前田大臣の現地視察を控え、国交省関東地方整備局が氾濫被害額の算出法を変えて八ッ場ダムの「費用対効果」を倍増させたことが明らかになりました。
「費用対効果」はビーバイシー(Benefit=効果/Cost=費用)とも呼ばれ、公共事業に税金を投入する根拠として示される数字です。八ッ場ダム事業を進めている同局は、これまでも「費用対効果」を八ッ場ダム事業を推進するために都合のよいように計算してきたといわれていますが、さらに計算方法を変更して数字を膨らませました。
新しい「費用対効果」の数字は、10月6日に始まった八ッ場ダムの検証に対する下記のパブコメ(意見公募=パブリックコメント)の資料に掲載されていました。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000184.html
これまで以上に科学的根拠のない「費用対効果」ですが、計算するのも検証するのも八ッ場ダム事業を推進する関東地方整備局では、どれほどいい加減な数字を出そうと、同局の思いのままです。河川行政においては民主主義が機能していません。
◆2011年10月7日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111007-OYT8T00043.htm
-八ッ場ダム費用対効果「倍増」 国交省、試算被害額算出法変えー
八ッ場ダム(長野原町)の再検証で、国土交通省関東地方整備局が、ダム建設の費用対効果を「約6・3倍」とし、2009年2月の事業評価で出した「3・4倍」から大幅に引き上げたことが6日、わかった。
ダムで軽減される洪水被害額の算出方法を変更したため。変更前の方法で計算すると「約2・2倍」で、ダムの効果は小さくなるが、どちらの数字も採算ラインの「1・0倍」を大きく上回っており、建設を後押しする結果となった。
費用対効果は、同整備局が6日発表した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」の中で初めて明らかにされた。
素案に対する国民からの意見募集は6日から来月4日まで行われ、この間に流域住民や学識経験者からも意見を聴取。すべてが出そろった後、同整備局の事業評価監視委員会に諮られ、国交相の最終判断材料となる検証結果が本省に報告される。
意見募集に約1か月間かけるため、ダム問題の最終決着時期は、最短でも11月中旬以降にずれ込むことが確実になった。
素案によると、ダム建設で得られる効果は、2兆2163億円。09年の事業評価で算出した効果1兆589億円は、下流の堤防や河道の整備が計画通り完了している前提で計算しており、今回は、未整備の現状を前提に計算した結果、効果が2倍以上になった。
これに対し、費用は3504億円。総事業費を従来の4600億円から、工期の遅れによる人件費増額などを加味した4783億円とした上で、治水関係分を抽出した。今回算出した効果(2兆2163億円)と比較すると、費用対効果は「約6・3倍」になる。
ただ、09年当時の方法で計算すると、ダムの効果は7574億円と、従来より小さく見積もられ、費用対効果も「約2・2倍」となった。
同整備局は「新たな流出モデルで計算した結果、大雨が降った後、雨水が川に流れこんで水位が上昇するまでの時間に変化があり、洪水氾濫の規模も変わった」と説明している。
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【費用対効果】投資費用に対する効果の比率で、数字が大きいほど効果が高いとされる。便益(benefit)を費用(cost)で割って算出することから「B/C(ビーバイシー)」とも呼ばれる。
ダムの場合は完成後50年間、洪水被害を防ぐ将来的なメリットと、ダムを造るコストやその後の維持管理費を比較する。公共事業では費用対効果が「1・0倍」を切ると、不採算事業とされる。