八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

都水道 ベトナムに海外本格進出

 東京都の水行政は、八ッ場ダム事業と密接な関係があります。

 今朝の東京新聞一面に「都水道が海外に進出」という記事が載っていました。一方で、都水道局が資金を異常に溜め込み、都民に料金値下げとして還元していない、というニュースも流れています。
 景気のよい、右肩上がりの時代は、地味な水道行政は都民の関心もあまり高くはなかったのですが、実態はどうなっているのでしょう。

◆2011年10月5日 東京新聞一面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011100502000050.html

 -都水道 ベトナムに 海外本格進出ー

 アジアや中東諸国の経済発展に伴い世界的に激化する水ビジネスへの参入を目指す東京都が、来年春にも立ち上げられる日本企業とベトナム当局の合弁事業に技術協力することが四日、分かった。東京水道の初の本格的な海外展開となる。都の外郭団体「東京水道サービス」(TSS)が事業参加し、二〇二〇年までに、首都ハノイ市で日量三十万トンを給水する浄水場を建設、運営する。

 東京・有楽町の東京国際フォーラムで開会中の「国際水協会アジア太平洋地域会議」に出席した猪瀬直樹副知事が、記者団に明らかにした。水環境エンジニアリング企業「メタウォーター」(東京都港区)とハノイ市の水道公社が来年度初めにも合弁で特別目的会社を設立。官民パートナーシップ(PPP)で政府系金融機関が資金を提供、都は技術面や信用保証面で協力する。TSSの出資も検討されている。

 合弁会社は、ハノイ市を流れるドン川を取水源とする浄水場を建設し、一五年ごろまでに日量十五万トンを、二〇年までに同三十万トンを給水する。人口六百五十万人のハノイ市の水需要は現在、日量五十五万トン。十年後には二~三倍に増え、深刻な水不足に陥ると予測されている。

 猪瀬副知事は「これまでアジア各国に水道ビジネスの提供を提案してきた。東京水道の初の本格的な海外進出。都は海外と日本の民間企業のマッチングに進んで協力する」などと述べた。

 世界の水ビジネス界では、「水メジャー」と呼ばれる仏スエズ社など大手三社が民間事業の八割を独占。日本の水道事業は自治体が主に担うため、個別の技術を持つ日本企業もシステム全体の運用にはノウハウがなく、水メジャーに対抗できなかった。

 都は昨年一月にTSSを活用した東京水道の海外展開を表明。マレーシアやベトナムに視察団を派遣し、PPPによる進出を打診していた

◆2011年9月29日 朝日新聞夕刊

 ー東京都水道局 異例のもうけ 資金残高2200億円 それでも料金下げる気なしー

(図)都水道局の年度末資金と企業債残高の推移

 東京都水道局が公営企業としては異例のもうけを上げ続けている。2010年度末で過去最高の約2200億円の現金や有価証券を保有しているが、「今後の設備更新に必要」と料金の値下げには消極的だ。

 10年度決算案によると、約3344億円の総収益(売り上げ)に対し、総費用(出費)は約2796億円。差し引き548億円が純利益になった。純利益は00年ごろから増え始め、09年度までの5年間では年535億~689億円。多くは預金や有価証券の購入に充てられ、10年度には「年度末資金残高」が2209億円になった。

 これに対して、借金にあたる「企業債」の残高は年々減って3584億円。この状態が続けば、3年後には貯金と借金が均衡する。世代間の負担を公平にするという地方債の目的に反することにもなりかねない。

 経営が好調なのは、「おいしい水」を作るため2300億円以上を投じた全浄水場の高度処理化工事が一段落したことや、人口が集中しているため効率的な設備投資ができることなどが理由だ。1975年に約8千人いた職員を約4千人に半減させたことも大きい。

 都の水道料金は大都市の中では高めに設定されており、一般家庭の標準的な一ヶ月の使用料20立方㍍(20ミリ口径)で2688円。独自の水道事業のない千葉市と相模原市を除く17政令指定都市と比較すると、全体で上から8番目、横浜市より110円、一番安い大阪市より672円高い。ダム建設などで経営難に陥った70年代以降、大幅な値上げを繰り返した結果だ。
 都水道局は「25年度からほとんどの浄水場が老朽化する。更新の費用にざっと見積もって1兆円。水道管の耐震化に今後3年間で2200億円かかる見込み。健全な経営を維持するためにも現在の料金は適正」としているが、「施設更新や耐震化の具体的な計画はまだない」という。

 「都民に還元を」 専門家

 公営企業会計に詳しい石原俊彦・関西学院大学教授(商学)は、「公営企業としてはもうけすぎ。都水道局の収入規模なら、利益は100億円もあれば十分。「どんぶり勘定でこのくらいかかりそうというのであれば、都民の理解は得られない。施設更新や耐震化は、世代間の公平な負担のためにも地方債を利用すべきだ。2200億円を超える資金残高をためこんでいるのは異常で、料金値下げで都民に還元すべきではないか」と話している。(伊藤景子、菅野雄介)