国交省の有識者会議への批判声明(科学者の会)

 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」では、八ッ場ダム検証における国交省の有識者会議のあり方を問題視し、12月14日に以下の声明を記者発表しました。
 声明文は同日、有識者会議の各委員、有識者会議の事務局(国交省河川計画課)、前田国土交通大臣、野田総理大臣へ送付されたということです。
 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」は11名の呼びかけ人によって11月1日に発足しました。現在、「科学者の会」の活動に賛同する有識者は127名に達しています。
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 「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の議論と運営に関する批判的声明

 ダム検証のあり方を問う科学者の会
 共同代表:今本博健、川村晃生

 国土交通省設置の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は、八ッ場ダムを初めとして、ダムに頼らない治水対策をあらたに検討することを目的として発足しましたが、これまでの議論と現状に鑑みると、その目的からはかなり外れた方向に進んでしまったと言わざるを得ません。

 いったいどうしてそのような事態に立ち至ってしまったのかを考える時、私たちは有識者会議が民主的な議論のもとに結論に至るという手続きを踏むのではなく、或る政治的力学の中で結論が形造られてしまっていると判断するものです。
 たとえば、新聞報道によれば、(有識者会議が非公開であるため、私たちはこうした二次的情報に頼らざるを得ません。議論は公開されるべきです)、有識者会議において、鈴木雅一東大大学院教授が水需要予測で「予想が大きすぎておかしい」旨を指摘したにもかかわらず、事務局が算出手続きの正しさを強調するだけで、これに噛み合う議論はなされなかった由であり、また、こうした審議形態は他のダムの場合でもくり返されていたようで、議論自体が形骸化し、儀式としての審議がなされているように思われます。ここには事務局、すなわち国交省の主導による設定された路線への誘導があると見られ、有識者会議が議論の場になっていない現実が浮き彫りにされています。

 つまり、すでにダムを建設することが前提としてとり決められており、その結論に至るための儀式を有識者会議が執行しているに過ぎないと言っていいでしょう。審議の中で、どのような異論が科学的根拠を伴って出ようとも、それを正面から取り上げず、事務局や座長があらかじめとり決められている結論にリードしてしまう、そのような審議形態は、本来審議に値するものではなく、ただのアリバイ工作をしているにすぎません。
 私たちはこうした事務局や座長の匙加減一つで思いのままに進んでいき、結論に至ってしまう審議を、科学的かつ民主的なものとは考えていません。そして、このような形で得られた結論がそのまま政策に反映されれば、それは必ず失敗に終わると確信するものです。

 またこのような審議を是とする有識者会議であれば、それを構成する委員各位の科学的良心にも信頼を置くことはできません。それは、科学者の会が呼びかけた二度にわたる公開討論会への参加を拒否した態度に通じるのではないでしょうか。またその拒否の回答は、本当に委員各自の発意に基いたものなのでしょうか。 

 以上の点から私たちは有識者会議の議論と運営のあり方を、厳しく批判するものです。それは国交省関東地方整備局で11月4日に行われた「学識経験者の意見聴取」において、座長が議論を封じるような発言をして議論を閉じたことに通じるものと言えるでしょう。私たちは有識者会議が科学者の名に恥じぬような議論と運営をされることを強く望みます。国交省は有識者会議を自由で民主的な議論の場とし、その結論を尊重する第三者的立場に立つべきです。そうした意味において、私たちはこれまでの有識者会議の議論を作為的で無効なものと考え、改めて真摯で科学的な議論がなされるよう、貴省と内閣総理大臣に強く訴えるものです。
                                                 2011年12月14日

 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」呼びかけ人:
 今本博健(京都大学名誉教授)(代表)
 川村晃生(慶応大学教授) (代表)
 宇沢弘文(東京大学名誉教授)
 牛山積(早稲田大学名誉教授)
 大熊孝(新潟大学名誉教授)
 奥西一夫(京都大学名誉教授)
 関良基(拓殖大学准教授)(事務局)
 冨永靖徳(お茶の水女子大学名誉教授)
 西薗大実(群馬大学教授)
 原科幸彦(東京工業大学教授)
 湯浅欽史(元都立大学教授)

 連絡先
 〒112-8585 東京都文京区小日向3-4-14 拓殖大学政経学部
 関良基 気付 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」

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◆2011年12月15日 朝日新聞社説より一部転載
 http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 -八ツ場ダム―予算急がず検証深めよー

 ・・・新たに学者グループが反対の声をあげたことに注目したい。元京都大学防災研究所長の今本博健氏らが呼びかけ、賛同者は120人を超えた。
河川工学や土木分野に加え、地質、環境、生物、経済など様々な分野から
集まっている。

 八ツ場ダムの洪水調節効果をめぐる計算が変わった根拠は何か。水の需要は減っているのに自治体の古い推計に基づいたままでいいのか。建設予定地は浅間山が近く、火山灰などが堆積した地盤は巨大地震に耐えられるのか――。三つの問題点と事業主体の整備局が自ら行った検証の限界を指摘し、「公開の場で科学的な検証を」と訴える。

 国交省の有識者会議に討論会を申し込んだが、実現しなかった。同省の担当部署から断りの連絡が入った後、申し込んでいた討論会とほぼ同じ時刻に有識者会議が開かれ、整備局の検証が了承された。・・・(以下略) 

◆2011年12月15日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581112150002
 -「ダム建設の儀式」 有識者会議を批判ー

 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」(共同代表=今本博健京大名誉教授、川村晃生慶大教授)は14日、国土交通省による再検証を了承した「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(座長=中川博次京大名誉教授、9人)を批判する声明を出した。
 科学者の会は、全国の学者138人が名を連ねる。有識者会議に2度に
わたって公開討論を求めたが、拒否されていた。批判声明は、野田佳彦首相、前田武志国交相、各委員に送ったという。
 声明では、有識者会議の審議が一般非公開だったことを批判。「ダム建設の結論に至るための儀式を有識者会議が執行しているに過ぎない」と主張している。その上で「科学的な議論」を求め、首相と国交相に再検証のやり直しを訴えた。