八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

前原政調会長の会見発言と広がる波紋

 民主党の国土交通部門会議は12月8日、国交省の八ッ場ダム検証に疑問を呈する意見書を党の政策調査会に提出しました。これを受けて、前原政調会長が政府に対し、八ッ場ダム検証に関して申し入れをすることになりました。
 国交省関東地方整備局が9月に八ッ場ダム有利の検証内容を公表して以来、マスコミは国交省から発信される「八ッ場ダム建設ありき」の記者発表をそのまま流してきましたが、前原発言を受けて、八ッ場ダムが政治問題として再び浮上してきました。
 前原政調会長の8日の発言に対して、藤村官房長官は9日の前原氏の申し入れを前にした9日午前中に記者会見で、八ッ場ダム建設ありきの国交省の方針を容認するとも取れる発言で波紋をさらに広げました。藤村発言については、国交省の前事務次官として河川官僚の意向を代弁する竹歳誠官房副長官の影響を指摘する新聞報道(12月10日付東京新聞「こちら特報部」)もありました。
 一方、前田国交大臣は、「党の意見をしっかり受け止めたい」としつつも、自身が最終決断を下す立場にあることを強調し、事実上、ダム建設が必要との認識を示した、と報道されています。
 また、関係都県と共に、ダム推進の核となっている地元自治体では、群馬県の担当者が早々と町議会で、八ッ場ダムが中止になれば生活再建事業が止まると説明しています。
 関係都県と地元自治体の反発という、二年前ときわめてよく似た状況となりつつあります。
 

◆毎日新聞 2011年12月8日 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111208-00000097-mai-pol

 -<八ッ場ダム>政府回答なしでは工事容認せず…民主・前原氏

 民主党の前原誠司政調会長は8日の政調役員会で、八ッ場ダム(群馬県)の建設見直しに関し、国土交通省主導で工事再開の動きが進んでいることに党内から疑問が相次いでいるとして「(問題点に対する)政府の回答が明確にならない間は、ダムの本体工事に入るのは容認できない」との考えを政府に伝えることを提案し、了承された。9日にも藤村修官房長官に、党の考えとして伝える。

 前原氏は役員会後の記者会見で、09年衆院選マニフェスト(政権公約)でダム建設中止を明記していたことに言及。「変更するなら単なる行政の判断でなく、政治的にやるべきだ」と述べ、国交省だけで判断すべきでないとの考えを示した。

 国交省関東地方整備局は「事業継続が妥当」との結論を出しているが、党国交部門会議は「十分な検証の結果だと納得できない者が多かった」との意見書を作成。「利水の需要予測が精査されていない」「国が検証主体なのはおかしい」などの問題点を挙げた。

 野田政権では政調会長に対し、国会に提出される予算、法案、条約などへの事前承認権が与えられ、権限が強化されている。ただ、八ッ場ダム建設再開などの個別の問題は事前承認の対象になっておらず、政府と党の間で調整が必要になる。【野口武則】

◆2011年12月8日 日本経済新聞
http://p.tl/hzkW

 -八ツ場ダム建設、前原氏「容認せず」 党への回答なければー

 民主党の前原誠司政調会長は8日の記者会見で、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設について、党の国土交通部門会議がまとめた疑問点に政府から明確な回答がない場合には「ダム本体の工事に入ることは容認できない」との考えを表明した。

 9日に藤村修官房長官に申し入れる。

 国土交通省は八ツ場ダムについて「建設続行は妥当」とする対応方針案を示しており、前田武志国交相は年内にも最終判断する意向だ。

 これに対して前原氏は「政治的判断が求められる。担当閣僚だけで決められるとは思わない」と述べ、国交相らをけん制した。党の意見書は安全性や水の需要予測の検証が不十分などと指摘している。

◆2011年12月9日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/news/a/2011/12/09/news01.htm

 -「本体工事 容認できず」 政府の判断求める 八ツ場で前原氏ー

 八ツ場ダム問題で、民主党の前原誠司政調会長は8日、国土交通部門会議がまとめた疑問点に対し、政府から明確な回答がない間は「ダム本体工事に入ることは容認できない」とする方針を明らかにした。

 前原氏は「明日にも官房長官に申し入れたい」と述べ、党としての意見を伝えた上で政府の判断を求める意向。国土交通省によるダム建設の是非を決める検証で「建設継続が妥当」との対応方針案が示される中、2年前の衆院選でダム中止を掲げた党側が歯止めをかける格好となり、前田武志国交相の最終判断が注目される。

