2011年9月20日
民主党政権下で進められてきたダム事業の検証は、八ッ場ダムをはじめとしてほとんどがダム事業推進にとって有利な結果となっています。
これは、ダム事業を推進してきたダム事業者みずからが検証主体である上、推進を主張する関係自治体の意見のみが検証結果に反映され、ダムに疑問を持つ流域住民や有識者が意見を述べる場すら与えられていないからです。これでは、これまでのダム行政の延長でしかありません。
ダム検証のルールは、国土交通大臣の諮問機関である「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」で定められました。これまでダム事業を推進、あるいは容認してきた治水の専門家が中心メンバーである有識者会議がダム検証のルール作りに関わったことは、その後のダム見直し政策に大きな影を落とすことになりました。
☆国交省ホームページより 「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」について
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/211120arikata.pdf
この有識者会議は、非公開の会議を2009年12月から2010年8月にかけて17回重ねた挙句、ダム検証のルールを決定しました。
☆国交省ホームページより 「今後の治水対策のあり方について中間とりまとめ」(平成22年9月」
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/220927arikata.pdf
検証ルールの決定にあたり、有識者会議は昨年7月16日から8月15日にかけて広く一般国民に意見募集(パブリックコメント)を実施しました。しかし、このパブコメの結果を有識者会議の事務方(国交省河川局)が公表したのは11月30日のことでした。
パブコメは広く関係住民の意見を政策決定に反映させることを目的とする民主的手続きの一つですが、「有識者会議」のパブコメは、実質的には「民の意見を聞き置く」だけのものに終わりました。
「関係住民の意見を聞く」という手続きは、1997年に改正された河川法に新たに加えられた項目です。1990年代、長良川河口堰など、国の河川行政に対する批判が高まる中、建設省は河口堰建設を強行したものの、河川行政の民主化に取り組まざるをえませんでした。
有識者会議による問題の多い「ダム検証のルール」ですが、この中にも改正河川法に基づいた関係住民からの意見聴取についての説明があります。
上記20ページより転載
②検討過程においては、「関係地方公共団体による検討の場」を公開するなど情報公開を行うとともに、主要な段階でパブリックコメントを行い、広く意見を聴取する。
③学識経験を有する者、関係住民、関係地方公共団体の長、関係利水者の意見を聞く。
—転載終わり—
国交省関東地方整備局が実施してきた八ッ場ダムの検証では、「関係地方公共団体による検討の場」は報道機関には公表されたものの、一般国民は別室でのテレビ視聴しか許可されませんでした。「主要な段階でのパブリックコメント」は、まだ実施されていません。
さる9月13日、国交省関東地整は「八ッ場ダムが最も有利」とする自らの検証結果を公表すると同時に、「意見聴取等の進め方」を明らかにしました。
国交省関東地整ホームページより
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000044335.pdf
上記ホームページには、「パブリックコメントを実施する予定」とあります。
そのほか、「意見聴取」として、「関係住民」と「学識経験者」、「関係地方公共団体の長」、「関係利水者」から意見を聴くこととなっています。この中でダム推進を主張してきた3番目と4番目は、すでに意見表明の場が与えられ、今回の「検証結果」に十分意見が反映されていますので、単に同じ主張を繰り返す場が与えられるだけです。。1番目の「関係住民」については、「意見を有する関係住民を募集し、意見を聴く予定」と説明があり、「学識経験者」については「各専門分野の学識経験者等から構成される「利根川・江戸川有識者会議」の各委員の意見を聴く予定」とあります。
「利根川・江戸川有識者会議」のメンバーは国交省関東地整の人選によるものです。ここでも八ッ場ダムについてこれまで問題提起してきた有識者らは排除されています。