2011年12月6日
前田武志国交大臣は八ッ場ダム本体工事の是非について、年内に決断を下すとしています。
八ッ場ダムの検証を行った関東地方整備局では、八ッ場ダムの本体工事にゴーサインを出すよう促す報告書を11月30日に国土交通省に上げています。国交省では、翌12月1日に有識者会議を開きました。
有識者会議は明日7日にも開かれますが、前田大臣の2日の会見によれば、有識者会議は一回のみで関東地方整備局の報告は妥当との結論を下したということです。
前田大臣は有識者会議がまとめたダム検証のルールに加え、東日本大震災を踏まえた検証が必要としており、そのために国土交通事務次官などを構成員とするタスクフォースを立ち上げました。しかしタスクフォースがどのような作業をしてきたのかは明らかにされないまま、会見録によれば作業は終わりつつあるとのことです。
間もなく公表されるという前田大臣の判断は、どのようなものになるのでしょうか。
国土交通省のホームページに掲載された最近の大臣会見から、関連部分を転載します。
◆2011年11月25日
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin111125.html
(問)八ッ場ダムの検証結果について、一部の科学者の方達が公開討論を求める要請を行っています。それについて国土交通省としてどのような態度で臨まれるおつもりでしょうか。
(答)そのことは良く承知しております。学者の中には私が良く知っている方もおられます。
ただ、有識者会議が評価をしてくれるわけですので、有識者会議において判断をしていただく性格のものだということが基本です。
いずれにせよ、八ッ場ダムの検証については、「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の「中間とりまとめ」があります。
「中間とりまとめ」でシステムをきちんと作ってくれたわけで、そのシステムに沿って、現在まで検討主体である関東地方整備局において検討を進めてきたわけです。
それがいよいよ最終段階に来ました。パブリックコメントなども、かなり丁寧に行ってくれたようです。
パブリックコメントの中には、学識経験者からの御意見を聴く場も設定したようで、十数人の学者の方々の御意見も聴いたようです。そういったところで御意見を賜ったというよりも、直接、有識者会議の方にと言っておられるようです。
その他、「3.11」の経験を、どう受け止めるのか、そこからの教訓というものも社会資本整備審議会において、災害に上限なし、命第一ということを出して下さっています。
そういった教訓なども踏まえた上で、もちろん、この中間まとめのスキームに沿った形で、3.11の結果をどこかで反映させるというか評価みたいなものも一緒に私の判断材料にしたいと思っております。
そういうことから、事務次官を長とするタスクフォースを作っていただいて、火山の専門家、地震の専門家、地質の専門家、あるいは危機管理の専門家といった方々まで随分と範囲を広げて、御意見やヒアリングをしていただいたり、いろいろ調査資料なども収集していただいて、ある程度まとまってきているようです。
有識者会議では、こういった結果も俯瞰的に見ていただくことになっているようです。
今考えられるいろいろな知見、知恵をまとめていただいて、それを基に最終的に判断を行いたいと思います。
いずれにしても、今の件については、有識者会議の委員において判断されることだと思います。
なお、事務次官を長とするタスクフォースというのは、あくまでも、関東地整の検討の場であったり、その結果が上がってくる水管理・国土保全局とは予断が入らないように遮断をしております。
このタスクフォースの方には、科学者の方々が直接御意見を述べられたということも聞いております。
(問)タスクフォースの状況は、逐一、大臣等に報告が来るのでしょうか。
(答)逐一報告が来るという類のものではありません。
私は、ある意味では客観性を持っていないといけないと思います。
私が予断を持つようなことがあってはいけないので。
ただ、こういうお話があったというようなことは、ある程度まとまった段階で多少お聞きはしております。
しかし、それはあくまでも有識者会議の方へ出していただいて、有識者会議が俯瞰的に眺めるということです。
(問)有識者会議に判断材料として先に提供するということでしょうか。
