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前田大臣の会見録ー12/9,13

国土交通省のホームページに掲載された前田大臣の会見録より、八ッ場ダムに関連する箇所を転載します。

◆前田大臣会見要旨 12月9日
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin111209.html

《質疑応答》

(問)八ツ場ダムの問題についてですが、昨日、民主党の部門会議で意見がまとまりました。これに対する大臣のお考えをお願いします。また、今後、民主党の政務調査会との関わりあいがあると思いますが、それについてどうやって調整を進めていくのか、その二点についてお願いします。

(答)熱心に議論された結果として、しっかり受け止めて参りたいと思います。この部門会議の部門意見は国土交通部門会議に設置された「八ツ場ダム問題分科会」における6回の会合をはじめ、党において熱心に議論された結果であると認識しており、勿論しっかり受け止めさせていただきたいと思います。その上で大臣として判断していきたいと思います。

(問)民主党の中では、前原氏が、「国交省からきちんとした回答がない限りは八ツ場ダムの建設は認めない。」というかなり強行ともとれる発言がありましたが、それに対する大臣のお考えをお願いします。

(答)発言内容を確認しているわけではありませんが、前原氏御自身はマニフェストも先導された方ですし、そのような意味で思いを持っているものと思います。
 政調でどのようにまとめられたかということについてはまだ正式には受け止めておりませんが、我々の方からも、政府として、政調のご意見を承りたいということで申し込みはしております。まだ、会談の段取りは整っていないということです。
 いずれにせよ予断無き検証を重ねてきて、その最終段階にあるわけです。
その検証のスキームは昨年の9月に有識者会議の中間とりまとめとして最終的にまとめられたものです。そのスキームをまとめるにあたっては、前原大臣の時に12回くらい有識者会議を重ねて結論を出しているわけです。その12回のうち11回は前原大臣がスキームの設計にかかわっておられるわけです。そして委員長をはじめとして、人選をされているということです。
 それをバイブルにして、以降の馬淵大臣、大畠大臣もそのスキームに則って行ってきているわけで、私もその結果を大事にして、そのスキームに沿って行ってきております。
 そのスキームによると、本省に上がってきたものを有識者会議にかけて御議論いただいてその評価を受け取った上で、最終的には内閣の担務である国土交通省の政務間で議論するということになっております。最終的に決めるのは大臣ということになります。

(問)先程来の大臣の発言をお聞きしていると、前原氏がスキーム作りに関わっているので、昨日の前原氏の会見での発言は意外だと受け止めていると言うことでしょうか。

(答)今は政調会長であるとともに、党の政治家として、党の執行部の重鎮であります。従って、行政の担当ではないわけですから、当然政治家としての御意見があって然るべきだと思います。

(問)今後の協議ですが、大臣御自身が政調の責任者である前原氏との間で直接的に会談をもたれるという理解でよろしいでしょうか。

(答)そういう機会があれば出て参りますし、あるいは違う形になるかもしれません。そのことについては私の方に届いておりません。

(問)この間2回開かれた有識者会議で、委員の先生方から、有識者会議の役割は中間とりまとめの枠組みに則って検証することである。さはさりながら、例えば斜面の液状化などで安全性に疑問があるのではないかとか、水需要についても過大ではないかという問題提起があったと思います。事業評価委員会などでも、妥当であると認めたものの、例えば検証の前提となる洪水規模についてはまだまだ説明が足りないという意見もありました。そういう意味では検証のスキーム以外でもいろいろな問題提起がなされていると思います。
 中間とりまとめが金科玉条のようになっているが、例えば震災があったらコストを重視するという中間とりまとめはあり得なかったと思いますが、大臣としてはあくまでも中間とりまとめという考え方を重視するということは震災があってもかわらないと、信念というかそういう思いはかわらないということでしょうか。

(答)ちょっと違いまして、私は震災の結果をどのように受け止めるかということにかなりこだわって事務次官のところにタスクフォースを作っていただいたわけです。
 しかし、そこはスキームから外れて行えということではなくて、あくまで私は、中間とりまとめで、検証の行い方、全国83事業について、このような手続きを経て検証していくんだよというスキームを作っていただいたわけですから、そのスキームは大事に守っていきますよということを申し上げているのであって、3・11のことについては、スキームの中でそれをどうこうというよりも、別途事務次官のところで資料を集めていただき、また、幅広く、地震学者であったり火山学者であったり危機管理の専門家であったりそういう方のヒアリングを行っていただいているわけです。客観性を持たせるために、私は入っていません。
 それに応じていろいろな資料を集めていただいているわけです。大きなダムが崩壊した外国の事例であったり、火山の噴火でどのような可能性があったかどうかとか、そういったことを含めてとりまとめていただいて、それは非常に幅広い見方が入っております。
 それを一昨日の有識者会議で俯瞰的に眺めていただいたというわけです。これはアディショナルで検討のスキーム、アディショナルな有識者会議ということで議論していただいたわけです。いろいろなコメントが出ておりました。
 そのようなことも踏まえて、最終的に私が判断するときの一つの参考にはなるなと、こう思っております。