 同日の政策調査会役員会が国土交通部門会議の意見書案と前原氏の提案を了承した。前原氏は役員会後の会見で、建設の是非の最終判断について「マニフェスト(政権公約)の変更は単なる行政の判断にとどまらず、政治的な判断が加えられるべきだ」と指摘、前田氏の判断だけで決めるべきではないと強調した。

 最終判断の際の政府・民主三役会議開催については「党としての考え方は官房長官に伝えるが、政府がどう判断するかということだ」と述べた。本体工事に入ることを容認できないとの方針を示したが、「予算を付けないとは言っていない」とも答え、予算執行段階まで党と政府側の調整が続く可能性も出てきた。

 役員会で了承された意見書は、①国交相は国土交通部門と分科会での議論を踏まえて判断すべきだ②党内には検証に納得できないとの意見が多い③治水の目標流量などは政治的に判断すべきだ④整備局に対して再検証を求める判断もあり得る-の四つにまとめられている。

 また、建設に反対する民主党県連議員らは8日、ダム建設中止を求める意見書を前原氏に提出した。治水、利水、検証の在り方の3点について、それぞれの問題点を指摘し、党が建設継続を容認することは政権交代に期待した支持者の失望を招く「自殺行為」だとしている。

 意見書提出者の一人で県連会長代行の中島政希衆院議員は「県連の国会議員6人全員で申し入れた。マニフェストを翻すようなことがあれば、党としても県連としても国民県民の信頼を失う」と指摘。前原氏からは「思いは全く一緒だ」と建設中止に意欲的な返答があったという。

◆2011年12月9日 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/minshu/TKY201112080660.html

 -八ツ場ダム本体工事、民主政調役員会「容認できない」ー

 民主党は8日の党政調役員会で、建設の是非を議論している八ツ場ダム(群馬県)について「本体工事に入ることは容認できない」とする意見を取りまとめた。前原誠司政策調査会長は9日にも藤村修官房長官に本体工事の着工見送りを申し入れる。

 民主党国土交通部門会議は、国土交通省の検証で建設継続の方針を打ち出したことについて「納得できない」とする意見をまとめており、前原氏は党の意見に対する政府の回答が明確になるまでは着工を容認しない考えだ。前田武志国交相は「党の議論も見守った上で政府の責任で決める」としており、野田佳彦首相が本体工事の予算凍結に踏み込むかが焦点だ。

 前原氏は8日の記者会見で「マニフェストに関わるものであり、変更するなら単なる行政判断にとどまらず、政治的な判断が加えられるべきだ」と強調し、政府に着工見送りを強く申し入れる考えを示した。

 群馬県選出の党所属議員も同日、前原氏に建設中止を求めた。子ども手当の見直しなど「マニフェスト違反」が批判される中、党内には公共工事を見直す象徴的な位置づけだった八ツ場ダム建設中止だけは貫くべきだとの意見が根強い。首相は消費増税に「不退転の決意」で取り組むとしており、歳出削減を打ち出さなければ国民の理解を得られないとの判断もある。

 民主党は2009年衆院選で八ツ場ダムの建設中止を公約。政権交代時に国交相に就任した前原氏は「日本の利水・治水に関する政策を根本的に見直す必要がある」として建設中止を打ち出した。だが、地元自治体の反発が強まり、歴代国交相の姿勢は大きく後退。国交省関東地方整備局が今年11月の検証で「建設継続」の方針を出した。

◆2011年12月9日 読売新聞群馬版 
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111209-OYT8T00004.htm

 -八ッ場再検証 前原氏「政府は疑問に回答を」 意見書に同調国交相追認「待った」ー

 民主党の前原政調会長は8日、党政調役員会後の記者会見で、八ッ場ダムの再検証について、「党から出された問題(疑問)について政府から回答を求め、明確にならない間はダムの本体工事に入ることは容認できない」と述べ、「建設継続が妥当」とする国交省の検証結果を前田国交相が追認しないよう待ったをかけた。将来的に中止に追い込む布石として、検証やり直しも視野に入れており、9日にも藤村官房長官に党としての意見を伝える。

