至らない場合は、訴訟を含め、国の責任を徹底的に追及する」と述べた。

 八ツ場ダム負担金をめぐっては、民主党政権がダムの建設中止を表明したことを受け、6都県が今年度分計88億円の支払いを留保。負担金が得られないため、政府の今年度のダム関連予算が1月にも枯渇する見通しとなっていた。

◆2010年12月3日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581012030001

 知事「厳しい状況回避」 負担金留保を解除

 八ツ場ダム(長野原町)の建設負担金の今年度分の支払いを見送っていたダム下流の6都県が、支払い留保を解除することになった。これで住民の生活再建事業が進むことになったが、住民の不安は消えていない。留保の解除決定までには政府与党の発言の「ぶれ」が目立ち、負担金を「人質」にする6都県への不満もくすぶる。

 大沢正明知事は2日の県議会で、6都県知事と馬淵澄夫国土交通相が支払い留保を解除することで合意したことを報告した。

 11月6日に現地入りした馬淵国交相はダム中止の前提を事実上撤回した。しかし民主党幹部らは「方針の大転換ではない」と述べていた。これに対し大沢知事は2日の記者会見で、「あらためて大臣の立場として馬淵国交相から『一切の予断なく検証する』と言っていただき、1都5県は納得した」と説明した。

 下流6都県の支払い留保が続けば、地元・長野原町の道路や代替地整備など生活再建事業が来年1月にも止まってしまう状況だった。

 「(1日夜に)急きょ関係1都5県知事と馬淵大臣との会談が設定された。その場で今年度の負担金支払いに応じることが合意された。地元の厳しい状況が回避でき、地元知事として安堵(あん・ど)している」

 ただ、今回の負担金支払い決定は、ダム本体の建設が前提。大沢知事は「万が一、建設に至らない場合は、1都5県が連携して国に対して訴訟も含めた対応をしっかりととる」と馬淵国交相に伝えたことも明かした。

 「治水利水のために支払っており、ダムができないなら意味がない。負担金は当然返してもらうことになる」

 大沢知事は2日の記者会見で、「地元の方々も安堵(あん・ど)されていると思う。私自身、1都4県知事に感謝申し上げたい」と述べた。

 上田清司・埼玉県知事はこの日、「現地を抱える大沢知事がつらいでしょうから、『早く信じていいんじゃないか』という思いもあったと思う。1日は大臣が帰った後、6人が協議し、大臣の回答だったら信じていいだろうと(なった)」と記者に話した。

 橋本昌・茨城県知事は2日の記者会見で、「(来秋に結論を出すのでは)そんなに遅くては、とてもじゃないが地元の人たちに申し訳ない。なるべく早く結論を出してもらいたいと要請した」と述べた。

 石原慎太郎都知事は11月26日の記者会見で「買い物に行って、前金払ったのに品物が届かないんだったら、お金を払う馬鹿はいない」と負担金支払いに異論を唱えていた。一方で、「現場に行って、現地の人が生殺しみたいな状態で、本当に気の毒。それは重々分かる」とも話している。

 「問題が年越ししなくてよかった」。川原湯地区の飲食業、水出耕一さん(56)は表情を緩めた。「これで補償や代替地の造成などの工事を進めてほしい」

 3月末に休業した旅館「柏屋」の社長豊田幹雄さん(44)も、「とりあえず今年度の資金が不足する恐れはなくなった」と歓迎した。

 ただ、「来年どうなるかが怖い」というのが住民の思いだ。来年秋までには検証結果が示される。豊田さんは「中止となれば、生活再建のための金が出なくなる。どちらに転んでも、生活再建の道筋をつけてほしい」と言う。

 ダム不要論を表立って語ってきた牛乳製造販売業の豊田武夫さん(59)は「ダム推進の6都県が負担金を払うのは当たり前の話」と淡々と話した。6都県がダム中止なら訴訟を起こすという話に憤る。「ダム問題の被害者は地元の住民。我々こそ、半世紀以上振り回してきた国や6都県、町を訴えたいくらいだ」

 気にかかるのが地域振興策を支える総額997億円の「水源地域整備事業」や150億円を超す「利根川・荒川水源地域対策基金事業」の行方。ダムを造らないなら金を払わないという都県側の理屈通りなら、これらの事業もストップする恐れがある。

