川原湯の温泉配湯と生活再建

 川原湯温泉の移転代替地に温泉が引かれるとの記事が地元紙に掲載されました。
 川原湯温泉の源泉は八ッ場ダムが建設されれば水没することになります。八ッ場ダムの建設を前提に関連工事が続いている川原湯温泉では、国が来年5月までに八ッ場ダムの補償事業の一環として温泉の引湯施設を設置すると地元に約束してきました。半年後の完成を目指して工事を始めるのは当然ですが、補償事業は引湯設備をつくるだけで、維持管理費は国が負担する義務はありません。

◆2011年12月7日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/news/a/2011/12/07/news02.htm

 川原湯の代替地に温泉配湯・八ツ場生活再建事業

 八ツ場ダム(長野原町)の生活再建事業で、国が月内にも代替地移転後の川原湯温泉に湯をくみ上げる配湯施設の整備に取り掛かることが、6日分かった。

 整備するのは施設の一部で、配管ルートも暫定的なものだが、水没予定地にある旅館や温泉施設が高台の代替地に移転する動きに弾みがつきそうだ。国は来年5月から代替地の一部で、暫定的に温泉を配湯できるとの見通しを示している。

 今回、湯をくみ上げるのは川原湯地区の二つの代替地のうち打越代替地。

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所によると、現在の温泉街にある源泉「新湯」近くに仮設の送湯ポンプを設置し、そこから中継ポンプを経由して、約20メートルの高台にある打越代替地までを配管でつなぎ、源泉から湧き出た湯を送り出す。

 配管は直径約20センチ、全長約630メートルで、保温対策が施されている。打越代替地には貯湯タンクやポンプを整備、来年3月の完成を目指している。くみ上げた湯を貯湯タンクから各施設周辺に配湯する配管については、その後に整備する予定だという。

 川原湯温泉は最盛期に20軒以上の旅館があったが、ダム問題が長期化する中、現在は5軒が営業するだけ。現地に残っている旅館のほとんどが代替地への移転を計画している。

~~~転載終わり~~~

 八ッ場ダムの水没予定地にある川原湯温泉では、2004年の代替地分譲基準の調印前後から住民の流出が急速に進み、地域の衰退が顕著になってきました。周辺地価よりはるかに高額な分譲地価、人工的な盛土造成地の安全性、代替地での経営の見通しなど、厳しい条件が明らかになるにつれ、代替地での生活再建という、地域全体の当初の目標が失われ、故郷をあとにする住民が続出したためです。
 
 八ッ場ダムの代替地計画は川原湯温泉が長年のダム反対闘争からダム受け入れに転じたきっかけでした。地元紙では数年前まで、群馬県が発表するバラ色の代替地計画をカラー紙面で伝えることがよくありましたが、さすがに現実とのあまりのギャップから、最近はそうした記事はほとんど見られなくなりました。
 地元の人々の苦悩は、ダム計画の中で生活再建を目指さざるを得ないにも関わらず、そこにいつになっても光明が見出せないことにあります。けれども、ダム事業の生活再建事業に替わる生活再建、地域振興の方策がない中、ダム事業に依存してきた地元有力者の発言は、「八ッ場ダムの早期完成」しか外には聞こえてきません。

 民主党政権になってから、ダムの必要性の検証が行われてきましたが、生活再建事業はそのまま続行しています。ダムが中止になった場合の生活再建について、国交省は一切認めていません。八ッ場ダムに反対する民主党の国会議員らは、こうした状況を危惧して昨秋、議連(会長・川内博史衆院議員)を立ち上げ、今年9月、ダム中止後の生活再建、地域振興への予算措置を可能とする特別措置法案を民主党政調に提出しました。しかし地元から見れば、この問題に取り組む民主党の姿は殆ど見えてきません。

 今、喫緊の課題は、八ッ場ダム事業ではなく、60年におよぶダム計画で疲弊してきた地域の救済です。2009年総選挙の政権公約に八ッ場ダムの中止とダム中止後の法整備を掲げた民主党政権には、この問題に取り組む責務があるはずです。