(問)年内に大臣が判断するということは来年度予算にということだと思いますが、これは歴代の国交相の方がおっしゃってきた期限約束ということがあるので、大臣もある程度縛られているということになるかと思います。
事業評価委員会から有識者会議と、スピーディーに行ってきたと思いますが、かなり議論が消化し切れていないのかなという印象も受けますが、年内に判断という大臣の判断はかわらないのでしょうか。

(答)これは先代、先々代の大臣以降、ずっと公約になっておりますから。
約束になっておりますからこれは守りたいと思っております。

(問)明確な説明という意味で、昨日の意見書には4つの意見がありましたが、意見として読んでいると、分科会の議論を勘案して対応されることを望むという意見は、後ろについている発言内容などにも当然何らかの説明を求められたという認識なのでしょうか。

(答)まだ正式に私どもの所に提出されていないのですが、そのようにお聞きはしておりますので、誠実に答えていくということで対応させていただきます。

(問)事務局にそのような指示をされているということでしょうか。

(答)もちろんそのようにしております。

(問)有識者会議の件ですが、二回目の有識者会議では3・11のことについて話し合われたのですが、総じて言うと、ダムの重要性を否定するような意見は有識者からは出されなかったと私は認識しておりますが、大臣の受け止めはいかがでしょうか。

(答)私もそのように感じました。特に、ダムの計画論としてどういう位置づけになっていて、構造計算がどうだ、治水がどうだ、利水がどうだということは既に検討の場で行っており、また、事業評価監視委員会で継続妥当であると出てきたものを10月1日の有識者会議でかなり読み込んだ上で既に評価をされていますので。
 一昨日の会議は、そこからちょっと離れて、それぞれの有識者、非常に見識の高い先生方が、しかもあの先生方はタスクフォースの、事務次官がまとめてくれた資料を読み込んでおられて非常に深い場におられたと思うのですが、そこでの御意見になっていて、なるほどなという見方、観点、社会科学系の先生方も何人かおられましたし、そういう意味では非常に私には参考になりました。

(問)そうすると、前原氏は明確な回答を求めているわけですが、その回答というのは大臣がされるものと思いますが、二回目の有識者会議の会合を踏まえた上で回答されるということでしょうか。

(答)というよりも、正確な疑問点だとかクエスチョンがまだ届いていませんが、内々に取ったところについて、回答を用意するように事務局には言ってあります。そのクエスチョンの中に、一昨日のどうのこうのというのはたぶんないと思いますので。
 ですが、私が何らかの議論をする場合には当然、私の頭のどこかにはそういったご意見、非常に御示唆に富んだものは入っていると思います。

(問)今の段階では、建設を継続する立場から回答するという風には言えないのでしょうか。

(答)今の段階では、党の御意見を承った上で御議論をさせていただいて、その上で最終的に決めるわけですから、その最終段階ということです。

◆前田大臣会見要旨 12月13日

(問)八ッ場ダムの検証について伺います。大臣もご出席されたと思いますが、12月1日の有識者会議の中で、八ッ場ダムができたことによる効果で水位がどれくらい低減されるかという質問が有識者からあったことに対して、関東地方整備局から聞いているということで、事務局が「最小で30センチ、最大で60センチ水位が低下する」ということを答えられていましたが、以前、関東地方整備局に取材した時に、そのような計算はやっていないということをおっしゃられておりました。江戸川区では、一番最下流ですが、そこでは低減効果は無いというふうに職員の方がおっしゃられていました。
 検証については、情報の正確性が必要だと思いますが、この情報についてはお確かめいただけないでしょうかという点が一つです。
 それから、前回こちらで質問させていただいた時に、やはりこれも情報の正確性ですが、栃木県知事がカスリーン台風によって352名の命が失われたと、この件に関して八ッ場ダムとは全く関係のない地域ですと言いましたところ、大臣がパブコメで出してくださいということでしたので、これは取材ではなく、パブコメで出してみました。
 その見解が、関係地方公共団体からなる検討の場の構成員に対する意見については、検討主体としてコメントする立場にございませんということで、情報の正確性がここでも担保されておりません。
 これについても改めて情報の正確性ということが検証の正当性にもつながると思いますので、御確認するべきだと思われますが、いかがでしょうか。

(答)その確認でありましたらやりましょう。事務局において是非その確認をしてください。
 それから今さっきの、江戸川において八ッ場ダムの洪水調節の水位低下があまりないということは、現地の江戸川の専門家の話だったのでしょうか。
工事事務所でしょうか。

