スーパー堤防完成は1%、国交省が水増しー会計検査院指摘

 ダム等の大規模治水事業に関して、参議院から要請を受けた会計検査院がこのほど検査報告を公表しました。河川行政において、いかに税金がいい加減に使われているかがわかります。流域住民の命を守る目的である筈の治水事業が利権や省益など別の目的のために遂行されていることは、私たちの生活を脅かす可能性がありますが、実際に災害が発生してから初めて問題がクローズアップされることが殆どです。

◆会計検査院 平成24年1月19日
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/24/h240119_1.html
 国会からの検査要請事項に関する報告
 「大規模な治水事業(ダム、放水路・導水路等)に関する会計検査の結果について」

 報告書の要旨より、一部転載します。 http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/24/pdf/240119_youshi_1.pdf

〔2ページ〕
 導水路事業(霞ヶ浦導水)において、霞ヶ浦の水質が更に悪化する傾向にあることから、現状においては同事業により導水を実施しても、霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画(第5期)で目指すとされているCOD値(化学的酸素要求量。水質汚濁の一指標)5.0mg/L台前半という目標を達成するまでに相当な期間を要することが見込まれる状況となっており、また、事業参画を継続する意思がない利水者が出てくるなど事業開始当初に比べて同事業を取り巻く社会経済情勢に変化が見受けられた。しかし、現状における同事業の効果、必要性等の再検討を十分に行わないまま従前の事業計画により引き続き事業を実施している。

〔3ページ〕
 ダム建設事業において、計画事業費や事業期間の変更は事業評価に大きな影響を与えるものであるのに、計画事業費に対する執行済事業費の割合が100%近くになってから計画事業費を見直していたり、事業が完了していないのに、事業期間の延長が行われないまま計画上の事業期間を既に過ぎていたり、また、本体工事の段階に入る前であるのに、事業期間に対する事業着手後の経過年数の割合の状況をみると事業期間の延長が必要となるおそれがあったりするものが見受けられた。

〔5~6ページ〕
 国土交通省は、完成延長、暫定完成延長及び事業中延長の計を整備延長としており、高規格堤防の整備延長及び整備率について、要整備区間においては計50,630m、5.8%、重点整備区間においては計27,740m、12.4%としていたが、高規格堤防に必要な高さ及び幅を満たした堤防の断面形状(以下「基本断面」という。)が完成していると認められる延長について改めて集計を行って高規格堤防の整備延長及び整備率を算出すると、要整備区間にいては計9,463m、1.1%、重点整備区間においては計2,495m、1.1%となった。

〔6ページ〕
 計画規模の洪水を上回る洪水に対しても破堤しない堤防となるよう高規格堤防が整備されている一方、計画規模の洪水に対して越水しない堤防となるよう通常堤防が整備されているが、要整備区間における通常堤防の完成堤防の割合は64.4%となっていて、整備が完了している河川はなく、また、要整備区間における通常堤防の詳細点検の結果、堤防強化対策が必要とされた区間において堤防強化対策が完了している河川もなかった。

〔6ページ〕
 利根川水系において、洪水調節施設、河道及び堤防の整備は密接に関係することから連携して実施されることが肝要であるが、河川法が改正されてから13年以上経過しているのに、河川整備計画が策定されていないために、20年から30年程度の間に実施する具体的な河川の整備内容等の目標が明らかにされておらず、洪水調節施設等の整備が当面の目標に向かって連携して実施されているか確認できない状況となっていた。

〔6ページ〕
 ダム建設事業において、検査対象とした47ダムのうち、24ダムで変更後の計画事業費が当初の計画事業費から増額されており、このうち9ダムについては変更後の計画事業費が当初の2倍以上と大幅に増額されているが、既存の関係資料からは、これらの要因の詳細や増額の内訳について明確にできない状況となっていた。また、33ダムで変更後の事業期間が当初の事業期間から延長されており、このうち7ダムについては変更後の事業期間が当初の2倍以上と大幅に延長されているが、既存の関係資料からは、これらの要因の詳細について明確にできない状況となっていた。さらに、延べ48回の事業期間の変更のうち23回は、従前の事業期間の期限を過ぎてから延長が行われていた。