 党政調役員会は、同省関東地方整備局の検証結果に対する党の意見として、▽国交相の判断に際し、党の国土交通部門会議や(八ッ場ダム問題)分科会の議論を勘案して対応されることを望む▽「十分な検証の結果」とは納得できない者が多かった▽(国交相は)「再検討を行うことを指示」という判断もあり得ることを考慮されたい――など4項目を了承した。

 それを受けて会見した前原政調会長は、4項目の党意見や、建設反対派の議員が個々に提示した疑問点に回答するよう政府に求める方針を表明。ダム建設の是非の判断について、「政権交代前に議論を積み重ねた中でつくったマニフェスト(政権公約)にかかわる。仮に変更するなら、政治的な判断が加わるべきだ」と語った。

 建設反対派議員は同日、党政調役員会に先立ち、ダム中止を訴える独自の意見書を前原政調会長に提出。マニフェストに掲げた中止方針の堅持を要請した。この意見書は「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」や同党群馬県連所属の国会議員6人などの連名。国交省関東地方整備局の検証結果について、「旧政権下と全く同じ官僚主導の決定。容認すれば民主党支持者の失望と離反は必至で自殺行為だ」と批判し、八ッ場ダムの治水効果を過大評価しているなどと指摘している。

 提出後、記者会見した県連会長代行の中島政希衆院議員は「県連は前回の総選挙でも、八ッ場ダムの中止は、ローカル(地域)マニフェストの第一に掲げた。これを翻せば、県民の信頼を失う」と説明。同議連会長の川内博史衆院議員らによると、前原政調会長は「大変、勇気をいただいた。国交相としっかりと話し合いをしたい」「思いは全く一緒だ」などと応じ、同調する考えを示したという。

◆2011年12月9日 NHKニュース
http://p.tl/xSm7

 -八ッ場ダム 判断前に党に説明をー

 民主党の前原政策調査会長は、藤村官房長官と会談し、群馬県の八ッ場ダムの建設を継続するかどうかについて、党のマニフェストに関わる政策だとして、最終的な判断をする前に、政府の考えを党側に十分説明するよう求めました。

 建設が中断している群馬県の八ッ場ダムを巡っては、国土交通省の関東地方整備局が、建設を継続するのが妥当とする案をまとめていて、政府は、近く最終的に判断することにしていますが、民主党内からは「建設継続は、党のマニフェストに反する」などと反発が出ています。

 これを受けて、民主党の前原政策調査会長は、9日午後、藤村官房長官と会談し、党の政策調査会の役員会で「党内から出ている疑問に対し、政府から明確な答えがないかぎり、本体工事に入ることは容認できない」とする意見をまとめたことを伝えました。

 そのうえで前原氏は、建設を継続するかどうかについて、最終的な判断をする前に、政府の考えを党側に十分説明するよう求めました。

 これに対し、藤村長官は「党が疑念を持っていることについては、しっかりと説明責任を果たすよう国土交通省に伝えたい」と述べました。

 会談のあと前原氏は、記者団に対し、「最終的に政府と党の考え方が違った場合は、マニフェストに関わる案件でもあるので、政治的な判断が必要になることを確認した」と述べました。

◆2011年12月9日 毎日新聞
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1209/mai_111209_5439802247.html

 -<八ッ場ダム>国交省の方針尊重 官房長官、建設再開を容認ー

 藤村修官房長官は9日午前の記者会見で、八ッ場ダム(群馬県)の建設再開について、「国土交通省で(検証の)手続きをしており、それを重視する。政治的判断はしない」と述べ、建設再開の方向で検証を終えた同省の方針を尊重し、本体工事を容認する考えを示した。ただ、民主党の前原誠司政調会長は建設再開に慎重姿勢を示しており、今後調整が難航する可能性もある。

 藤村氏は「党が政治判断されるならそれは重く受け止めるが、政府が政権交代後に順にやってきた手続きは最終段階に至っている」と強調した。また、最終結論は来年度予算編成に関する政府・与党会議で出されるとの見通しも示唆した。

 一方、前田武志国交相は閣議後の記者会見で「八ッ場は長年議論している。既に流域自治体とも協議のうえ、合意を得ている」などと前原氏をけん制した。

 八ッ場ダムをめぐって、民主党は09年衆院選マニフェスト(政権公約)で建設中止を明記。公共事業を大幅に削減する民主党政権の「象徴」の一つとなっていた。群馬県には建設継続の要請が強く、国交省で全国84のダムを再検証する有識者会議を設け、八ッ場ダムについても再検証していた。【小山由宇、樋岡徹也】

