八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

河川法に違反している八ッ場ダムの治水検証

2011年7月24日

 国土交通省関東地方整備局によって八ッ場ダムの検証が行われています。 ダム事業を進めてきた当局による検証はお手盛りではないか、と批判されてきましたが、実際にその中身を見ると、ダム本体事業にゴーサインを与えるための検証といえる状況です。

 さる7月19日の八ッ場ダム検討の場第7回幹事会で、関東地方整備局は八ッ場ダムの治水効果の数字を示しました。

 関東地方整備局のホームページ
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000041633.pdf

 次の幹事会ではこの効果を「八ッ場ダムなし」で対応した場合にどのような代替案があるかが示されることになっています。

 しかし、今回、関東地方整備局が示した八ッ場ダムの治水効果は、今までの数字よりも格段に大きく、八ッ場ダム推進のためにその効果を大きく引き上げた疑いが濃厚です。

 今まで関東地方整備局は、八ッ場ダムの効果を次の数字で示してきました。

 基本高水流量22000?/秒(八斗島)に対する削減効果は、既設6ダムが1000?/秒、八ッ場ダムが600?/秒で、合わせて1600?/秒

 これは1974年までの31洪水について、雨量を1/200の雨量に引伸ばして洪水流出計算をした場合の31洪水の平均値です。22000?/秒に対して八ッ場ダムの効果は600?/秒ですから、2.7%の削減です。

 ところが、今回の数字は次のものでした。

 過去の8洪水について八斗島地点流量が17000?/秒となるように引伸ばした場合の八ッ場ダムの削減効果

100?/秒、 730 ?/秒、 1,760?/秒 1,450?/秒、 1,460?/秒、 790?/秒、 1,300?/秒、 1,820?/秒で、平均1176?/秒

 この平均は、17000?/秒に対して6.9%になります。従来の平均削減率2.7%の2.6倍にもなっています。

 これは関東地方整備局が新モデルで計算したものだというのですが、個々のデータを見ると、首を傾げるような数字が並んでいます。

 たとえば、昭和24年8月洪水(キティ台風)の場合、従来の計算では八斗島22961?/秒に対して、八ッ場ダムの削減量は224?/秒で、削減率は1.0%でした。

 ところが、今回の計算では同洪水については八斗島17000?/秒に対して、八ッ場ダムの削減量は1760?/秒で、削減率は10.4%。
 なんと10倍に跳ね上がっています。

 平成10年9月洪水については、八ッ場ダム予定地直下に岩島観測所がありますので、その観測流量からチェックすることができます。今回の計算では同洪水については八斗島17000?/秒に対して八ッ場ダムの削減量は1820?/秒です。

 しかし、岩島の観測流量に基づいて八斗島17000?/秒に引伸ばした場合の八ッ場ダムの効果を試算してみると、その半分程度にしかなりません。

 このように、今回、関東地方整備局が示した八ッ場ダムの効果は異様に大きな数字です。

 今回、利根川水系河川整備計画が未策定であるということで、関東地方整備局が一存で、整備計画相当の目標流量を17000?/秒とし、それを前提として八ッ場ダムを整備計画に位置付けようとしていますが、しかし、これは河川法の規定に反することです。

 利根川水系河川整備計画の内容は、河川法十六条の二に基づいて関係住民の意見などを反映させて作らなければなりません。関東地方整備局の思惑だけで河川整備計画の内容を決定するのは違法行為です。

 関東地方整備局が河川法の手続きも踏まずに、八ッ場ダムを推進するために都合の良い数字を作り上げていく状況を何とかしなければなりません。