 川原湯地区では11月末、地域振興施設について検討するワークショップが始まったばかり。「下流都県の金がなくてもできるのか」。その会合でも、不安の声が飛んだ。

 「現地の人は気の毒」 他県知事ら、配慮も
 大沢知事は2日の記者会見で、「地元の方々も安堵されていると思う。私自身、1都4県知事に感謝申し上げたい」と述べた。
 上田清司・埼玉県知事はこの日、「現地を抱える大沢知事がつらいでしょうから、『早く信じていいんじゃないか』という思いもあったと思う。1日は大臣が帰った後、6人が協議し、大臣の回答だったら信じていいだろうと(なった)」と記者に話した。
 橋本昌・茨城県知事は2日の記者会見で、「(来秋に結論を出すのでは)そんなに遅くては、とてもじゃないが地元の人たちに申し訳ない。なるべく早く結論を出してもらいたいと要請した」と述べた。
 石原慎太郎都知事は11月26日の記者会見で「買い物に行って、前金払ったのに品物が届かないんだったら、お金を払う馬鹿はいない」と負担金支払いに異論を唱えていた。一方で、「現地に行って、現地の人が生殺しみたいな状態で、本当に気の毒。それは重々分かる」とも話している。

◆2010年12月3日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20101203/CK2010120302000083.html

八ッ場・負担金支払いへ 「検証」の行方注視 知事「ダム中止ならば返還請求」

 八ッ場(やんば)ダム事業に参画する流域六都県が、現在留保している本年度のダム事業負担金を支払うことを明らかにした二日、大沢正明知事は急きょ会見を開き、前夜に行った六都県知事と馬淵澄夫国土交通相の会談について詳しく説明。事前には、負担金支払いに難色を示す知事もいた中で「ようやく生活再建が進む。地元の皆さんも安堵(あんど)されたと思う」と成果を強調した。 (中根政人、山岸隆)

 大沢知事によると、会談は一日午後七時半ごろから約二時間、東京都内のレストランで行われた。

 六都県が負担金の支払いを決めた要因について、大沢知事は「馬淵国交相が、各知事や地元住民に向けて『予断のない検証』という姿勢を明確に発信してくれたことが大きい」と説明した。

 一方、負担金の目的については「六都県は、ダムを造るための生活再建費用として支出している」と断言。馬淵国交相がダム本体の建設中止を決めた場合の訴訟については「負担金の返還などを求めることになるだろう」との考えを示した。

 一方、ダム建設予定地・長野原町の住民らは、将来への不安を深める中で、一刻も早い問題の終結を訴えた。八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の篠原憲一事務局長は「ホッとひと安心だ。生活再建事業が『ダム建設』前提であることに変わりはない。一日も早く再検証を終わらせダム本体を着工してほしい」と強調した。

 川原湯温泉街の近くで乳業を営む豊田武夫さん(59)は「負担金を支出してもらえるのなら、生活再建に使わせてもらえばよい」と冷ややかな反応。ダム事業の是非については「建設予定地は、地質がもろく危険な場所。巨額の費用を投入してダムを造るべきではない」と訴え、馬淵国交相に建設中止方針の徹底を求めた。   

◆2010年12月3日 読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20101203-OYT8T00055.htm

 知事「補正組み本体工事を」 八ッ場負担金支払い合意
 八ッ場ダム(長野原町)の負担金支払い留保問題が急転直下、解決した。1日夜、群馬、東京、埼玉など6都県の知事と馬淵国土交通相が会談。ダム建設の可否を判断する再検証作業の日程について、国交相から「できる限り前倒ししたい」との言質を取り、石原慎太郎都知事ら強硬派も矛を収めた。大沢知事は県議会で経緯を明らかにした後、記者会見を開き、「これで生活再建事業も進み、地元の方も安堵(あんど)されると思う」と語り、表情を緩ませた。

 八ッ場ダムの今年度分負担金支払いを表明する大沢知事(2日、県議会本会議場で)  「昨晩急きょ、1都5県知事と馬淵国交相との会談が設定された」。八ッ場ダムに関する質問に対し、知事が淡々と切り出すと、本会議場は静まりかえった。

