八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

茶番劇のような八ッ場ダム検証

 2011年民主党代表選の当日、八ッ場ダムを推進してきた国交省関東地方整備局では八ッ場ダム検証のための第8回幹事会が開かれました。
 八ッ場ダム検証のための幹事会は、国交省関東地方整備局の河川部長と関係都県の部長が構成メンバーで、まさにダム推進行政によるダム推進のための儀式の場といった趣です。
 今回の会議では、八ッ場ダム事業の経済合理性が改めて強調され、関係都県はこれまで同様、ダム推進を繰り返し要求しました。政治空白が続く中、国交省はますます八ッ場ダム本体工事再開へ向けての動きを強めていますが、関係都県の住民も国民も蚊帳の外に置かれたままです。

 八ッ場ダム検証のための幹事会の資料は、昨日の分も含め、これまで8回の幹事会の配布資料が国交省関東地方整備局のホームページに掲載されています。↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000160.html
 八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場

 各紙ともに、国交省側の発表をそのまま記事にしています。

◆2011年8月30日 東京新聞朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011083002000036.html

 -八ッ場ダム「代替案は1000億円超増」 国交省試算―

 国土交通省関東地方整備局は二十九日、八ッ場(やんば)ダム(群馬県)建設の是非を検証する「検討の場」の幹事会をさいたま市で開き、ダム建設に替わって洪水被害を防ぐ治水面の対策案を示した。

 川底を掘り下げたり、土地利用を規制するなどの対策を組み合わせた四案で、完成までに必要な事業費はダム建設を中心に進めた場合の八千三百億円に比べ、一千億~千三百億円膨らむとした。

 利水面でも、ダム建設のコストが六百億円と最低で、富士川(静岡県)から二百キロ以上の導水路を新設するなどの代替案は最大で一兆三千億円が必要とした。

 次回以降の会合で治水、利水両面から各種の対策を総合的に比べてダム建設の是非について結論を出すが、同省有識者会議による検証の判断基準はコストを最重視するとしており、今回のデータは建設の継続に有利な要素といえそうだ。

 対策案は、実現性やコストから(1)河道掘削(2)遊水地の改良(3)遊水地の新設(4)浸水が想定される土地での宅地かさ上げや利用規制-をそれぞれ中心とする四案に絞り込み、費用や安全度を比べた。

 完成までの費用はダム建設を中心とするケースが最低。年間の維持管理費は河道掘削など三案が六十三億円で最低だったが、ダムを建設した場合も六十八億円と大きな違いはなかった。

 大雨時の安全度は土地の利用規制で一部水田が浸水するものの、四案ともダム建設とほぼ同等とした。遊水地新設と土地利用規制の二案は用地買収や地元の合意に時間がかかると課題を挙げた。

◆2011年8月30日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581108300001

 -治水・利水とも 八ツ場が「最安」ー

 八ツ場ダムの建設の是非を検証中の国土交通省関東地方整備局は29日、地滑り対策で109億7千万円、地域住民の代替地安全対策で39億5千万円の計149億円余りが新たに必要と明らかにした。さいたま市であった検討の場幹事会で1都5県に示した。

 同省の基本計画では八ツ場ダムの総事業費は4600億円。関東地方整備局は、地滑り対策は現時点で最大限の範囲を想定し、代替地安全対策は「必要性を点検した」と説明した。

 これに対し、都県側は「徹底的にコストを削減し、計画内におさめるべきだ」と反発。整備局は「予断を持たずに検証をしている最中で、コスト削減などの期待的要素は含んでいない。基本計画(での総事業費)の変更に直結するものではない」と答えた。

 この日の幹事会では、八ツ場ダムを建設しない場合の治水、利水策の費用なども初めて示された。

 治水では、八ツ場ダムと他の調節池の機能向上を組みあわせた場合の完成までの費用を約8300億円とし、代替の4案は約9300億~約9600億円とした。多くの代替案で利根大堰(埼玉、群馬両県)の改築や用地買収が必要で、実現には「関係機関との調整や協力が必要」とした。

 利水では、八ツ場ダムを約600億円とした一方、代替4案は約1700億~約1兆3千億円。代替案には、例のない長距離の富士川(静岡県など)からの導水や、環境省がラムサール条約に登録する方針の渡良瀬第二遊水池(栃木県など)の活用が含まれる。

