八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム本体工事費の予算案計上についての抗議声明

 八ッ場ダムの本体工事費の予算案が計上されたことについて、八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会(各都県のストップさせる会)が野田首相、前田国交大臣に抗議声明を送付したとのことです。
 声明文の全文が公表されましたので、転載します。

 平成23年12月24日

 内閣総理大臣 野田佳彦 様
 国土交通大臣 前田武志 様
             
      八ッ場ダムをストップさせる群馬の会  代表 真下淑恵
      八ッ場ダムをストップさせる茨城の会 代表 近藤欣子
      八ッ場ダムをストップさせる千葉の会 代表 村越啓雄
      八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会 代表 藤永知子
      ムダなダムをストップさせる栃木の会 事務局長 伊藤武晴
      八ッ場ダムをストップさせる東京の会 代表 深澤洋子
      八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 代表  嶋津暉之

          八ッ場ダム本体工事費の予算案計上決定への抗議声明

 12月23日、政府は八ッ場ダム建設再開のための本体工事費の予算案計上を決定しました。八ッ場ダムの不要性、不当性を長年訴え続けてきた私たちは、この決定に対して心底からの怒りをもって抗議します。
 本体工事費計上は、「民主党としては反対であるが、最終判断は政府にゆだねる」として決定されたものですが、現政権は民主党政権であり、その民主党が反対する決定を行う現政権とはいったい何なのでしょうか。民主党の衣をかぶった官僚支配政権であること、すなわち、官僚の官僚による官僚のための政権であることをを物語っています。

 22日の午前、民主党と国交省の意見対立を調整するため、藤村修官房長官から「①利根川水系河川整備計画の早急策定とその洪水目標流量の検証、②ダム中止後の生活再建支援法の次期通常国会への提出を踏まえて、本体工事を判断する」という裁定が示され、これを前田国交大臣が「つつしんで受ける」ことを表明しました。
 ところが、前田大臣は午後になると、本体工事判断の2条件などなかったかのように、本体工事費予算計上を発表し、その後、直ちにダム予定地の群馬県長野原町に行って報告を行い、ダム推進派の群馬県知事、地元町長らから大歓迎を受けました。この群馬県知事等への報告は23日の政府・民主党三役会議で、建設再開の方針が覆ることがないように、その方針を既成事実化するものであり、政府の決定手続きを軽んじる行為を行った前田大臣の責任はきわめて重大です。すべて、官僚たちが描いたシナリオ通りに演じる役者のようでした。そして、国交大臣が発表した方針には上記の2条件は今の取り組みとして付記されているだけでした。
 裁定を「つつしんで受ける」と言いながら、それを平然と無視した前田大臣の今回の行為は、政治への信頼を根底から失わせるものであり、政治家としてあってはならないことです。国交大臣辞任にも値することです。官僚たちの振り付け通りに動くのではなく、自らの良心に従って行動されることを忠告します。
 国交省が無視しようとも、官房長官の裁定を蔑ろにすることは許されないことであり、その裁定に従い、利根川水系河川整備計画の早急策定とその洪水目標流量の検証に直ちに取り組み、その結果により、八ッ場ダムの是非が明らかになるまで本体工事予算を凍結することを求めます。もう一つの条件である、生活再建支援法の次期国会への提出も、これまでのようになおざりにすることなく、確実に取り組むことを求めます。

 今回、関東地方整備局が行った八ッ場ダムの検証は、建設再開の結論が先にある茶番劇というべき検証でした。治水利水の両面で八ッ場ダムの不要性はすでに明らかです。利水面では水道給水量が減り続け、その規模がますます縮小していく時代において八ッ場ダムによる新規水源開発が必要であるはずがありません。治水面でも八ッ場ダムの実際の治水効果はわずかなものであり、脆弱な堤防の強化などの喫緊の治水対策をなおざりにして巨額の河川予算を不要不急の八ッ場ダムに投じ続けることは許されることではありません。
 そして、八ッ場ダムの予定地は地質がひどく脆弱であり、ダムを造って貯水し、水位を上下すれば、奈良県の大滝ダム以上の規模で地すべりが誘発されることは必至です。国交省が計画している程度の地すべり対策ではとても対応できるようなものではありません。ダム完成後に地すべりが起きても官僚たちはだれも責任をとりません。大滝ダムの場合もそうでした。結局は裁判所が国交省の過失を断罪しました。
 八ッ場ダムは必要性がなく、様々な災いをもたらすダムであることから、私たちは八ッ場ダムの中止を強く求めてきました。そして、裁判でもそのことを訴えてきました。
 たとえ本体工事予算が付いても、八ッ場ダムを中止すべきだという私たちの信念は何ら変わることはありません。
 私たちはこれからも八ッ場ダムの不要性、不当性を多くの人に伝えて、世論を喚起するとともに、裁判で6都県に対して八ッ場ダム事業からの撤退を求める判決が得られるよう、東京高裁での審理に力を尽くす所存です。