(答)判断材料というよりも、評価をされるわけです。
有識者会議のメンバーは非常に見識の高い方が集まっておられるわけですから、そこに資料として提供して俯瞰的に見られるということだと思います、そのように聞いております。
◆2011年11月29日
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin111129.html
(問)八ッ場ダムの問題についてですが、今日、関東地方整備局で事業評価委員会が開かれます。
一方で民主党でも議論が進んでいますが、大臣は、民主党の議論はどのように受けとめられるおつもりでしょうか。
(答)今、民主党内の議論を、注目して見守っているところです。
もちろん今までも民主党の議員団が個別に私の所に来られたり、あるいは、いろいろな場面でお話を伺ったりということはありましたが、党として正式に部会で議論を行っていただいていますので、これは注意深く結果を受け止めていきたいと思います。
◆2011年12月2日
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin1202.html
(問)八ッ場ダムの検証についてお伺いします。昨日から有識者会議の審議が始まっています。
この会議に大臣も出席されたということなのですが、会議を終えての大臣の所感と今後の検証作業のスケジュールについて教えてください。
(答)昨日、最後の結論が出るところまで御一緒させてもらいました。
さすが有識者の先生方で、非常に広い立場からの御意見がありました。
そういう意味では、関東地方整備局から本省に上がってくる段階で、関東地方整備局の検討の場での結論と、パブリックコメント、そういったことも受け止めて、さらには関東地方整備局はパブリックコメントと同時に学識経験者の意見も求めました。
十数人の方々からの意見も求めています。
そういうものをまとめて「継続が妥当」という結論を関東地方整備局の検討の場で付けたわけです。
これはもちろん1都5県の自治体が入っての場ですが。
それに対して、常設の学識者による事業評価監視委員会が整備局にありますが、そこで、この事業として受け止めるに妥当かどうかということを、かなり、いろいろな意見も付けて行っていただいております。
この委員会は現場も見ているようですし、2回にわたって議論していただいて、その結果、事業評価監視委員会の意見を付けて上がってきているわけです。
それを昨日、さらに有識者会議で随分と議論をしていただいたということです。
委員の先生方には遠方の方もおられるわけで、夜遅くまで行っていただいて非常に感謝しております。
検討の中身が、これまで関東地整で行ってきたプロセスに瑕疵が無かったかをしっかり見ていただいた他に、有識者としてのいろいろな貴重な御意見が出ていました。
その結果として、ダムに頼らない治水のあり方についてもいろいろな御意見を出していただいております。
多少踏み込んで言うと、利根川流域の特性のような事について指摘された方々もおられました。
もともと、利根川というのは3本流れていました。
そのうちの2本が東京、隅田川のような所に流れ込んでいた。
それを家康入府以来、東に東に追いやって、今、利根川は関宿で分派して江戸川が一つ東京湾に流れているわけですが、大半は銚子の方、東の方に付け替え、付け替えて、江戸を守るような形にしていったということです。
もともとは利根川、中川、綾瀬川、荒川、隅田川だとか、要するに関東平野の低湿地、武蔵丘陵の高台以外は江戸に至るまで低湿地であったものを東に追いやっていったという流域特性をよく考えなくてはならないという印象は持ちました。
そのようなことを含めて、昨日、有識者会議で、関東地方整備局から出てきた結果については妥当であるという結論を付けてくださいました。
さらには、何度か申し上げた、事務次官を長とするタスクフォースで、これまた非常に幅広い見識を持つ方々、専門の方々の御意見と、これまでのいろいろな調査、60年近くに渡って八ッ場ダムのいろいろな調査を行ってきているわけですから、そういった中で、有識者の方々の御意見の裏打ちになるような資料も、もう一度探り当てたりしながらまとめてくれております。
それを有識者会議に資料として提供して、俯瞰的に見ていただくための会議が7日にあります。
そこで、私としては、我々国交省の務めとしてやらなければならないことを全て完了して、その上で政務において議論をして、私が決断を行うというプロセスになります。
