さる7月3日に行われた群馬県知事選は、現職の大澤知事の圧勝となりました。全県で企業、団体、議員らが勝ち馬に乗り、投票率は36、62%と過去最低を記録し、前回知事選を16,79ポイントも下回る低調ぶりでした。
県政最大の難問である八ッ場ダムに関しては、大澤知事のみ「推進」、挑戦者の後藤新氏(無所属)は「国の検証に従う」姿勢だったため、共産党候補などが「反対」を打ち出したものの、今回の知事選でも争点とはなりませんでした。
当会が6月に実施した公開アンケートによれば、候補者の中で大澤知事のみが八ッ場ダム事業に「問題がない」というスタンスでしたから、群馬県は八ッ場ダムの「生活再建事業」をこれまで通りに進めることになります。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1247
川原湯地区のワークショップで議論され、4月にまとまった計画は、木造平屋建て約825平方メートルの校舎のような東西に長い建物に、郵便局や観光案内所、足湯、研修室、貸自転車置き場、テナントスペースが並ぶ造りのもので、建設費は約3億円です。建設は利根川下流都県の負担で行われますが(利根川・荒川水源地域対策基金事業)、問題はその維持管理費が地元住民の負担になってしまうことです。
地元がダムを受け入れるに当たっては、土地などの財産補償と共に地域振興が約束されましたが、地域振興の方は殆ど約束が果たされず、地元が泣き寝入りしている状況です。地元の長野原町は町長、議会を先頭に八ッ場ダム推進を強く打ち出しており、「地域振興」が行き詰っている問題が表に出ることはありませんが、以下の群馬版の記事はその問題を取り上げたものです。
◆2011年6月29日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/archive/news/2011/06/29/20110629ddlk10010052000c.html
-現場から:’11知事選/11止 八ッ場ダム・振興施設 二転三転する計画 /群馬-
◇県、19年間「一日も早く」
「順調にいけば、平成26(14)年春にはオープンできると考えております」
八ッ場(やんば)ダム建設で水没予定の長野原町川原湯の移転代替地に計画されている「地域振興施設」。完成時期について、県は今月3日、地域住民で作るダム対策委員会で「3年後」との見通しを示した。委員長の樋田洋二さん(64)は「えっ、何年?」と聞き返した。計画が持ち上がってから既に19年がたとうとしていた。
県は昨年11月から今年4月まで計5回、住民参加型のワークショップを開き、県の委託を受けたコンサルタント会社が地域振興施設の試案をまとめた。延べ床面積800平方メートルの木造平屋建てで建設費は約3億円。観光案内所や温浴施設、郵便局、会議室を備え、人が集える場所を目指した。しかし年間収入550万円に対し、維持管理費は2900万円。住民からは「赤字まみれの施設は造れない」と失望の声が上がった。
地域振興施設の建設計画は、これまで2度にわたり頓挫した歴史がある。
県が最初に提案したのは92年7月。ダム流域6都県による事業の一環として約15億円を投じ、鉄筋コンクリート造り3階建ての「観光会館」にクアハウスを併設する計画だった。ところが、提案から約15年後、県は維持管理費の負担を巡り、下流都県と合意できていないことを明らかにした。
「ひどいじゃないか」「だまされた」。ダム対策委員会では怒号が飛び交ったが、当時副委員長だった樋田さんは落ち着いていた。「ダム建設もさんざん延期された。裏切られるのは、いつものことだ」
県は08年に計画を見直し、建設費約11億円でフィットネスルームや足湯、エステティックサロンを造る「エクササイズセンター」構想を発表。だが、肝心の集客力が疑問視され、これも立ち消えになった。そして09年9月に民主党政権が発足。前原誠司国土交通相(当時)の中止宣言で、混乱の歴史が振り出しに戻った。樋田さんは09年度に委員長になってから、とにかく住民の意見をまとめ、完成を急ごうと努力している。
県はワークショップで示した試案の実現可能性について、コンサルタント会社に委託して検討する。「14年春に完成」との最短スケジュールは、試案が「実現可能」と評価され、さらに下流都県との合意形成、用地買収などが順調に進むことを前提にしている。
今月3日のダム対策委員会で、県からコンサルタント会社への発注時期を「7月」と説明された樋田さんは、再び問い返した。「7月ですか。なるべく急いでいかないと、すぐ1年終わっちゃう」。県は「一日でも早く前倒ししたい」と答えた。この19年、何度も繰り返されてきた言葉だった。【奥山はるな】=おわり