〔7ページ〕
 遊水地等事業において、渡良瀬遊水地では167億円から700億円に、稲戸井調節池では53億円から438億円に計画事業費が変更されたり、また、上野遊水地では現在717億円の計画事業費が当初から変更されていないなどとしたりしているが、事業計画の内容、変更理由や計画事業費の算定根拠、増減の内訳等については、当時の文書管理規則に基づく保存期間が満了したため関係資料を廃棄したことなどにより保有していないとしているため、事業主体は、その内容を明確にできず、事業に対する説明責任が果たせない状況となっていた。

 関連記事を転載します。

◆2012年1月19日 時事通信
http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201201190085.html

 -スーパー堤防完成1%=事業着手から24年―ダムでは資料破棄も・検査院ー

 東京や大阪などを流れる6河川で整備予定の「スーパー堤防」が、事業着手から24年経過した2011年3月末現在で、計画全体のうち、1.1%しか完成していないことが19日、会計検査院の調査で分かった。

 事業を進める国土交通省は整備率を5.8%としているが、検査院によると、同省は一部だけ完成した区間や着工しただけの区間を含めて整備率を算出しており、中には完成した部分が全くないのに、「完成」とした区間もあったという。

 調査は11年2月に国会の要請を受けて実施。その結果、11年3月末現在で、利根川や淀川など6河川の要整備区間計872.6キロのうち、スーパー堤防としての効果が認められた完成部分は9.4キロ余りにとどまることが分かった。

 また、旧建設省の通達では、川沿いの街づくりと一体で進めるために市街地整備基本構想を策定した上で、構想に基づいた整備計画にのっとって整備するとされたが、6河川の着工済み全127地区で整備計画が作られていなかったことも判明。利根川では、計画の前提となる基本構想すらないまま工事が進められていたという。

 調査は国交省のほか、水資源機構が進めるダムや放水路建設などの事業も対象。こうした事業では、費用が当初計画より大幅に増額されるケースが目立つが、既存資料からは増額の内訳が分からなかったり、保管期限が切れたなどの理由で関連文書が破棄されたりしていたという。

◆2012年1月20日 毎日新聞政治面
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120120ddm002010092000c.html

 -スーパー堤防:整備率1.1% 国交省、5.8%と「水増し」--検査院調査ー

 線路の跡地(手前左から中央奥部分)が盛り土部分を横断する大和川スーパー堤防。右奥は大和川=大阪市東住吉区で19日、宮間俊樹撮影 整備が進まず政府の事業仕分けで「無駄遣い」と批判された国土交通省のスーパー堤防(高規格堤防)事業で、全体の整備計画(約873キロ)のうち5・8%(約51キロ)とされてきた整備済みの区間(整備率)が、実際は1・1%(約9キロ)しかないことが会計検査院の調査で分かった。国交省が着工前や工事中の地区まで整備済み区間に含め、「完成」としていた中にも実際には規格を満たさず未完成のものもあった。検査院は19日、検査結果を国会に報告した。【桐野耕一、樋岡徹也】

 検査院は国会からの要請で事業の状況を調査。通常は完成した区間のみで算出する整備率に、工事中や一部だけ完成した区間、用地買収交渉中で着工前の区間まで含めていたことが判明した。

 さらに、国交省が「完成」としている34地区を調べたところ、スーパー堤防の規格を満たしているのは一部なのに全体を完成としていたのが20地区、規格を満たさず全く完成していないのが3地区あった。

 大阪市東住吉区の大和川沿いの地区では04年度に完成したことになっていたが、土台部分を横切るように廃線となったJRの貨物線の線路跡が残っており、規格を全く満たしていなかった。

 国交省は「事業に着手した段階で整備率にカウントしていた。予算に対する整備状況を詳しく知らせるためで、完成した区間を多く見せようといった意図はなかった」と釈明。「表記方法が不適切だったかもしれず、見直したい」と話している。

 同事業では地元自治体の町づくり事業との連携を掲げているが、堤防上に設ける市街地の整備計画を国と自治体が協議して策定した例が一つもないことも検査院の調査で判明。計画地区内で通常の堤防すら完成していない区間が3割以上あることも分かり、検査院は「安全対策上、通常の堤防を優先的に整備するよう検討すべきだ」と指摘した。