◆2011年12月9日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20111209/CK2011120902000079.html

 -八ッ場ダム検証 民主党政調役員会 「納得できぬ者多い」ー

 事業継続の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(長野原町)をめぐり、民主党は八日の政調役員会で、事業継続を妥当とした国土交通省の検証について「十分な検証結果と納得できない者が多かった」などとする意見をまとめた。 (伊藤弘喜)

 意見は四項目にわたり、過大予測との批判がある水需要などの算出について「政治も役割を担うべきだ」と主張。検証手法に疑問が多いことから「関東地方整備局に対して再検討を指示する判断もあり得る」と指摘した。

 前原誠司政調会長は役員会終了後の会見で「(役員会で)出された問題について政府に明確な回答を求め、明確にならない間はダム本体工事に入ることは容認できない」と述べた。

 これに先立ち、同党県連の国会議員六人を含む議員有志ら約二十人が、あらためて建設中止を求める意見書を前原氏に提出した。

 意見書は治水・利水面の問題点や関東地方整備局による検証の不備を挙げ「中止は新たな治水・利水思想を確立する上で象徴的な意味を持つ。党の存在意義が問われる問題だ」とした。意見書を受け取った前原氏は「大変勇気をいただいた。国交相としっかり話し合いたい」と語ったという。

◆2011年12月9日 日本経済新聞
http://p.tl/lx4Y

 -八ツ場ダム「プロセスを着実に実行」 官房長官ー

 藤村修官房長官は9日の閣議後の記者会見で、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の事業継続の是非について「これに関して政府は政治的判断をしない。プロセスを着実に実行していく」と述べた。

 国土交通省は「建設続行が妥当」とする対応方針案を示しており、前田武志国交相が年内に最終判断する方向だ。

 藤村長官は民主党の前原誠司政調会長が本体工事を容認できないとしていることに関し「受け止めないといけない」と語ったが、政府・民主三役会議に諮る案件ではないとも指摘した。

 国交相も閣議後の記者会見で、事業中止を求める党の意見について「しっかり受け止めたい」と話した。

◆2011年12月10日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111210-OYT8T00086.htm

 -八ッ場前原氏発言が波紋 政府首脳巻き込み攻防 6都県知事「継続を」声明ー

 八ッ場ダムの再検証は9日、政府首脳も巻き込み、ぎりぎりの攻防が続けられた。「建設継続」とした国土交通省の検証結果に待ったをかけた民主党の前原政調会長は、党側の疑問に答えるよう藤村官房長官に要請。

 前田国交相は「最後に決めるのは大臣」とけん制した。「本体着工を容認できない」との前原発言には地元から批判が噴出し、利根川流域6都県知事は、建設継続を求める緊急声明を出した。

 ■国交相「重要施設」

 「有識者会議がまとめた検証スキーム(枠組み)は、(当時の)前原大臣も設計にかかわり、会議の人選もやっておられた。私もその結果を踏襲してきた」

 9日の閣議後記者会見で、前田国交相は、検証に疑義を唱える前原氏を暗に批判し、自身が最終決断を下す立場にあることを強調した。

 さらに、「八ッ場ダムは長年議論され、流域自治体の合意を得て、完成に近付いている事業。流域や国にとって、非常に重要な安心、安全の施設」などと述べ、事実上、ダム建設が必要との認識も示した。

 ■政府「大臣が判断」

 藤村氏も9日の閣議後記者会見で、政治判断によるダム本体着工阻止に動く前原氏をけん制した。

 首相や党幹事長らがメンバーで、野田政権の最高意思決定機関とされる政府・民主3役会議で八ッ場ダム問題を扱うかを問われ、「これに関してはないと思う。政治判断で検証し、その後は、行政手続きが順に踏まれた。国交相が最終判断するのが正しい」などと述べた。

 その後、藤村氏と会談した前原氏は「最終的に党と政府の考え方が違った場合、マニフェスト(政権公約)の案件でもあるので、政治的な判断が必要ということを確認した」と述べて、食い違いを見せた。

 ■憤る地元

 一方、前原氏の言動に、ダムの地元、長野原町の高山欣也町長は「『またか』という思い。検証を指示した前原さんが異論を挟むのは、つじつまが合っていない」と批判。篠原憲一・水没関係5地区連合対策委員会事務局長は「マニフェストにこだわって、いつまで地元の住民を苦しめるのか」と憤りの声を上げた。