(問)八ッ場ダムの関係ですが、今のお話ですと、12月の中旬くらいには最終的に大臣としての判断が出されると考えてよろしいのでしょうか。
(答)あくまでも、24年度予算に反映をさせるということを申し上げてきました。
それは前任の大畠大臣もそうでしたし、その前の馬淵大臣もそうでした。
私としても、是非そのようにさせていただきたいということで、最後の踏ん張りをしているところであります。
(問)遅くとも年内には最終判断をされると考えてよろしいでしょうか。
(答)もちろん、そのつもりでございます。
(問)確認させていただきたいのですが、今日の朝、総理と会われていましたか。
(答)会っていません。
(問)八ッ場ダムの関係ですが、7日の有識者会議で、有識者会議としての結論を出されるのか、また、有識者会議で出た結論について、大臣は尊重をするということでよろしいでしょうか。
(答)今、詳しく説明したつもりですが、有識者会議に求められているタスクは昨日で終了しているのです。
3.11の大震災ということを今までどこにも反映していないので、7日の会議はそれを踏まえたものです。
3.11の大震災を一体どのように受け止めるかということを、事務次官の下のタスクフォースで検討してもらい、またいろいろな有識者の方々のお話を聞いてもらっております。
何も八ッ場ダムのためだけにとは言い難い部分もあります。
社会資本整備審議会において、災害に上限はない、それから、社会資本整備を行っていく上で、何と言っても人間の命が第一なんだという教訓を出していただいているわけです。
それを具体的に、どのように受け止めたら良いかということを、危機管理の専門家である畑村洋太郎さんや、火山の専門家や地質の専門家といったいろいろな方のお話を聞いているわけです。
その中で畑村さんが言っているのは、3年、30年、60年、300年、1200年ということがありますが、3年経ったらまず忘れる、30年経ったら地域が忘れる、60年経ったら消えていく、300年経つと災害がなかったようになり、1200年も経つと歴史から抹殺されるということで、大災害というものはそういう中で起きております。
過去には貞観の津波というものがありましたが、これも1000年くらい経っております。
確かにそういうことを言い当てているのです。
そういう有識者の御意見を頂きながら、八ッ場ダムについては関東地方整備局の検討の場でいろいろと詰めていただきましたが、それを判断する時にはそのような視点も持つ必要があるのだろうと思います。
そういう意味で、有識者の方々に俯瞰的に見ていただきたいと考えています。
そこで結論を出してくださいということは、有識者会議の役割の範囲を超えていると思います。
ただ、有識者会議の素晴らしい方々に俯瞰的に見ていただいて、コメントを頂くことが非常に重要だと思います。
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関連記事を転載します。
◆2011年12月3日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581112030001
-八ツ場ダム 国交相政務三役と相談 検討は7日完了ー
八ツ場ダムの再検証で、前田武志・国土交通相は2日、本省での検討が7日にすべて完了し、民主党政務三役と相談した上で最終判断するとの見通しを閣議後の会見で示した。
本省での検討は、1日に「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の初会合が約2時間あった。国交相はこれを踏まえ、「有識者会議に求められるタスク(任務)は昨日(1日)で終了した」と発言した。
同省関東地方整備局の「建設継続が妥当」との報告は、有識者会議や事業評価監視委員会などの指摘を踏まえており十分とした。
ただ、整備局では大震災や浅間山噴火を踏まえた検討をしておらず、前田国交相は、7日の有識者会議で、事務次官らのタスクフォースが集めた資料をもとに意見を聴いて検討の終結との考えを示した。
一方で、政権交代直後の国交相として「中止宣言」をした民主党の前原誠司政調会長は1日の会見でも「治水の政治哲学を変えることで政権交代した」と当時の判断の正当性を主張している。前田国交相の最終判断までには、まだ波乱要素が残っている。