「科学者の会」より利根川河川整備計画の民主的策定を求める要請

 昨日、「ダム検証のあり方を問う科学者の会」より利根川の河川整備計画の民主的な策定を求める要請書が野田総理、前田国交大臣へ提出されました。

 前田国交大臣は八ッ場ダム本体工事予算計上の条件とされる利根川の河川整備計画策定について、「スピードアップしろ」と指示を出していると会見で述べていますが、これは1997年の改正河川法の趣旨を無視したものです。
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin120106.html
 (2012年1月6日 大臣会見)

 利根川の治水は、流域住民の命に関わる問題ですが、治水が官僚組織と御用学者の専権事項である現在の河川行政では、他の先進諸国では考えられないような非民主的な手法が罷り通っています。

 公表された「科学者の会」の要請書全文を転載します。

 2012年1月17日

 内閣総理大臣 野田佳彦様
 国土交通大臣 前田武志様

 利根川水系河川整備計画の民主的な策定を求める要請

 ダム検証のあり方を問う科学者の会
  共同代表 今本博健、川村晃生
                      
 これから利根川水系について進められる河川整備計画の策定に関して下記のとおり、要請いたします。

 昨年暮れ、八ッ場ダム本体工事費の来年度予算案計上は藤村修官房長官の裁定により、次の二つの条件が付きました。一つは利根川水系河川整備計画の策定とその目標流量の検証であり、もう一つは次期通常国会への「ダム中止後の生活再建支援法案」の提出です。野田総理大臣が12月29日の民主党の「税制調査会と社会保障と税の一体改革調査会の合同総会」でこの二条件が本体工事予算執行の条件であると言明しましたので、二条件がクリアされるまで、執行停止の状態が続くことになりました。

 これらの二条件は形だけのもので終わらせてしまうことなく、それぞれ真剣な取り組みが求められています。後者の生活再建支援法についてはダム計画に翻弄されてきた地元住民の生活再建が真に進められ、地元の地域振興を図ることができる実効性のある法案が策定されなければなりません。

 そして、前者の河川整備計画の策定は河川法により、流域住民の意見を反映させることが求められています。1997年の河川法改正により、河川整備計画を策定する際は「公聴会の開催等関係住民の意見を反映させる」(第16条の2)措置を講ずることになりましたが、このことについて国会審議で当時の河川局長が次の通り、答弁しています。

 「言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がない、(略)必要なものについては修正をするという形で考えておりますので、まさにその河川整備計画に関係住民の皆さん方の意向が反映をしていくというふうに考えております。」(1997年5月9日衆議院建設委員会)

 利根川水系河川整備計画の策定はこの河川法改正の本旨を踏まえて進められなければなりません。流域住民の意見が反映され、真に科学的な見地から十分な検討が行われるように策定の仕組みをつくることが是非とも必要であり、次の措置をとることを強く要請いたします。

① 利根川・江戸川有識者会議等の委員の人選のやり直し
 利根川水系河川整備計画に関しては2006年11月から策定作業が開始されましたが、その後、間もなく中断されています。当時、5つの有識者会議、すなわち、利根川・江戸川有識者会議、渡良瀬川有識者会議、中川・綾瀬川有識者会議、鬼怒川・小貝川有識者会議、霞ケ浦有識者会議が設置されました。しかし、これらの有識者会議の委員は何ら民主的な手続きを踏むことなく、専ら国土交通省関東地方整備局が選定したものであり、ダム問題を含む河川の諸問題を科学的・客観的な見地から審議できる委員は決して多くはありません。利根川流域住民の意見を踏まえて有識者会議委員を選任するように、改めて民主的な手続きによって委員の人選をやり直すことを求めます。

② 公開で議論ができる場の設定を!
 利根川水系河川整備整備計画の策定のため、公聴会やパブリックコメントが行われるでしょうが、そこで出された意見がただ聴き置くだけで終わり、実質的に無視されてしまうことが心底から危惧されます。しかし、河川整備計画についての問題提起者と河川管理者が公開の場で十分な議論をして、問題点が浮き彫りになれば、河川管理者はそのことを河川整備計画に反映させなければならなくなると考えられます。その点で、河川整備計画の策定作業の一つとして、問題提起者と河川管理者が公開で十分な議論ができる場を設定し、議論がつくされるまで複数回開催することを求めます。

③ 利根川・江戸川有識者会議等の全面公開
 利根川・江戸川有識者会議等の議論を市民がしっかり監視できるように、有識者会議を直接傍聴できるように完全公開にする必要があります。委員会の住民傍聴についての関東地方整備局の最近のやり方はモニターによる別室での傍聴になっており、住民を審議の場から隔離するようなことが罷り通っています。利根川・江戸川有識者会議等を全面公開にして利根川流域住民が直接傍聴ができるようにすることを求めます。

 「ダム検証のあり方を問う科学者の会」呼びかけ人:
 今本博健(京都大学名誉教授)(代表)
 川村晃生(慶応大学教授) (代表)
 宇沢弘文(東京大学名誉教授)
 牛山積(早稲田大学名誉教授)
 大熊孝(新潟大学名誉教授)
 奥西一夫(京都大学名誉教授)
 関良基(拓殖大学准教授)(事務局)
 冨永靖徳(お茶の水女子大学名誉教授)
 西薗大実(群馬大学教授)
 原科幸彦(東京工業大学教授)
 湯浅欽史(元都立大学教授)

 賛同者126名

 連絡先
 〒112-8585 東京都文京区小日向3-4-14  拓殖大学政経学部 
 関良基気付「ダム検証のあり方を問う科学者の会」