 緊急声明を出した大沢知事は「前原氏は中止とは言っておらず、一種のパフォーマンスだろう」と冷静に受け止めた。自民党を中心とする「八ッ場ダム推進議連1都5県の会」などは15日に上京し、国交相にダム建設を求める要請書を提出する方針だ。

 ■勢いづく反対派

 「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」会長の角倉邦良県議は「かなり巻き返してきた。前原政調会長を支援してもらうよう、党代表経験者らにも働きかけを強め、本体着工を阻止したい」と勢いづき、市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「2年前の中止発言も含めて、前原さんには責任を果たしてほしい」と話している。

◆2011年12月10日 朝日新聞群馬版
 http://p.tl/g9uz

 -八ツ場ダム 「工事入り容認できぬ」前原氏発言ー

 「本体工事に入ることは容認できない」と八ツ場ダムについて述べた前原誠司民主党政調会長の発言から一夜明けた9日、地元の長野原町では議員や幹部が不満を漏らした。県は関係5都県と連携して前田武志国土交通相に決断を求める緊急声明を出した。

 「皆さんも報道を見たと思う。『検証結果を踏まえて判断する』と言っていたのに、残念だ」

 町議10人全員を対象に非公開で行われた9日午前のダム対策会議。出席者によれば、竹内良太郎議長は冒頭のあいさつでこう述べた。国交省八ツ場ダム工事事務所や県の幹部を前に、議員らも「前原発言は筋が通らない」「国や県はしっかり対応してほしい」と続けた。

 前原政調会長は2009年9月、国交相として事前説明なしに「中止宣言」し、再検証の仕組みをつくった張本人だ。

 会議は本来、ダム建設を前提とした生活再建事業の進み具合を国や県が報告する場だ。「ダムが中止になった時、どうなるのか」との質問も出た。上下水道や福祉施設、道路拡幅といった事業費の一部は、下流都県の負担金だからだ。

 県幹部は「中止になれば事業費を支出する法的根拠がなくなる。(生活再建は)ダムが前提。中止させてはならない」と答えた。

 高山欣也町長は会議後、工事事務所幹部に、「ぶれることなく、英断を期待します」との言葉を前田国交相に伝えるよう念を押した。取材にも「(中止宣言から)2年3カ月の地元の心労にこたえる国交相の判断を期待する」と述べた。

 6都県知事連名の緊急声明は、「整備局の検証は、科学的・合理的に行われた」「自治体はもとより地元にとって、これ以上の時間をかけることは断じて許されない」「国交相は、自らの責任で速やかに建設継続を決断することを求める」としている。(泉野尚彦、石川瀬里)

 八ツ場ダムの再検証をめぐり、政府・民主党幹部の発言は9日も続いた。「政治判断」についての認識の違いもみられる。

 【前田武志国交相】

 党の意見は受け止めた上で、大臣として判断していきたい。予断なき検証を重ねてきて最終段階にある。

 前原さんはマニフェストを先導された方なので、思いを持っておられる。(再検証の)スキーム(計画)づくりにかかわり、有識者会議の人選もした。だが、行政の担当者ではない。

 (再検証では)震災の結果について、資料を集めて専門家のヒアリングも行い、非常に幅の広い見方をしてもらった。そうしたものを踏まえて私が判断する。党の疑問には回答を準備するよう事務局に指示した。9日午前、会見で

 【藤村修官房長官】

 八ツ場ダムについての基本的な(再検証の)予定は今、最終段階に至っていると聞いている。国交相が最終的に判断するのが、今の時点では正しい手続きだ。

 80余りのダム見直しを行ったことが、まさにマニフェストに従った手続き。党の判断は重く受け止めることにはなると思うが、(八ツ場ダムは)最初の政治判断に基づいて最終段階に至っている。だから、それ以上のことを党や政府が政治的判断をする話ではない。

 (党の判断を重く受け止める場は)予算編成の段階になると思う。9日午前、会見で

 【前原誠司・民主党政調会長】

 八ツ場ダムに関して党としてまとめたものを官房長官に届けた。官房長官は「党の疑念には説明責任を果たすよう国交省に伝える」とのことだった。

 国交省は政府としての行政的な手続きをやった。意見が政府と党で違う場合は、マニフェスト項目でもあるので政治的な判断が必要になると思う。長官も同じ認識を持っていた。(政治判断について)どこで議論するかは話していない。

