2011年12月18日
河川工学の第一人者である今本博健氏が八ッ場ダム検証をめぐる問題について、わかり易くユーモアを交えて講演された模様をユーチューブにアップしました。↓
http://p.tl/OW0R
「恥ずかしくないんですか」
講師:今本博健(京都大学名誉教授、ダム検証のあり方を問う科学者の会共同代表)
八ッ場ダム住民訴訟7周年集会、東京・本郷、12月17日
〈講演の主な内容〉
・わが国ではどうして河川行政の見直しが進まないのか
1995年のダム審(ダム事業等審議委員会)から淀川水系流域委員会による河川行政の理念を見直す試み、川辺川ダム事業における治水政策の見直しへの流れ
・わが国には治水目的のダムが900基あるが、本当に治水の役に立ったダムは一基もない。
・民主党の2009年マニフェストの問題
ダムにおける生態系と堆砂の問題を取り上げているが、ダムの不要性については触れていない。
党内でしっかりとした議論をせずにマニフェストに八ッ場ダム等の中止を書き入れたため、民主党所属の国会議員の多くがダム行政の見直しの必要性を理解していない。
・前原国交大臣のダム行政の問題
ダム事業は「新たな段階に入らない」と決定しただけだったため、関連事業や本体工事にとりかかっているダム事業はその段階の事業がそのまま続けられることになった。←役人が仕掛けた罠
(八ッ場ダム事業の場合は、政権交代時、関連事業の段階にあったため、「本体着工」という新たな段階には入らなかったものの、関連事業はそのまま続行した。八ッ場ダムの事業費の9割以上は関連事業である。)
当初は「検証対象ダム」が143事業とされたが、河川官僚の妨害により、84事業に減らされた。
(河川官僚は84事業のうち、2割も止められたら”御の字”だと言っている。)
「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」
本来の目的であった「治水理念の構築」をせず、河川官僚が作成した「ダム検証の手引書づくり」にお墨付きを与えるだけに終始
・現在の河川行政の問題
現在の「治水」は対象洪水への対応のみ。対象を越えた「想定外」の洪水には対応できず。
現在の河川行政は相変わらず「治水」、「利水」が中心で、「環境」は蔑ろにされている。人類が持続可能な社会を目指すのであれば、「環境」を最優先にしなければならない。
「洪水」は一部地域の人々の生活に被害を与えるが、「環境」が破壊されれば人類は殲滅されてしまう。
1997年の河川行政において「環境」が重視されていると考えるのは、よほどのお人好しである。実態は、「環境」を名目に無駄な工事を発注する根拠を与えただけである。
・本来の河川行政とはどうあるべきか
「定量治水」から「非定量治水」への転換が必要
具体的には・・・
○あらゆる規模の洪水への対応
○流域全体で洪水を受け止める・・・壊滅的被害の回避
○対策の基本は実現性が基本・・・構想から60年たっても本体着工に至っていない八ッ場ダム事業は、この間、役に立っていない。こんなものは治水対策とはいえない。本来の「治水」とは、去年より今年、今年より来年と洪水被害を軽減してゆくものでなければならない。
○洪水被害をゼロにすることは不可能
3.11大震災は、私たちに自然災害をゼロにすることは不可能であることを教えた。せめて命だけは守ることを最優先にする必要がある。この考え方に立てば、「堤防の強化」と「避難」が大切になる。
地震と違い、洪水は事前に察知することが可能なので、避難することによって被害を軽減できる。
ダムはたとえ洪水被害を軽減する役に立つ場合でも、概して完成するまでに長期間を要する。その間、治水効果はゼロ。しかも、完成後は堆砂によって治水機能が次第に落ちていく運命にある。
200年に一度の洪水は明日起こるかもしれないが、200年後に起こるかも分からない。いざ、大きな洪水が襲った時には、ダムはなんの役に立たないかもしれない。
ダム建設に固執する自治体首長
安易に容認する学識経験者
それを主導する河川官僚
皆さん、恥ずかしくないんですか
私たちは決して批判を止めません