 ◇溝が寸断…でも「完成」
 「未完成」と指摘された大阪市東住吉区矢田地区の「大和川スーパー堤防」には、盛り土の上に整備された公園と市立温泉施設跡地の間に幅約18メートル、深さ約4メートルの溝がある。09年に廃線となったJR貨物の軌道跡だ。洪水時に水が流れ込めば堤防決壊につながる恐れもある。国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所は「埋め立てを検討していた」と話す。

 一方、着工前なのに整備済みとされていた、さいたま市西区の荒川沿いの地区。国交省や検査院によると、長さ約400メートルの堤防が計画され、用地取得に向け土地所有者と交渉中だが、現在は田んぼが広がっている。【川口裕之】

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 ■ことば

 ◇スーパー堤防
 市街地側の勾配が3%で、幅は高さの30倍程度(高さ8メートルなら幅は約240メートル)とされる高規格堤防。大洪水で川の水が堤防を越えても、決壊を防ぎ壊滅的な被害を避けることが目的。盛り土の部分はつながっている必要がある。首都圏の利根川、江戸川、荒川、多摩川と近畿圏の淀川、大和川を対象に87年度から整備が始まり、10年度までの総事業費は6936億円。住民の反対などで整備が進まず、完成は400年後、総事業費は12兆円に上るとされることから、10年の政府の事業仕分けで廃止と判定された。ただし、国土交通省は事業規模を約120キロに縮小して進める方針を示している。

◆2012年1月20日 朝日新聞政治面
http://www.asahi.com/politics/update/0119/TKY201201190530.html

 -スーパー堤防完成1% 検査院指摘、公表数値の5分の1ー

 200年に1度の水害に備えるとして国土交通省が進めるスーパー堤防事業について、会計検査院は19日、堤防の高さと幅が必要な条件を満たしていて「完成」と呼べるのは、計画の1.1%の約10キロにすぎないと指摘した。国交省はこれまで、整備率は5.8%(約50キロ)と公表してきたが、実際はそこまで進んでいないことになる。

 同事業の計画は全長872キロ。これまで約7千億円が投じられたが、完成まであと400年かかるとされてきた。民主党政権の事業仕分けが「スーパー無駄遣い」と指摘し2010年に廃止と判定したが、国交省の有識者会議は昨年、洪水で人的被害が甚大な地区での継続を求める提言をまとめ、事業は続いている。

 検査院は同省が公表している整備率について、「実態を反映していない」と指摘。スーパー堤防が予定されている地区で普通の堤防の36%が未完成であることから、「通常堤防の優先整備を検討する必要がある」と提言した。

◆下野新聞 2012年1月21日
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20120120/703868

 -導水「必要性が不明確」検査院指摘ー

 栃木、茨城両県の漁協が反対している霞ケ浦導水事業をめぐり、会計検査院は20日までに、霞ケ浦の水質改善効果について「目標達成まで相当な期間を要する」と指摘し、「事業を継続する場合は代替案との費用対効果を比べるなどして必要性を再度明確にすべき」と求めた。同事業は国のダム・導水見直しの検証対象になっており、検査院の指摘は今後の検証作業に影響を与えそうだ。

 検査院によると、霞ケ浦における水質汚濁の指標「COD値」(化学的酸素要求量)は、2001~06年まで1リットル当たり7~8ミリグラムで推移。07年には8ミリグラムを超え、09年には9ミリグラムを超えるなど水質は悪化している。栃木、茨城、千葉の3県が策定した湖沼水質保全計画では5ミリグラム台前半を目指しているが、検査院は「生活排水対策などが不十分で、水質の大幅な改善に至ってない」とした。

 国土交通省は、導水事業により那珂川などから年間約6億トンの水を入れることで、CODが約0・8ミリグラム改善すると試算。しかし検査院は「近年、霞ケ浦はさらに悪化する傾向にある。導水を実施しても目標を達成するまでに相当な期間を要する」と指摘した。

 利水予定者の千葉市と東総広域水道企業団(千葉県銚子市などで構成)は「将来人口の伸びが止まり、水の余剰が発生する」などとして事業からの離脱を表明している。

 検査院は「同事業の効果、必要性の再検討を十分に行わないまま、従前の計画により引き続き事業を実施している」と結論づけた。

 同省霞ケ浦導水工事事務所は「検査院の指摘事項について現在、内容を確認中。中身をよく見てどうするか対応を考える」とコメントしている。