 (前田国交相との会談予定は?)政調会長が党の意見を伝える相手は官房長官になる。9日午後、藤村官房長官に申し入れ後に

◆2011年12月10日 毎日新聞群馬版  
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20111209ddlk10010105000c.html

 -八ッ場ダム建設:政治判断へ 困惑する地元 関係6知事、継続求める /群馬ー

 大詰めを迎えた八ッ場ダム問題は、攻防の場が「政治的判断」へと移行する見通しになった。民主党の前原誠司政調会長は9日、藤村修官房長官と会談し「党と政府の意見が違った場合は政治的判断が必要」との認識で一致。

 行政主導の検証作業は「事業継続」の方向性で進んできたが、最終盤で流れが変わる可能性が出てきた。一方、ダム関係1都5県知事は同日、前田武志国土交通相にダム事業継続の決断を求める緊急声明を発表した。

 地元・長野原町の高山欣也町長は同日午後、国交省関東地方整備局を通じて前田国交相あてに「『事業継続が妥当』との方針を尊重し、ぶれずにご英断をいただきたい」と要請した。

 高山町長は毎日新聞の取材に「検証作業は前原政調会長が国交相だった時に定めた手法で行われた。それを否定するのは『予断なき検証』とは言えない」と批判した。

 また八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の篠原憲一事務局長(70)は「科学的に検証すると言ったのに、結局は政治的な判断になっている。しかも、誰がどういう方法で決定するのか、よく分からない」と困惑を隠さなかった。

 これに対し、ダム中止を訴える同町の40代の女性は「ダムを造ったら吾妻渓谷は水没し、温泉街の観光も成り立たなくなる。反対派住民の気持ちも受け止めて結論を出してほしい」と語った。

 一方、1都5県知事の緊急声明は▽検証は国交省の有識者会議がとりまとめたスキームに基づき科学的・合理的に行われた▽検証の手続きは有識者会議でも瑕疵(かし)はないと評価され、建設継続は妥当と結論づけた▽苦渋の選択によりダム建設を受け入れた地元にとって、これ以上の時間をかけることは断じて許されない--と主張。速やかに建設継続を決断するよう求めた。【奥山はるな、喜屋武真之介】

◆2011年12月12日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111212/t10014572131000.html

 -“八ッ場 継続より堤防強化”ー

 民主党の前原政策調査会長は、東京都内で講演し、建設が中断している群馬県の八ッ場ダムについて、将来の維持管理費を考えれば、建設を継続するよりも、河川の氾濫を防ぐために、下流域の堤防を強化すべきだという考えを示しました。

 この中で、前原政策調査会長は、群馬県の八ッ場ダムに関連し「昔、景気が悪くなると、自民党政権は、ばんばん建設国債を発行して公共事業をやった。

 しかし、今は公共事業をやれるような財政状況ではなく、インフラをつくれば、維持管理にお金もかかる」と述べました。

 そのうえで、前原氏は「今、国土交通省が抵抗している、八ッ場ダムの問題は、維持管理費のことを考えているのかと言いたい。

 それよりも、利根川などの流域が決壊しないよう、堤防を強化する事業にお金を使うことのほうが大事だ」と述べ、八ッ場ダムの建設を継続するよりも、河川の氾濫を防ぐために、下流域の堤防を強化すべきだという考えを示しました。

◆2011年12月12日 時事通信
http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201112120035.html

 -八ツ場ダム「国交省が抵抗」=消費増税と併せ成長戦略を―前原氏ー

 民主党の前原誠司政調会長は12日午前、都内で講演し、政府が事業継続の是非を検討中の八ツ場ダム(群馬県長野原町)に関し「国土交通省が抵抗しているが、大きなダムには砂がたまるし、コンクリートを補修しないといけない。維持管理のことを考えているのか」と述べ、党方針に反して建設を進めようとする同省を名指しで批判した。

 前原氏は「どこでゲリラ豪雨が降るかは分からない。利根川や荒川や江戸川が決壊しないよう、堤防を強化するのにおカネを使うことが大事なのではないか」と、ダムの必要性に疑義を呈した。

 また、消費増税について「経済を成長させて財源を生み、その果実で施策を行うことが大事だ。いかに経済活性化を行っていくのかが必要条件だ」として、成長戦略を併せて具体化することが重要と指摘した。