八ッ場ダムと群馬県知事選(その1)

 6月16日の告示を前に、群馬県内では知事選へ向けての報道が過熱しています。八ッ場ダムについての世間の関心は政権交代当時より下がっていますが、依然として群馬県内では最大の政策課題の一つであることは間違いありません。民主党政権の八ッ場ダム事業への姿勢が定まらない中、地元では国交省がいうところの「生活再建関連事業」の進捗に伴い、地域の疲弊が一層進む状況がますます加速しています。
 知事選の各候補者へ八ッ場ダム問題について公開アンケートを行った結果はこちらに掲載しています。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1247

◆2011年6月11日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20110611/CK2011061102000077.html

 -県政点検 2011知事選を前に<5>八ッ場ダム 事態打開へ問われる覚悟―

 「国は八ッ場(やんば)ダムの問題について、肝心なことに何も取り組んでいない」。ダム建設予定地を抱える長野原町のダム水没関係五地区連合対策委員会事務局長・篠原憲一さん(69)は、ダムの是非に関する結論が決まらないまま、地元住民の将来が放置されている現状に、積もり積もった怒りを爆発させた。

 二〇〇九年九月、当時の前原誠司国土交通相が八ッ場ダムの建設中止を宣言してからすでに一年九カ月。この間、国の方針を「一方的」「強権的」とする地元住民やダム関係六都県の猛反発によって、建設可否の問題は、本質的な議論が深まることなく「再検証」の枠組みに封じ込められた。

 一方で、八ッ場ダム問題の最終的な責任を負うはずの国交相は、ダムを中止した場合の代替案を示すことなく二度も交代。政権交代の象徴として全国的な注目を集めたはずのダム問題は、社会の関心を失った。

 東日本大震災の復興対策が叫ばれる陰で、ダム建設主体の国交省は民主党政権の混迷を見透かすように、八ッ場ダム中止の方針を否定するかのような動きを見せ始めている。

 五月二十四日に開かれたダム再検証のための「検討の場」で、同省は利根川以外の河川からの導水や地下水の取水などを組み合わせた利水の代替案を提示。関係都県が「非現実的」と反論したことで、ダム建設の正当性をかえって“演出”する形となった。

 治水の面でも、同省はダム建設の根拠となった利根川の基本高水について「新たな手法で再計算しても、従来とほとんど変わらない」との試算を今月一日に提示。基本高水の検証作業は、ダム建設の是非に影響しないと示唆した。

 八ッ場ダム問題について、知事選の立候補予定者からは、地元住民の感情を恐れるかのような腰の引けた発言が目立つ。現職の大沢正明氏(65)は「ダム建設を前提に、再検証を一日も早く終えてほしい」と、国の対応のみに言及する。

 後藤新氏(50)は「国と地元の調整役として、地元の声を大切にしたい」とするが、建設の是非については「国が決断すること」と意見表明を避ける。

 小菅啓司氏(60)は「ダムなしが前提の生活再建案を作成し、地元へ丁寧に説明する努力が必要」とする。

 地元住民の中には、自由な議論を求める声もある。川原湯地区で乳製品販売業を営む豊田武夫さん(59)は「震災復興に取り組むべきこの時期に、八ッ場を造る財源などない。多くの国民も建設を望んでいないはずだ」と訴える。

 八ッ場ダム問題は、建設の是非を決めただけでは何の解決にもならない。建設予定地を持つ本県の知事には、予定地住民の生活再建を中心とする、複雑化したダム問題の本質から逃げず、国とともに状況打開を主導するだけの政策力や精神的な覚悟が不可欠だ。 =おわり

(この企画は、中根政人、山岸隆、菅原洋、中山岳が担当しました)