(問)職員の方です。

(答)それは個人的にどういう見識と言いますか、利根川流域の全体の、いろいろな複雑な検討をやっておりますから、そういうことを承知した上でのお答えかどうかということはわかりませんが、ただ定性的に言えば、低減効果というものは八ッ場ダム地点から始まって、ずっと延々と、たぶん何百キロかあるのでしょうね。百数十キロ、二百キロ近くあるのでしょうか。
 ずっと下ってきて、しかも関宿で分派するわけですから、そして江戸川にということ、しかも海の近くになるとこれは海水面にゼロに落ち着くわけですから、そういう意味では下流にいくに従って、特に、江戸川というものは、海に近い所では、その効果は低減するということは定性的には言えることかなと、こういうふうに思います。
 それから、カスリーン台風ということについもこれもちゃんと確認をさせますけれども、定性的に言いますと、カスリーン台風は昭和22年のあのとき、吾妻川流域と言いますか、八ッ場の流域にはあまり大きな雨ではなかったのです。
 むしろ東の、まさしく栃木県側だとか、群馬県の東の方だとか、あちらの方に大量の豪雨があっての洪水でありましたから、洪水の特性から言うと、栃木県側に大きな被害が出たということはあっただろうと思います。
 しかもそれが集まっての上で、渡瀬遊水地のちょっと上流なのでしょうか、ずっと下ってきた所で破堤して、それが埼玉県から東京湾、江戸川区なども含めて大きな被害をおよぼしたということだと思います。

(問)江戸川区では数日かけて洪水が押し寄せてきたために、被害は1名だけでした。

(答)浸水という意味ではね。あの当時であってもそうして浸水の予想、そして待避、避難、そういったものがうまくいけば被害は最小限にとどまるわけでありまして、それが東日本の大きな教訓になると思います。
 ハードによってある一定の外力に対してはなんとか押さえると、しかしそれを超えた場合には人命が第一ということで、多重防災もソフトも含めて、人命第一で人の命を守っていくということが、これからの防災のあり方だと思います。

(問)八ッ場ダムについてですが、前原政調会長が党側の意向として、疑問点への回答がない間は着工を容認できないという趣旨の方針を示されましたが、国交省の回答に向けた作業の進捗状況はいかがでしょうか。

(答)すでに具体的な疑問点は、官房長官経由で受け取っておりまして、それに対する回答を制作して、今、党に提出しているところです。
なるべく早く、いろいろ御意見を伺い、こちらからも説明する機会を持ちたいと思っております。

(問)八ッ場ダムについての法定計画との関係ですが、河川法に基づいて河川整備基本方針は出来ていますが、具体的な河川整備計画というものが出来ていません。
 今回は相当ということで1万7千トンという数値が出ていますが、これは2005年に出ていた河川整備計画案で1万5千トンと出ていましたので齟齬があるわけですが、法定計画としての妥当性というか正当性がないのではないかということが1点、それから特ダム法に基づいて、基本計画が工期と事業費総額を定めておりますけれども、これも検証の中で工期も延びるし総額も増額となるということが想定されるということが書かれておりました。
この特ダム法の手続きと河川法の手続きはどのようになさいますでしょうか。
 これは予算を付ける前にどうするかという決着が必要だと思いますがいかがでしょうか。

(答)そういった趣旨のことも、確か質問の中に入っていたと思います。特ダム法については、1都5県が関わっているわけですから、計画を変更する時には議会の承認を得た上での知事さんの了解が必要となっているはずです。
 したがって、今までのプロセスの中で精査をしていって、地質調査等を行ったりして対応を具体的に精査をしていくにつれて、多少工費が上がったりだとかがあることは承知をしていて、そういうものは既に了解を得ているのだろうと私は理解をしております。了解を得てないと、計画変更はできませんからね。

(問)検証の議事録を読んでいただきたいのですけれども、検証の場で、公開で行われた検証の幹事会というのがございまして、1都5県全てが増額には応じられないということが言われております。
 法律に基づけば、増額については1都5県の了承が要りますので、そこは動かなくなります。

(答)そこについては、これからの協議を通じてということになると思います。

(問)党の方との調整ですが、回答は既に提出済みという理解でよろしいでしょうか。
 それから意見調整ですが、目途としてはいつ頃までに、どういう方々が調整をするのかということの予定が立っていれば教えて下さい。

(答)提出は、既にしたと思います。昨日、回答について私も説明を受けましたので。
今、党の方の政策調査会というものは、あらゆるものが集中しているもので すから、なかなか日程が取り難いということろですが、いずれにしても、私がどういう判断をすることになったとしても、どういう結果であれ予算に反映をさせなければならないわけですから、それがタイムリミットだと思います。

(問)前原政調会長と直接お会いしてお話をされるということでしょうか。

(答)そうです。