 知事は、負担金支払いに至った経過を説明し、「本体建設が前提で、万が一、建設に至らない場合は訴訟も含めて国の責任を追及すると申し入れた」と明かした。さらに「川原湯温泉で旅館の休業が相次ぐなど地元の不安、混乱は一層広がっている。中止撤回や生活再建事業の早期完成を、1都4県知事と連携して政府に求めたい」と力を込めた。

 会談は1日午後7時半から約2時間。東京都内のレストランで夕食を取りながら、「和やかに行われた」(大沢知事)といい、知事は記者会見で「大臣から『予断なく検証し、一日も早く結果を出す』と言っていただき、1都5県として納得した」と語った。

 6知事は2日、国交相に対し、正式な申し入れ書も提出し、「検証後、直ちにダム本体工事に着工すること」を要求。大沢知事は議会後、「(建設継続の)検証結果が出たら、2012年(度予算)を待たないで、補正予算を組んで、すぐに着工してほしい」と話した。

 また、埼玉県の上田清司知事は同日、記者団の取材に対し、「馬淵国交相の誠実な対応を信じようと、国交相が(会談から)帰った後、知事6人で協議して一致した」と語った。

 一方、地元は6都県の負担金支払いを歓迎しつつも、ダム本体の早期着工を求める声が根強い。

 高山欣也町長は「今年度の生活再建事業が実施される確約が取れた。一安心している」と話したが、川原畑地区ダム対策委員長の野口貞夫さん(67)は「今後、ダムが出来るか出来ないは別問題。馬淵国交相は『中止という言葉を封印する』と言ったが、まだ心の中にはあるということ」と慎重な姿勢。水没関係5地区連合対策委員会事務局長の篠原憲一さん(69)は「代替地造成などが進めばうれしいが、一日も早くダム本体に着工してほしい」と話した。

 宿泊営業を休止中の老舗旅館「柏屋」の豊田幹雄社長(44)は、代替地造成が遅れている影響で、土地建物の補償を後回しにされており、「国は言い訳出来なくなった。一刻も早く生活再建を進めて」と訴えた。

◆2010年12月3日 下野新聞より転載
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20101202/423181

6都県知事、八ッ場ダム負担金支払い留保を解除

 群馬県の八ツ場ダム建設をめぐる問題で、福田富一知事ら利根川流域1都5県の知事が馬淵澄夫国土交通相に対し、本年度分の建設負担金と利水者負担金など約88億円の支払い留保の解除を伝えたことが2日、分かった。福田知事が同日の県議会代表質問の答弁で、1日夜に都内で馬淵氏と非公開で会談していたことを明らかにした。6都県知事は会談で一定の前進がみられたとしているが、条件として「万が一、ダム建設が中止に至った場合は訴訟を含め、国の責任を徹底的に追及する」としており、今後の曲折も予想される。

 福田知事は、螺良昭人氏(自民)の質問に答えた。会談では6知事が連名で八ツ場ダムの早期完成を求める申し入れ書を提出。この中で来年秋までに結論を出すとされる八ツ場ダムの検証について「最大限早い時期にわれわれが納得できる結論を出すことを求める」とし、負担金の支払いは「あくまでもダム本体の建設が前提」とくぎを刺している。

 これに対し馬淵氏は「申し入れ内容を重く受け止める。検証は可能な限り前倒ししたい」と答えたという。

 八ツ場ダム事業をめぐり前原誠司前国交相は中止を明言。6都県知事はこれを不服として建設負担金などの支払いを留保していた。本県は治水分のみ負担しており、総額は10億4千万円。このうち昨年度までに5億7千万円支出し、本年度は3300万円を負担する予定だった。

 福田知事によると、会談は秘書官や随行者を一切交えず7人だけで、約2時間にわたり行われた。出席した知事からは、この1年余りのダムをめぐる混乱について「国交省の批判めいた話も出た」といい、馬淵氏が「申し訳なかった」と陳謝する場面もあったという。

 会談で福田知事は一時凍結となっている鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)についても「建設現場は樹木が伐採され危険な状態。仮に中止になったら、あのままでは困る」と指摘し、検証作業を急ぐよう求めた。馬淵氏の明確な答えはなかったという。

 6都県の負担金については、支払い留保が継続されれば1月上旬には資金が枯渇し、用地買収などの生活再建事業に支障が出る可能性が指摘されていた。