 都県側は「八ツ場ダムの優位性は明らか」「代替案は実現性がない」と主張。群馬県は「国は早く八ツ場ダム建設の決断を」と促した。(小林誠一)

◆2011年8月30日 毎日新聞群馬版

八ッ場ダム・流転の行方:検討の場会合 治水4案は9300~9600億円 /群馬

◇整備局提示 8300億円現行案含め評価へ

八ッ場ダム問題を巡り、国土交通省関東地方整備局と関係1都5県の担当部長らを交えた「検討の場」の第8回会合が29日、さいたま市内で開かれた。

同整備局は治水対策として、ダムを建設する現行案のほかに、河道掘削▽渡良瀬遊水地の遊水池改築▽新たな遊水池の整備▽堤防整備や宅地かさ上げ--の計4案について、完成に必要な費用を明らかにした。

ダム案が約8300億円、他の4案は約9300億~9600億円で、今後、総合評価を行い治水対策案を絞る。

利根川の治水対策にあたっては6月、今後20~30年の目標流量として伊勢崎市八斗島地点で毎秒1万7000立方メートルに変更したため、変更前のダム案の総事業費(約4600億円)を大きく上回った。維持管理費はダム案が年間約68億円、他の4案は年間約63億~66億円。

一方、利水対策としては、ダム案のほかに、藤原ダムの掘削や地下水取水▽利根大堰や下久保ダムのかさ上げ--など計4案を用意。

完成に必要な費用は、ダム案が約600億円で、他の4案は約1700億~1兆円だった。維持管理費は、ダム案が年間約5億円、他の4案は年間10億~210億円。

ただしダムを建設した場合、ダム下流に東京電力が所有する水力発電所の水量が減ることに伴う補償が必要になるが、その費用は含まれていない。

また、同整備局は、ダム案を実施する場合の移転代替地の安全対策や地滑り対策として、新たに149億円の事業費が必要と発表。1都5県側からは「総事業費の範囲内に収めてほしい」などの注文が出た。【奥山はるな】

http://mainichi.jp/area/gunma/news/20110830ddlk10010223000c.html

◆2011年8月30日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/news/a/2011/08/30/news02.htm

 -八ツ場ダム建設案がコスト最少 治・利水各5案出そろう―

 八ツ場ダム建設の是非を決める検証作業で、国土交通省関東地方整備局と本県など関係6都県が意見を交わす「検討の場」の第8回幹事会が29日開かれた。

 整備局が八ツ場ダムを建設しない場合の治水面の代替4案を提示し、治・利水両面で八ツ場ダム建設を含む案と含まない代替案が出そろった。今後の総合評価で最重視されるコスト面は治・利水両面とも八ツ場ダム案が最も少なかった。

 整備局側が示した代替案は(1)伊勢崎市八斗島(やったじま)下流の大規模な河道掘削(2)渡良瀬遊水地の機能強化(3)本県と埼玉県に新規遊水地3カ所建設(4)埼玉県内の一部水田地帯を洪水時の遊水地として活用-をそれぞれ軸とする4案。

 このほか、目標とする規模の洪水(八斗島で毎秒1万7千立方メートル)を安全に流すために、八ツ場ダム案を加えた5案の全てに河道改修や既存ダム群の再編、烏川調節池の整備を入れた。

 これらを含めて完成までに必要な費用を比較したところ、代替4案は9300億~9600億円で八ツ場ダム建設を含む案の8300億円を上回った。

 さらに代替4案はダム建設中止に伴う利水負担金の返還も発生すると説明した。各都県がこれまでに支払った負担金は1620億円。完成後の維持管理費は代替4案が年間63~66億円で八ツ場ダム案の同68億円より低コストだった。

 一方、利水面のコスト比較でも八ツ場ダム案の利水面の残事業費が600億円なのに対し、既設ダムのかさ上げや静岡県からの導水管建設などを軸とする代替4案は1700億~1兆3千億円と上回った。

 整備局は今後、実現性や環境への影響、地域社会への影響などコスト以外の評価軸も交えて各案を総合評価し、八ツ場ダム建設を継続か中止かの対応方針案を作成する。

 6都県側は「コスト、工期の両面で八ツ場ダムに代わる案はない。早期のダム建設再開を希望する」などと主張した。

 このほか、整備局が八ツ場ダム建設計画の総事業費の点検結果として、周辺の地滑り対策や代替地の安全対策で新たに149億3千万円の事業費が必要との試算を報告。6都県側は「増額は受け入れがたい」などと反発した。