ダムと日本人(毎日新聞)

 熊本県では、川辺川ダム中止に続き、荒瀬ダム撤去という、わが国で初の試みが県民世論の後押しで進みつつあります。愛知県では、先の選挙結果を受けて、長良川河口堰の開門が現実味を増してきました。
 一方、一旦造られたら、開門のようなやり直しがきかない八ッ場ダムを巡っては、「ここまで来たのだから、後戻りはできない」などの非論理的な精神論ばかりが強調され、まるでかつての日本軍のように泥沼を突き進むばかりです。
 以下の記事の末尾にある、「私たちは何と懲りない民族なのだろう。」という嘆息は、記者一人のものではないでしょう。

◆2011年2月15日 毎日新聞より転載
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20110215k0000m070127000c.html

 発信箱:ダムと日本人=福岡賢正(西部報道部)

 長年の被害に耐えかねた住民の運動で撤去が決まった球磨川の荒瀬ダムが、水門を全開して10カ月。撤去工事は来年からで、まだ開門しただけだが、巨大な水たまりが消えて流れが戻ったことで、川が注ぐ八代海にまで目覚ましい変化が現れ始めた。ぬかるんで人が近づけなかった河口干潟にダムで遮断されていた砂が供給され、歩ける面積が時を追うごとに広がりつつあるのだ。

 それに伴って砂地を好む生物も戻ってきた。地元の自然観察指導員、※(つる)詳子さんによると、消滅寸前だったミドリシャミセンガイが普通に見られるまでになり、オオノガイも復活した。タイラギも激増し、歩きやすくなった干潟には穴ジャコやハマグリ、マテガイ目当ての潮干狩り客が押し寄せて、過剰利用が懸念されるほど。消えたアマモの群落も広がり始め、休みに来るウナギを捕る漁師たちも現れた。大雨後に発生していた赤潮も起きなくなったという。

 国は昨年末、諫早湾を閉め切った潮受け堤防の開門調査を命じる高裁判決を受け入れた。堤防と言っても、あれも川と海のつながりを断つ巨大な河口ダムだ。その開門がもたらす効果は荒瀬ダムの比ではあるまい。調査で門を開けることにすら激しい反対が起きているのも、調査中に劇的な環境改善が進み、再び閉めることなどできなくなるという恐れの裏返しにほかならない。

 6日の愛知県知事、名古屋市長選で圧勝した2人も、全国的な反対を押し切って建設され、著しい環境劣化と漁業衰退を招いた長良川河口堰(ぜき)の開門を公約している。曲折はあろうが、この選挙結果が河口堰開門への大きな弾みになるのは間違いない。

その同じ時に、自治体の反発で民主党の脱ダム路線が尻すぼみとなり、各地でダム計画が続々蘇生しつつある。私たちは何と懲りない民族なのだろう。

※雨かんむりの下に「金」と「鳥」